救命センターで看護師を10年以上。教育担当も経験。大学院では教育心理学と教育工学を活用しながら看護師の生涯学習について研究。目標は看護研究を身近にすること・看護師が看護を楽しみながら働き続けるためのサポートをすること。現場の看護師さんが研究や実践ですぐに使える情報を届けたいと思っています。資格は看護師/保健師/統計士。看護研究や大学院進学等、何でもご相談ください!ご連絡は問い合わせフォームやTwitterのDMよりお願いします。

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【看護師への教育を学びたい人へ】押さえるべき教育理論を解説「看護教育は“経験学習”דインストラクショナルデザイン”」

まとめ

大学院の進学に興味のある方には【大学院への進学手順は?】看護師必見「大学院進学の一歩を踏み出そう!」の記事もおすすめです。

看護師としてのキャリアに悩んでいる方には【あなたの悩みに合わせた転職系サイトの選択フローを紹介】看護師の転職・キャリアに関する悩みは5つある?の記事もおすすめです。

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Last Updated on 2023年7月19日 by カメさん

こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。

この記事は10分程度で読めます。

カメさん
カメさん

今回は看護師の教育を学ぶ上で押さえておくべき知識をまとめました。

この記事を見に来てくれた人の中には、看護師の教育に興味がある方もいれば、急に教育役割を担って困惑している人など様々だと思います。

看護学校では現場での教育方法について教えてくれる機会はほとんど無く、現場でも正しく教育を教えられる先輩が少ないのが現状です。そのため、この記事が少しでも皆様のお力になれれば幸いです。

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看護師の教育とは?

まずは看護師の教育についての概要から解説します。

看護師の教育は、

  • 個人の学習
  • OJT
  • 集合研修

の3つの要素で構成されています。これらの要素が関連付けられて循環することが大切になります。

これらの要素の中でも看護師の教育は、現場でのOJTが中心です。特に新人期以降は、集合研修も少なくなりOJTが増えてくると思います。

OJTとは?

OJTとはOn The Job Trainingの略で、先輩が後輩に対して業務に必要な知識やスキルを実践の中で教育する方法です。

OJTでは現場の看護師が教育を担います。そのため、全ての看護師が教育に関する知識を備えておく必要があると考えます。

カメさん
カメさん

2-3年目から教育役割を任されることも多いよね。

看護師の世界では自己流の教育が横行しています。学ぶ機会が無いため自分が教えてもらった先輩の真似をして教育する場合がほとんどです。それでは、人材は育ちません。

ましてや悪しき慣習が引き継がれる原因にもなります。

カメさん
カメさん

いまだに、教育とは威圧的に教えることだと思っている看護師がたくさんいるよ

是非この機会に、正しい成人学習の知識を身に付けましょう。

看護師教育は「経験学習」➕「インストラクショナルデザイン」

看護師の教育は、看護実践の経験を大事にする(経験学習モデル)とともに、教育計画を理論的に設計し(インストラクショナルデザイン)、学習効果を高めることが重要です

それでは「経験学習」と「インストラクショナルデザイン」について、それぞれ解説します。

経験学習理論:看護師は実践から学ぶ

看護師の教育では経験学習が重要視されています。なぜ経験学習が重要かと言うと「看護は実践の学問」だからです。

実際の患者さんと関わった経験をもとに看護師は成長します。看護の理論家であるTanner(2006)の発表した有名な臨床判断モデルにおいても、臨床経験を振り返り次の実践に活かして行くことを重要視しています。

引用:細田 泰子ら(2018)─臨床判断を拓く評価に向けて─ラサター臨床判断ルーブリック日本語版の作成.看護教育,59巻1号,pp.40-47.

