Last Updated on 2022年11月13日 by カメさん

こんにちは!救命センターで働く看護師のカメさん(@49_kame)です。

今回はショックの具体的な対応について解説するよ。
ショックに気付くことが何よりも重要ですが、ショックの対応を身に着けておくことも、患者の転帰を改善するために重要なことです。

ショックの定義やショックの4つの分類を頭に入れながら、ショックの対応について考えて行きましょう!
ショックの対応「6つのポイントを理解する」
それでは、外来や病棟で目の前の患者さんがショックであることに気付いた場面を想像してください。
ショックの対応には6つのポイントがあります。下記に記載のショックの対応のフローを見ながら解説します。

①ショックの認知
ショックの対応の際に最も重要なことが、ショックに気付くことです。

気づかないことにはなにも始まらないよ。
そしてほとんどの場合、一番最初に気付くのは看護師です。看護師の重要性に自信と責任を持っていきましょう。
②人を集める
次に大事なことが、人を集めることです。ショックに気付いたらまず人を呼んでみんなで対応しましょう。

どんなにすごい人でも一人じゃ何もできないよ。
ショックの対応で目指すべきゴールはABCの安定化です。とにかくそれをゴールにみんなで協力しましょう。
③さるも聴診器
ショックの初期対応として「さるも聴診器」が有名だと思います。
「さるも聴診器」の詳細は下記で解説しています。ショックの際に必要な治療や検査についてのキーワードです。

キーワードを覚えれば、急変の場面でも抜けなく対応できるようになるよ!
④挿管の検討
ショックバイタルは挿管の適応です。そのため挿管を行う可能性もあるので準備をしましょう。
ショックバイタルで挿管する場合は昇圧剤を用意する
ショックバイタルで挿管する場合であっても鎮痛・鎮静薬を使用するため血圧低下に注意が必要です。そのため、いつでも昇圧剤を使用できるように準備しましょう。
⑤輸液ルートの確保
ショックの対応を行う際は、必ず輸液のルートは2か所以上確保しましょう。
正中に20G以上が理想です。

血管が虚脱しているので難しいから頑張って!
全てのショックで大量輸液が必要なわけではない
血液分布異常と循環血液量減少性ショックの2つはショックの是正のために大量の輸液が必要になります。しかし、心原性ショックや閉塞性ショックで大量輸液を行うと状態が悪化するため注意してください。

ルートの確保は全症例で必須だけどね。
⑥ショックの原因検索
ABCの安定化と並行してショックの原因検索も行います。もしもショックの原因が心原性ショックや閉塞性ショックであれば輸液量を減量します。
心原性ショックや閉塞性ショックの原因は血液量(相対的にも絶対的にも)ではありません。
血液が拍出できない状態での過剰な輸液は心負荷の増大など悪影響を及ぼすことがあるので注意しましょう。
さるも聴診器

さるも聴診器に記載されている項目は、急変の対応(CPAになる前)をする時にとても役に立ちます。
患者さんの状態が急に悪くなった時は、急いで「さるも聴診器」を揃えましょう。

「さるも聴診器」を揃えれば初期対応として間違いないよ!急変は焦って色々と忘れちゃうから、こういう語呂合わせがあると便利だよね。
気管挿管「5つの適応を理解する」

気管挿管の適応については、「①意識障害」「②Shock vital」はわかりやすいと思います。
そのため「③高二酸化炭素血症を伴う呼吸不全」「④低酸素性呼吸不全」「⑤呼吸仕事量が維持できない」の3つの項目について解説します。
③高二酸化炭素血症を伴う呼吸不全④低酸素性呼吸不全
挿管の適応である③④は呼吸不全に関する項目のため合わせて解説します。
低酸素血症を伴う呼吸不全
肺胞低換気・換気血流比不均等・拡散障害・シャント
高二酸化炭素血症を伴う呼吸不全
肺胞低換気
Ⅰ型呼吸不全(ガス交換不全)
換気血流比不均等・拡散障害・シャント
Ⅱ型呼吸不全(換気不全)
肺胞低換気
つまり、低酸素血症を伴う呼吸不全はⅠ型・Ⅱ型の呼吸不全であり、高二酸化炭素血症を伴う呼吸不全はⅡ型の呼吸不全です。

呼吸不全の型を理解しながら対応していると急な挿管にも慌てずに対応することができるよ。
⑤呼吸仕事量
呼吸仕事量とは呼吸筋群の働きのことで、2種類の仕事量があります。
①肺の弾力に逆らう呼吸仕事量
②気道抵抗に逆らう呼吸仕事量
肺自体の問題なのか、気道の問題なのかを見極めながら対応しましょう。
ショックの4分類毎の治療
ショックの4分類毎の治療について解説します。ショックには一般的に4つの分類があり、分類毎に治療が異なります。アプローチを間違えると状態が悪化する可能性もあるため正しく理解しましょう。

