Last Updated on 2023年7月19日 by カメさん
こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は5~6分程度で読めます。
今回は、量的研究と質的研究について理解できる記事になってるよ!
今回は量的研究と質的研究の概要をまとめました。記事の後半では、実際の論文も紹介しているので良かったら参照してください。
研究方法(研究デザイン)の細かい分類については下記の記事を参照してください。
【研究デザインとは?】看護師必読「研究デザインの選択方法・分類方法を理解しよう!」
YouTubeでも質的研究・量的研究について詳しく解説しているので良かったら参照してください。
質的研究(帰納的研究)や量的研究(演繹的研究)とは?
研究には大きく分けて、質的研究と量的研究があります。
そして、質的研究は帰納的研究と呼ばれ、量的研究は演繹的研究と呼ばれます。
現場では質的研究が軽視されている場面をみかけますが、研究においてはどちらも重要な意味があり対等です。特に看護においては質的研究は重要です。理由は後述します。
量的研究と質的研究は一連の流れであり、どちらが上などはないよ。
質的研究(帰納的研究)について詳しく教えて!
質的研究とは、「研究者自身が対象とする現象を観察し、そこで得られた情報を自身の経験を基に解釈して新しい概念を構築する研究方法」です。
そのため、まだ研究がされていない新しい分野では、まず質的研究を行いその分野では何が起きているのかを明確にすることが重要になります。
一般的に看護の分野は臨床研究が遅れていると言われており、代々伝わる経験則のような目に見えない実践の知が多くあります。そのため自身が研究対象とする現象の先行研究が少ないことが良くあります。そのような時は、質的研究を選択するのが良いでしょう。
看護の分野は未開拓なテーマが沢山あるよ。質的研究で新しい概念を発見しよう!
実際の質的研究の論文を紹介!
これは、患者と看護師の関係において、看護師が患者に関心を持ち専心(そのことにだけ心を注ぐ)するプロセスに関する質的研究です。
この研究では、インタビューを行って現象の概要を把握するだけではなくGTA(Grounded Theory Approach)という方法を用いて、概念を生成し、カテゴリーに分類して関係性を図示した後に理論を構築するという研究方法を用いています。
この研究方法はかなり難しいので、実際にこの研究方法を用いたい考えた場合は経験のある方のもとで実施するのが良いと思います。
質的研究は、以下の図にあるように膨大な質的データ(計算したりできないデータ)から概念を生成して新しい考え方を構築していくプロセスになります。
質的研究では、新しい考えたを構築するために、研究者が常に自身の研究疑問を明確にしていることが重要であり、研究の方向性がずれてしまわないように心掛けることが重要です。
先行研究も少ない状況での研究である可能性が多いので、データを読み解くのに、自分の経験が重要になるよ!少ない知識で質的研究を行うと、見当違いの結果になることがあるから注意が必要だよ。
量的研究(演繹的研究)について詳しく教えて!
量的研究とは「事前に仮説を設定して、その仮説を実証することで法則を明らかにする研究方法」です。仮説を立てるためには、対象とする現象についてある程度解明されいている必要があります。対象とする現象に未知のことが多すぎる場合は、上記の質的研究ですね。
量的研究は仮説の設定が重要になります。その仮説が本当に妥当なものなのかが重要で、根拠のない仮説から得られた結果が妥当な結果であるとは言えません。先行研究や、臨床での経験を基に仮説を組み、偏りがないようにしましょう。
また、量的な研究は調査や実験についての方法を他の人が同じ実験を再現できる程に厳密に設定する必要があります。これを再現性と言います。再現性を高めることで、科学的妥当性を高めることができます。
量的研究は設定した仮説について、ある方法を用いて行うものであり、仮説について全てを解明できるものではありません。
量的研究の結果から得られる解釈には限界があるから注意が必要だよ。
実際の量的研究の論文を紹介!
これはフライトナース(ドクターヘリに乗車する看護師)の熟練性を量的研究で明らかにできるかどうかを試みた研究です。
この研究での仮説は、「ウェアラブルカメラを装着して撮影した動画から解析した、エントロピー(動作の複雑性)を初心者と熟練者で比較すると、熟練者のエントロピーが低い」などになると思います。
この研究では、下記のような数量データから結果を導いています。下記の表を見ると、熟練者が初心者よりも、エントロピーが有意に低いことが分かります。つまり熟練者は初心者と比較して、円滑・なめらかに業務を行っていることが分かります。
また量的研究では、数量データから統計解析を行うことが多いので下記のようなグラフを示して結果を説明することができます。ちなみにこれは、動画の中の動作の分類を示したものです。
ここで注意しなければいけないのが、統計解析による結果のみの解釈に陥らないことです。
例えば、この研究のようにエントロピーに有意差があったとしても、その差が本当に臨床的に意味のある差なのかというのを考えることが必要です。
論文を読む際は統計的な結果や論文の筆者の解釈を読むだけではなく、自分の臨床経験から考えて、その結果が意味のある結果なのかというのを考えるようにしましょう。
まとめ
質的研究と量的研究には、それぞれの役割があります。また質的研究と量的研究は一連の流れです。どちらの研究方法が優れている等はないので、自分の研究テーマに合わせた研究方法を選択するようにしましょう。
ちなみにミックスメソッド(混合研究法)と言って、量的研究と質的研究を合わせて行うことで、両者の問題点を補ったり、研究の信頼性を高めることができる研究方法もあるよ!
おまけ
今回紹介した論文は、どちらも現場では当たり前と思われるような内容かもしれません。しかし、そのような当たり前のことを形式化することが看護を発展・教育していくためには重要です。あの先輩はなんであんなに患者さんのために行動できるのだろうか、あの先輩はなんで忙しい状況でも無駄なく行動できるのだろうか。
今までは背中を見て学ぶことが主流だったと思います、研究により形式化されることで様々な人が同様の水準で学ぶことができるようになります(一般化の問題はありますが)。
このように考えていくと、ご自身が働いている職場にもクリニカルクエスチョンは沢山転がっていると思います。まずは当たり前だと考えていることが何か探すところから始めるのも良いかもしれません。
引用・参考文献
- 川口孝泰(2020) .看護研究 ミニマム・エッセンシャルズ.医学書院,東京.
- Koji Makino, Hayato Higa(2021).The Process of Nurse Dedication in Patient–Nurse Relationships.Japan Academy of Nursing Science,Vol. 41, pp. 37–44.
- Morikatsu Tsuchiya, Kohta Ito, Seiichi Takahashi, Takayuki Sakagami, Kazuchika Manabe(2021).Assessment of Nurses’ Proficiency in Pre-hospital Care Using Activity Based on Wearable Camera Video: Comparison between Expert and Novice Flight Nurses.Japan Academy of Nursing Science,Vol. 41, pp. 71–78.
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