Last Updated on 2023年7月19日 by カメさん
こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は10分程度で読めます。
今回は看護研究の流れをまとめたよ。これを読めば看護研究の一連の流れが理解できるようになるよ。
今回は看護研究の一連の流れについて解説します。一連の流れとは研究のテーマを決めて、研究計画を立てて、研究成果を発表するまでの流れのことです。
今回の記事が、「看護研究に興味があるけど、何をしたら良いか分からない人」「職場で看護研究を強制されたけど、どうしたら良いか分からない人」など、看護研究をする上で困っている人の助けになれば幸いです。
看護研究が嫌いな人も多いから、少しでも看護研究に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
なんで看護研究をしないといけないの?
まずは看護研究をやる意義について解説します。
残念ながら看護研究をスタッフに強制させる施設は多数あります。そのような環境では、看護研究をやる意義を教えることなく看護研究を強制させます。結果として看護研究が嫌いになってしまいます。
そのため、看護研究をやる意義から説明させてください。
看護研究を行う一番の意義は、「看護の知識・技術」の発展のためだと考えます。「看護の知識・技術」が発展することは、引いては患者・家族、現場の看護師・医療スタッフのためになります。
看護研究の内容は小さなことでも構いません。研究活動は、昔からある膨大な知識体系の中にあなたの研究結果を積み上げる作業です。少しづつ研究成果が積みあがることで「看護の知識・技術」は発展します。
以下が看護研究により「看護の知識・技術」が発展するイメージです。
あなたの研究成果は、新たな看護学の知識体系に加わり、次の新たな研究へと繋がっていきます。結果として、「看護の知識・技術」の発展につながり、患者・家族や現場のスタッフに還元されていくことでしょう。
臨床の看護師が日々の業務で感じた疑問を研究で解決していくことは、看護の発展のためにはとても重要だよ。まあでも臨床の看護師は忙しいから、研究成果(論文)を読んで実践に活かすだけでも、個人的には十分だと思うけどね。
それでは、看護研究のテーマ決めから研究成果の発表までの具体的な流れについて解説していきます。
看護研究は8つのステップ:「研究テーマ決め」~「研究成果の発表」までの流れ
下記が看護研究の全体像で、「研究テーマ決め」から「研究成果の発表」に至るまでの流れです。
何から手をつけて良いか分からない人でも、上記の手順で進めることで、効率的かつ効果的に看護研究を進めることができます。
それでは、各手順について解説していきます。
➀臨床疑問を明確にする:研究テーマを決める
研究テーマ決めに悩む人も多いですが、研究のテーマは、日々の臨床における疑問から考えましょう。臨床の疑問を研究にて解決することは、看護の発展に繋がります。
日々の臨床における疑問は、臨床疑問(clinical question:CQ)と呼ばれます。
まずは、あなたが日々の臨床において疑問に感じていることを書き出してみましょう。どんなことでも構いません。患者ケアや、看護教育などで困っていることなどは全て臨床疑問です。
例えば、「どんな人が転倒しやすいの?」「新人看護師に効果的に急変対応を教えるにはどうしたら良いの?」などです。
思いつくままに書き出してみましょう。
臨床疑問は、そのままあなたの研究テーマになります。日々の業務中の些細なことから研究は生まれていきます。日々、目を光らせておきましょう。
詳しくは【臨床疑問(クリニカルクエスチョン)と研究疑問(リサーチクエスチョン)とは?】看護研究の疑問を解決でも解説しているので参照してください。
どんなことでも臨床疑問になるけど、業務改善でなんとかなる問題ではないかは確認してね。
②文献レビューを行う:研究テーマの背景を知る
臨床疑問を書き出すことができたら、次は臨床疑問に関する徹底的な先行研究の文献レビューを行います。文献レビューを行うと、臨床疑問(研究テーマ)に関連する分野の現状が理解できてくると思います。
文献レビューは新奇性を確保する上でも重要です。文献レビューにて先行研究の結果を確認することで研究テーマについて何が明らかになっていて、何が明らかになっていないのかをリサーチしましょう。
文献レビューをすると、研究テーマに関する知識も増えるし、自分の研究では何を明らかにしなきゃいけないかが見えてくるね。
リサーチ不足で研究を行うと、「自分の研究と同じことを、すでに誰かがやっていた」なんて悲しいパターンもあるから気をつけましょう。
文献レビューについての詳細は【文献検討・文献レビューってなに?】看護師必読「論文を読む意味・探し方・選び方を解説」でも解説しているので良かったらご覧ください。
③研究疑問を明確にする:研究で明らかにすること(研究目的)を具体化する
漠然としていた臨床疑問が文献レビューを行うことで洗練されてきたと思います。洗練された臨床疑問を構造化して、研究で実証可能な形式にしたものが研究疑問です。つまり研究疑問とは、今回の研究によって明らかにしたいことです。
研究疑問はそのまま研究の目的・研究の仮説となります。研究の軸になるため入念に検討しましょう。
臨床疑問を研究疑問へと構造化するためにはPI(E)COを活用することをおすすめします。PI(E)COとは下記の頭文字を取ったものです。
