Last Updated on 2023年2月27日 by カメさん
今回は人間関係の悩みについて、承認欲求と対人不安の関係から考えてみたいと思います。
心理的な悩みの解決には、理論的な理解が重要とされています。そのため職場の人間関係の悩みを理論的に考えて行きたいと思います。
まずは「承認欲求」や、「対人不安」とは何かを解説します。そして「承認欲求」や「対人不安」と、どのように向き合う必要があるのかについて考えていきたいと思います。
承認欲求とは?
承認欲求とは、「自分の印象を操作したい(自己呈示)」という欲求のことです。
「仕事ができる(他者の印象)って思われたい!」という欲求のことだね。
そのため承認欲求を理解するためには、自己呈示について理解する必要があります。
自己呈示とは?
自己呈示とは「他者から見られる自己の印象に影響を与えようとする行動(安藤,1994)」です。
つまり、他者に対して特定(有能だ、親しみやすいなど)の印象を与えたいと考えることが「自己呈示」です。
そして「自己呈示」の動機づけの一つとして承認欲求があります。
承認欲求には「賞賛獲得欲求」と「拒否回避欲求」が存在する
承認欲求には「賞賛獲得欲求(褒められたい欲求)」と「拒否回避欲求(嫌われたくない欲求)」があります。
賞賛獲得欲求とは?
他者からの肯定的な評価の獲得を目指します。つまり、他者に褒められたい欲求です。
拒否回避欲求とは?
他者からの否定的な評価の回避を目指します。つまり嫌われたくない欲求です。
「賞賛獲得欲求」と「拒否回避欲求」のどちらも大事
一方の欲求のみ強い人もいれば、両方の欲求がともに強い人、両方の欲求がともに弱い人も存在します。重要なことは、適度であればどちらの欲求も大事ということです。
「賞賛獲得欲求」により自分の存在をアピールして、優秀な業績をあげることができれば、 高い地位や報酬の獲得に繋がります。
しかし他者に自分の存在をアピールすることは、自分の欠点をさらすリスクを伴います。そのため、否定的な評価を回避するという「拒否回避欲求」も重要です。
カメどちらの欲求も過度になると問題になるよ。
対人不安とは?
対人不安(social anxiety)は、「現実のあるいは想像上の対人場面において、他者からの評価に直面したり、もしくはそれを予測したりすることから生じる不安状態(Schlenker & Leary, 1982)」と定義されています。
つまり、他人の評価(現実or想像)を気にして不安になることだね。
対人不安は、適度であれば正常な反応とされています。しかし過剰な対人不安は、パフォーマンスの低下や主観的不適応感、さらには生活上の困難を引き起こすこと言われています。
対人不安障害(Social Anxiety Disorder: SAD)とは?
対人不安障害は「対人不安が極度に高まった状態(Turner, Beidel, & Larkin, 1986)」です。
SAD患者は失業率が高く、最終学歴や既婚率、QOLが低い傾向にあります。
対人不安(social anxiety)は社交不安とも訳されるよ。
「承認欲求」が高いと、「対人不安」が高まる
承認欲求が高く、他者に対して特定の印象を与えたいと考えている状態で、その行動が成功するか疑わしいときに対人不安が生じるとされています(Schlenker & Leary, 1982)。
そのような状況で前述の、「拒否回避欲求」を高めると、「対人不安」が高まってしまうことを、多くの研究が報告しています。
「承認欲求」と「対人不安」の関係を調査した研究
「承認欲求」と「対人不安」の関係を調査した研究を紹介します。
これらの研究では、「拒否回避欲求」と「賞賛獲得欲求」の関係が「対人不安」に及ぼす影響を調査しています。
例えば下記の研究で提示している図によると、「拒否回避欲求」が低いときには「賞賛獲得欲求」の高低は対人不安に影響を及ぼしていませんが、「拒否回避欲求」が高い時は、「賞賛獲得欲求」の高低が対人不安に大きな影響を及ぼしていることが分かります。
また下記の研究の結果では、「賞賛獲得欲求」が「対人不安」に及ぼす影響を弱める(負のパスが有意)働きがある可能性を予想できます。
防衛的非感性について理解することも重要
「防衛的悲観性」は、過去の似たような状況をポジティブに認知しているにも関わらず、将来の出来事については低い期待を有することで努力や準備を動機付けする認知的方略です。日本人に多く、起こり得る可能性を熟考するという意味では有効な認知方略です。
悪い結果になるかもしれないと想定して準備をすることだね。確かによくある。
しかし「拒否回避欲求」のみが強い人の場合は、過去経験をネガティブに捉え過ぎて、将来の出来事を悲観的に想定し過ぎてしまいます。結果として将来への期待や動機付けが低くなり、不適切な認知方略となります。
拒否回避欲求のみ強い人は、対人的目標の設定が「否定的な評価を回避すること」にあって、他人からの肯定的な評価というポジティブな側面についてはそもそも発想がしにくいという特徴があるよ。
承認欲求(特に拒否回避欲求)による対人不安に対処するためにはどうしたら良いの?
上記の研究結果から言えることは、「拒否回避欲求」が強くて対人不安が高まっている場合は、「賞賛獲得欲求」を高めることが効果的ということです。つまり「他人に好かれたい」「自分のパフォーマンスを認めて欲しい」という認知方略を高めるということです。
賞賛獲得欲求が高い人は、外見的魅力や有能さを自己呈示したいと考えています(吉澤,2012)。
自分の魅力を誇示したいということは、自分の容姿や、パフォーマンスに自信を持っているということだね。
とは言え「拒否回避欲求」「賞賛獲得欲求」どちらも大事。
「拒否回避欲求」が悪いわけではありません。「賞賛獲得欲求」を高めた先には否定されるリスクもあるので、適度な「拒否回避欲求」は正常な反応です。
自分の承認欲求には2つの種類の欲求があり、それらの欲求が対人不安と関係しているということを理解することが最も重要だよ!
まとめ
他人に認めて欲しいという欲求にも2つの種類があること理解できたと思います。そしてその2つの承認欲求が対人不安に繋がっているということを理解することが重要です。
認知を修正するには時間が掛かるため、具体的な方略を実践することは難しいかもしれません。しかし自身の思考を理論的に把握することは、自身を客観視することに繋がるため有用です。
人間関係に悩んだ時は、「これは対人不安?」「今の自分の思考はどのような欲求に基づくものかな?」など、自分を客観視するようにしてみてください。
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