また一般的にも経験からの学びは重要視されており、有名なものに「70:20:10の法則」があります。

これは、1996年に米国の人事コンサルタント会社であるLominger Pressは『Career Architect Planner』が報告したもので、成功したリーダーの学びは70%が「業務経験」、20%が「薫陶」、10%が「研修」という結果であったことを報告しました。

ここからも、経験の重要性が分かります。

カメさん
カメさん

経験学習は負担が少ないのもメリットだね。成人学習において学習の負担は重要な要素だよ。学生と違って、仕事もしないといけないからね。

経験学習は様々な理論家により発展してきました。その中でも特に有名なのが、下記に示す理論家たちです。

この中でも実践家である看護師に活用できる理論がコルブの経験学習モデルです。コルブは、経験学習を「具体的経験の変換を通じて、知識が創出されるプロセス」と定義しました。

その定義を踏まえて、「具体的経験」「内省的観察」「抽象的概念化」「能動的実験」の循環型サイクルから構成される経験学習モデルを提唱しました。

「具体的経験」をして、その内容を「内省(リフレクション)」することで、「抽象的な概念を抽出」して仮説や理論に落とし込み、 それを「新たな状況に適用する」ことによって学習するというモデルです。

経験学習モデルの実例や、経験学習モデルを活用したワークシートについての詳細は【経験学習ってなんだ?】看護師必見「コルブやギブスなど複数の理論を基に解説するよ」を参照してください。

カメさん
カメさん

上記の記事で他の経験学習に関する理論も解説してるから是非参照してね。

インストラクショナルデザイン:理論的な教育設計が重要!

インストラクショナルデザインとは、教育工学研究の1つの分野で、Instructional Designの頭文字を取ってIDと呼ばれることが多いです。

日本における第一人者である鈴木克明先生(2006)は、インストラクショナルデザインについて「教育活動の効果・効率・魅力を高めるための 手法を集大成したモデルや研究分野、またはそれらを応用して学習支援環境を実現するプロセス」と述べています。

つまり簡単に言うと、教育活動の設計方法のことです

教育は感覚的に計画するのではなく、理論に基づいて教育設計を行う必要があります。特に看護師教育では理論に基づく教育計画が普及していないことが課題の1つです。

是非、皆様の職場でもインストラクショナルデザインを活用して、根拠の確かな教育を提供しましょう。

下記が主なインストラクショナルデザインの理論です。

カメさん
カメさん

概念の大きさだと「IDの第一原理」>「ADDIEモデル」>「ガニエの9教授事」>「ARCSモデル」かな。

それぞれの理論について解説します。

IDの第一原理:ID理論の総まとめ

IDの第一原理とは、M. David Merrill(2002)が提唱した「インストラクションの第一原理」のことです。「メリルの第一原理」とも呼ばれています。

IDの第一原理は、数多くあるID理論の統合を目指しており、近年提唱されている複数のID理論に共通する特徴をまとめています

メリルは効果的な学習環境を実現するために必要な下記の 5つの要件を提示しています。

「IDの第一原理」についてさらに詳しく知りたい方は【IDの第一原理(メリルの第一原理)とは?】看護教育でもう悩まない「インストラクショナルデザインを活用しよう!」を参照してください。

ADDIEモデル:システム的な教育アプローチを実現!

ADDIEモデルは、実践に応用可能なポイントが多い理論です。システム的な教育アプローチとも呼ばれます。

システム的アプローチとは、PDCA(plan,do,check,action)のサイクルが有名だと思います。このPDCAのサイクルを教育に応用したものがADDIEモデルです。

ADDIEモデルは「Analysis:分析」「Design:設計」「Development:開発」「implementation:実施」「Evaluation:評価」の頭文字を取ったものです。

この5段階のプロセスをシステム的に繰り返すことにより効果的な学習を設計することができます。

カメさん
カメさん

ADDIEモデルを活用することで、現在の教育で出た課題を次の教育に活かすことができるよ。

「ADDIEモデル」についてさらに詳しく知りたい方は【ADDIEモデルとは?】看護師必読「システム的アプローチで現場教育を改革しよう」を参照してください。

ガニェの9 教授事象:具体的な学習支援を設計しよう!