- P:Patients [患者]
- I(E):Intervention [介入]・Exposure [曝露]
- C:Control [対照]
- O:Outcome [アウトカム]
詳細は【PI(E)COとは?】看護師必読「研究疑問を整理しよう!PI(E)COは論文を読む時にも使えるよ」を参照してください。
PI(E)COを活用して研究疑問を明確にする段階で、どのような研究デザインを使って疑問を明らかにするのかも検討しましょう。研究デザインとPI(E)COを明確にすることで、実行可能性が高まります。
研究疑問は新奇性・実行可能性が大切になります。研究疑問を評価する視点として下記のFINER(FIRM2NESS)の枠組みが有用です。下記の枠組みに沿って研究疑問を評価してみましょう。
- F:Feasible [実施可能性]
- I:Interesting [科学的興味深さ]
- N:Novel [新奇性]
- E:Ethical [倫理性]
- R:Relevant [必要性]
- M:Measurable [測定可能性]
- M:Modifiable [改善可能性]
- S:Specific [具体性]
- S:Structured [構造化]
興味のある方は【FINER /FIRM2NESSとは?】看護研究の疑問を解決「リサーチクエスチョンを洗練させよう」を参照してください。
④研究計画書の作成:研究実施の計画を具体的に検討する
研究疑問の特定により、今回の研究によって明らかにしたいことや、大まかな骨組みが決まりました。
研究の基礎固めはここで終了です。ここからは、実際の研究実施・データ収集の手順を具体的に計画していきます。研究の計画を立てるためには研究計画書の作成が必須となります。
研究計画書は、倫理申請の際にも必須になるから必ず作成しよう。
研究が成功するかどうかは、研究計画書が徹底的に検討されているかが鍵を握ります。研究では計画・準備がとにかく重要です。
良い研究は良い計画から始まります。良い研究計画書を記載することができていれば、論理に一貫性のある研究となり、さらには論文も書きやすくなります。
研究計画書を記載するポイントは、今回の研究実施に関する計画のみを簡潔に記載すること。研究計画書に、今まで勉強したことを詰め込みたくなりますが、ぐっと抑えて、今回の研究実施に関わる具体的な内容に焦点を当てて記載しましょう。
研究計画書の記載方法についての詳細は【研究計画書の書き方を解説】研究計画書・依頼文書・説明文書・同意書・同意撤回書のフォーマットもあるよ!をご覧ください。
倫理申請も視野に入れることも大きなポイントだね。
論文執筆は研究計画書の作成時から始まる!
研究計画書の作成段階から論文を書き始めることが理想的です。Introduction[緒言]とMethods[方法]に関しては研究計画書の作成段階から書き始めることができるはずです。
データ収集を始める前までに、論文のIntroduction[緒言]とMethods[方法]を書き上げておきましょう。
研究計画書段階から論文レベルのIntroduction[緒言]とMethods[方法]を考えよう。
⑤倫理委員会の承認を受ける:倫理的な問題がないか確認する
研究計画書が作成できたら、次は倫理委員会に研究実施について審査してもらいます。
倫理委員会では、あくまで今回の研究が倫理的に問題がないかを確認してもらいます。所属する施設毎に倫理委員会が設置されており、手続き等も異なるため事前に確認してください。
倫理委員会への申請についての詳細は倫理審査に出そう!【看護研究の疑問を解決】倫理審査の概要・申請手順を解説にまとめているので参照してください。
倫理委員会の承認を得ることができたら早速、研究を開始しデータ収集を行いましょう。
倫理委員会に申請してから承認されるまで、少なくとも1ヶ月程度かかることが一般的です。修正がある場合は、さらに長くなります。余裕を持ったスケジュールを立てるようにしましょう。
⑥研究実施・データ収集:データを集める
倫理審査の承認を受けたら、研究を開始してデータを収集しましょう。
研究方法は取り扱うデータにより異なります。データには量的データと質的データがあります。そして量的データを取り扱う場合は量的研究、質的データを扱う場合は質的研究と呼ばれます。
量的データとは数量的に評価できるデータです。また質的データとは、インタビュー記録などの主観的データのことです。
量的研究・質的研究に関する詳細は【量的研究・質的研究ってなに?】看護師必読「看護研究の分類を理解しよう」を参照してください。
最近では、看護のような複雑な事象の場合は混合研究法という手法も提案されています。混合研究法とは、量的研究と質的研究を組み合わせた手法です。負担は大きくなりますが、一回の研究でより深い内容を探究することができます。
混合研究法について詳しく知りたい方は【混合研究法とは?】看護師必見「質的研究と量的研究を組み合わせよう!」を参照してください。
量的データを集める
量的研究のデータ収集のデザインには、「介入研究」や「分析的観察研究」があります。
「介入研究」とは、研究対象者に治療や看護ケアなどのを行い効果を分析する方法です。「分析的観察研究」とは、2群以上を対象にある事象を観察し分析する方法です。
研究デザインについて詳しく知りたい方は【研究デザインとは?】看護師必読「研究デザインの選択方法・分類方法を理解しよう!」を参照してください。