輸液の管理など、看護師が理解しておくべき点はたくさんあるよ。

Hypovolemic shock (循環血液量減少性ショック)の治療

まずは輸液を投与して輸液への反応を評価します。そして輸血が準備出来次第、輸血を投与します。
輸血開始までの時間が患者の転帰を左右するため、事前の準備など多職種の連携が重要です。
また、出血が原因の場合は止血しなければ良くなりません。ABCを安定させることを最重要に考えながらも、ショックの原因への治療を予測しながら行動しましょう。
Distributive shock(血液分布異常性ショック)の治療

血液分布異常性ショックの代表はアナフィラキシーショックと敗血症性ショックです。
どちらも外液の投与とカテコラミンが必要となります。
カテコラミンは敗血症性ショックでノルアドレナリン、アナフィラキシーショックでアドレナリンです。
アナフィラキシーショックは0.3mgを筋注です。
症状が改善しなければ繰り返し投与するので、アナフィラキシーショックに遭遇した場合はアドレナリンを複数回投与できる準備をしておきましょう。

血管が拡張して相対的に血液量が減少しているから、外液の負荷も忘れずに!
外傷後の場合は神経原性ショックも考慮
外傷後のショックで徐脈・血圧低下の場合は脊髄損傷による自律神経失調に伴う神経原性ショックの可能性があります(出血性ショックの否定が前提)。外傷と徐脈がキーワードです。このショックも末梢血管拡張による相対的な血液量減少によるショックです。そのため血管収縮薬であるノルアドレナリンが効果的です。また徐脈が遷延する場合には、副交感遮断薬であるアトロピンを使用します。

徐脈+ショックは他にも高Kや下壁の心筋梗塞でも引き起こされるよ。
「Cardiogenic shock(心原性ショック)の治療」

心原性ショックの場合は心筋梗塞の判断が重要です。
心筋梗塞であれば、早期に血行再建を行う必要があるため、心電図・心エコー・心筋バイオマーカーの検査の準備をしながら循環器内科の医師にコンサルトします。

看護師が速やかに検査の準備をして、治療を予測していくことが重要だよ
看護師が速やかに行動することで、心筋梗塞のゴールデンタイム(6時間:心筋のダメージを少なくできる時間)以内に治療を開始することができます。
入院患者の高齢化の影響もあり、循環器と関係無い疾患で入院した患者が急に心筋梗塞を併発することは多々あります。そのため、常に心筋梗塞が起こるかもしれないというアンテナを張ることが重要です。
「6時間以内に治療開始」を合言葉に、速やかな行動を心掛けましょう。
「Obstructive shock(閉塞性ショック)の治療」

閉塞性ショックは主に心タンポナーデ、緊張性気胸、肺血栓塞栓症です。
どの病態も、血液量の減少が原因ではないので輸液負荷は行いません。心臓が血液を拍出できないことによるショックであるため、輸液負荷を行っても状態は改善しません。
心タンポナーデ
心タンポナーデはBeckの三徴が有名です。
頸静脈怒張、低血圧、心音微弱
他にも奇脈やKussmaul徴候を呈します。
心タンポナーデの検査はエコーが有用です。早期に心嚢穿刺または心膜の切開を行う必要があるので準備しましょう。
通常でも心嚢液は50ml程たまっていますが、100mlになっただけでも心タンポナーデになります。
緊張性気胸
胸痛・息切れ・呼吸促拍・頻脈
放置すると血圧が低下してショックへ移行するので注意が必要です。緊張性気胸は進行が早く、早期に心停止へ移行するためX線などの確定診断を待たずに脱気(穿刺針やメス)を行う必要があります。

すぐにX線撮影ができるなら、X線撮影を行ってから治療に移ろう。
肺血栓塞栓症
息切れ・胸の痛み・せき・冷や汗・失神・動悸
原因として多い深部静脈血栓症の症状(下肢の腫脹・圧痛・発赤)などが先行することもあります。

看護師が早期に深部静脈血栓症の兆候に気付くことができれば、重症化を防げる可能性があるよ。
肺血栓塞栓症の主な治療は血栓溶解や血栓除去になります。
まとめ

看護師がどれだけ早期にショックを察知できるのか、どれだけ先を予測して迅速に治療環境を調整できるのかにより患者の転帰は異なります。
平常時から知識を固め、急変時には落ち着いて広い視野を持って行動できるようにしましょう。

急変は怖いことだけど、知識があれば落ち着いて行動することができるよ!
引用・参考文献
坂本 壮(2015).救急外来ただいま診断中!.中外医学社,東京.
林 寛之(2017).Dr林&今の外来でも病棟でもバリバリ役立つ!救急・急変対応(メディカのセミナー濃縮ライブシリーズ).メディカ出版,大阪.
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