ガニエの9教授事象とは、簡単に言うと「9つの学びの支援」のことです。

ガニェ(2007)は指導過程(授業や教材など)を「学びを支援するための外側からの働きかけ」と捉えました。その働きかけとして、3段階・9つの働きかけを提案しています。

以下が3段階・9つの働きかけです。

インストラクショナルデザインでは、学習計画の際に「入口」と「出口」を決めることが重要と言われています。学習の「入口」とは、学習者の特性を分析することであり、学習の「出口」とは、学習目標を明確にすることです。

そして、「入口」と「出口」の 2 点を結ぶものが「方法(学びの支援)」である「ガニェの9教授事象」です。

「ガニェの9教授事象」について詳しく知りたい方は【ガニェの9教授事象とは?】看護教育の悩みを解決「理論的に教育を計画しよう!」を参照してください。

ARCS モデル:学習者の興味を惹こう!

ARCSモデルは、Keller(1984)にて提唱された動機付けに関する学習モデルです。

学習者個人の背景・学習課題・学習環境を、授業や教材にシステム的に取り入れて意欲喚起していこうという学習モデルです。

このモデルでは、学習意欲を「注意 (Attention)」、「関連性 (Relevance)」、「自信(Confidence)」、「満足感 (Satisfaction)」の 4つの側面で示しており、それぞれ頭文字をとってARCS(アークス)モデルと呼びます

このモデルは心理学の動機付けに関する理論を基盤として作られています。つまり、魅力的で、やる気になる学習設計を行うための理論です。

この理論は学習設計の際にも使えますが、学習を評価する際にも使えます。今回の病棟での勉強会は魅力的だったかな?」そんな時はARCSモデルを活用したアンケートを作って評価してみましょう。

「ARCSモデル」について詳しく知りたい方は【ARCSモデルとは?】看護教育の悩みを解決「魅力的な研修や勉強会を作ろう」を参照してください。

カークパトリックの4段階評価モデル:教育は評価も大切

教育支援を実施したら、教育支援の評価も必ず行うようにしましょう。

効果的・効率的な教育を行うためには理論に基づいた教育設計を行うことが重要であることを、ここまで解説してきました。教育設計には準備・実施だけでなく、評価の要素も含まれます。前述したADDIEモデルのように、準備・実施した教育を、評価して次の教育に繋げて行くシステム的なアプローチが大切です。

実施した教育支援の評価を行う際に有用な理論が「カークパトリックの4段階評価モデル」です。

カークパトリックの4段階評価モデルとは、Donald kirkpatrickが1959年に公表した、研修・教育の評価、効果測定の枠組みです。近年、教育効果の向上やコストの削減への関心が高まり、注目されています。

カークパトリックの4段階評価モデルは、名前の通り下記の4つのレベルで評価を行います。

カークパトリックの4段階評価モデルのポイントは、個人の学習到達度の評価で終わらずに職場での行動変容や企業成果まで視野に入れていること。

カメさん
カメさん

企業成果まで視野に入れているからカークパトリックの4段階評価モデルで教育効果を示すことは、病院や看護部へのアピールにもなるよ。

せっかく頑張って教育支援を行なったと思うので、必ず評価して学習効果を確認するようにしましょう。学習効果を評価することで、次の教育にも繋がります。

「カークパトリックの4段階評価モデル」についてさらに詳しく知りたい方は【カークパトリックの4段階評価モデルとは?】看護教育の疑問を解決「効果的・効率的に研修を評価しよう」を参照してください。

まとめ

護師の教育は、現場の看護師の教育力にかかっています。

また、正しい教育の知識を身に付けた看護師が増えることは、働きやすい職場を作るための大きな要素でもあります。

看護の質の向上、看護師が楽しく働き続けることのできる職場の醸成のためにも、みんなで看護教育を学んでいきましょう!

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