看護研究における量的研究では、アンケートを用いた研究が多いです。これは「分析的観察研究」に該当します。
アンケート調査について詳しく知りたい方は【アンケート調査とは?】看護師必見「アンケート(質問紙)を使って研究してみよう!」を参照してください。
アンケート調査は質的研究に近いけどね。
質的データを集める
質的研究は、研究デザインの分類で考えると、「記述的観察研究」に該当します。「分析的観察研究」と異なり、群毎の比較はせず、ある現象を記述し実態を把握するのが「記述的観察研究」です。
看護研究における質的研究では、インタビュー調査や参加観察研究が多いです。
インタビュー調査では、研究対象にインタビューを行いインタビューの内容を分析します。また参加観察研究では、研究対象の行動等を観察したデータをもとに分析を行います。
インタビュー調査や参加観察研究について詳しく知りたい方は【面接法とは?】看護研究の悩みを解決「インタビュー調査で質的研究をしよう!」・【参加観察法とは?】看護研究の疑問を解決「観察法でデータ収集しよう」を参照してください。
看護には、言葉で明示することの難しい暗黙的な知識・技術が多くあるよ。そのような現象を明らかにするためには質的研究がぴったりだね。
⑦データの分析:集めたデータを分析する
研究を開始しデータを集めることが出来たら、次はデータの分析を行います。
研究における分析とは、収集したデータについて統計解析(量的データ)や、コーディングとカテゴリ化(質的データ)することで、因果関係や現象の実態など、自分が明らかにしたいことを理論的に証明することです。
つまり、あなたが研究疑問に設定して内容は、この「データ分析」の過程を経て明らかにされます。データ分析におけるポイントは、データ分析と研究疑問(研究目的)の間には一貫性を持たせることです。
研究目的と関係ないことを分析していたら、良く分からない研究になるからね。研究の肝になる部分だから慎重に分析しよう。
量的データの分析方法は、収集した数量データ(客観的データ)を統計解析することにより行います。統計解析については苦手な方も多いかと思います。詳しく知りたい方は【統計解析はどれを使えば良いの?】看護研究の悩みを解決!を参照してください。
また、質的データ分析はインタビュー等の主観的データを逐語録にして分析します。簡単なようで奥が深いのが質的データの分析です。詳しく知りたい方は【質的研究のデータ分析方法を解説】看護師必見「逐語録やコーディングを含めて分析方法を解説!」を参照してください。
⑧研究成果の発表(学会発表・論文発表):研究成果を社会に公表する
データ収集・分析が終わったら、いよいよ研究成果を発表しましょう。
研究成果の発表とは、研究成果を社会に公表することです。研究成果を発表し社会に公表することは、次の研究に繋がり、最終的には患者・家族や看護職のためになります。
頑張って研究しても、どこにも発表しないのでは努力が無駄になってしまいます。大変ですが、あと一踏ん張り頑張りましょう。
もちろん研究成果を発表して、努力を形に残すことは、自分の功績にもなるから大切だよ
研究発表の方法には以下の2種類があります。
- 学術学会での発表(いわゆる学会発表)
- 論文での発表
学会発表とは、その名の通り学会で発表することです。学会とは、研究成果を発表する場です。また、他の研究者とディスカッションすることもできます。
学会の発表形式には、「口頭発表」と「ポスター発表」の2種類があります。
学会発表についての詳細は【学会発表とは?】看護師必見「研究結果を学会で発表しよう!」を参照してください。
次に論文発表について説明します。論文とは、ある研究テーマに沿った仮説を検証した研究結果を報告した文章のことです。英語ではpaperやthesisと呼ばれます。
論文は、個人の考えだけを書いた文章ではなく、研究の結果を論理的にまとめたものです。研究の結果とは、研究テーマの仮説を実験により検証したデータや分析結果、解釈のことです。
論文を書くことができたら、研究テーマに関連する学術雑誌等に投稿します。論文が雑誌に掲載されることで、晴れて世間に公表されます。
学術雑誌では、投稿論文に対して厳格なチェック(査読)が行われます。そのため雑誌に掲載された論文には文献的価値があり、看護学の発展に寄与することができます。論文発表についての詳細は【論文を書こう!】看護研究「論文の概要・書き方・投稿方法まで徹底解説!」完全版を参照してください。
看護系の学会や学術雑誌には何があるの?
看護系の学術学会は多数あり、日本看護系学会協議会に所属している学会は49学会あります。そして各学会で、学会誌や学術論文誌などで研究成果を発表しています。
学会発表や論文を投稿する際は上記を参考にすることをお勧めします。
まとめ
看護研究と聞くと、何かとても難しいものを想像するかもしれません。しかしそれは実態が見えていないことが原因かもしれません。看護研究の基本的な形式は決まっています。研究の形式に慣れてしまえば難しいものではありません。
あくまで研究は、看護を発展させるための道具です。あなたの貴重な臨床経験から導き出した疑問を、看護研究という道具を使って解決しましょう!
どんな小さな疑問の解決でも、皆んなで積み重ねれば大きな成果になるよ。身近な疑問から看護研究を始めてみよう!
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