Last Updated on 2023年6月11日 by カメさん
こんにちは!救命センターで働く看護師のカメさん(@49_kame)です。
今回はショックに遭遇した時の具体的な対応について解説するよ。
ショックの概要や、ショックを発見するためのバイタルサイン・身体所見について興味のある方は【これでショックは恐くない:前編】看護師必見「ショックの概要・ショックを発見する方法を解説!」を参照してください。
ショックに気付くことが何よりも重要ですが、ショックの対応を身に着けておくことも、患者の転帰を改善するために重要なことです。
ショックの定義やショックの4つの分類を頭に入れながら、ショックの対応について考えて行きましょう!
YouTubeでも詳しく解説しているので良かったら参照してください。
ショックの対応は「6つのポイント」を理解する
それでは早速ですが、外来や病棟で目の前の患者さんがショックであることに気付いた場面を想像してください。実際の場面を思い浮かべながら説明を聴くことで、より効果的に学習することができます。
ショックへの具体的な対応には下記の「6つのポイント」があります。
上記「6つのポイント」を実際の対応フローにまとめてみました。
それでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
①ショックの認知
ショックの対応の際に最も重要なことが、ショックに気付くことです。ショックに気付くために重要なことは「5つのバイタルサイン」と「7つの身体所見」です。詳しくは【これでショックは恐くない:前編】看護師必見「ショックの概要・ショックを発見する方法を解説!」を参照してください。
気づかないことにはなにも始まらないよ。
そしてほとんどの場合、一番最初に気付くのは看護師です。看護師の重要性に自信と責任を持っていきましょう。
②人を集める
次に大事なことが、人を集めることです。ショックに気付いたらまず人を呼んでみんなで対応しましょう。ショックの対応で目指すべきゴールはABCの安定化です。とにかくそれをゴールにみんなで協力しましょう。
急変対応は「チームダイナミクス」が重要
チームダイナミクスとは、「チームが個人に、個人がチームに与える影響」のことです。
チームダイナミクスが高いと、チームの中のメンバーが他のメンバーからのサポートを得て業務を遂行できたり、チームの目標を達成したりする相互依存することで発揮することができます。
どんなにすごい人でも一人じゃ何もできないよ。
③さるも聴診器
ショックの初期対応として「さるも聴診器」が有名だと思います。「さるも聴診器」とは、ショックの際に必要な治療や検査についてのキーワードです。
さるも聴診器に記載されている項目は、急変の対応(CPAになる前)をする時にとても役に立ちます。患者さんの状態が急に悪くなった時は、急いで「さるも聴診器」を揃えましょう。
キーワードを覚えれば、急変の場面でも抜けなく対応できるようになるよ!急変の時は焦るから、こういう語呂合わせあると便利だね。
④挿管の検討
ショックバイタルは挿管の適応です。そのため挿管を行う可能性もあるので準備をしましょう。
下記が挿管の適応です。
※ショックバイタルで挿管する場合は昇圧剤を用意する!
ショックバイタルで挿管する場合であっても鎮痛・鎮静薬を使用するため血圧低下に注意が必要です。そのため、いつでも昇圧剤を使用できるように準備しましょう。
気管挿管の適応については、「①意識障害」「②Shock vital」はわかりやすいと思います。そのため「③高二酸化炭素血症を伴う呼吸不全」「④低酸素性呼吸不全」「⑤呼吸仕事量が維持できない」の3つの項目について簡単に解説します。
「呼吸不全」とは?
呼吸不全とは、「大気中から酸素を体に取り入れて、体内でできた炭酸ガスを体外に放出するという肺の本来の働きを果たせなくなった状態」と定義されています。
呼吸不全を理解するポイントは2つあり、「低酸素血症を伴うか?高二酸化炭素血症を伴うか?」「Ⅰ型呼吸不全か?Ⅱ型呼吸不全か?」です。これらを原因から判断できるようにしましょう。
「低酸素血症を伴うか?高二酸化炭素血症を伴うか?」
- 低酸素血症を伴う呼吸不全の原因は「肺胞低換気・換気血流比不均等・拡散障害・シャント」
- 高二酸化炭素血症を伴う呼吸不全の原因は「肺胞低換気」
「Ⅰ型呼吸不全か?Ⅱ型呼吸不全か?」
- Ⅰ型呼吸不全(ガス交換不全)の原因は「換気血流比不均等・拡散障害・シャント」
- Ⅱ型呼吸不全(換気不全)の原因が「肺胞低換気 」です。
つまり、低酸素血症を伴う呼吸不全はⅠ型・Ⅱ型の呼吸不全であり、高二酸化炭素血症を伴う呼吸不全はⅡ型の呼吸不全です。
呼吸不全の型を理解しながら対応していると急な挿管にも慌てずに対応することができるよ。
「呼吸仕事量」
呼吸仕事量とは呼吸筋群の働きのことで、2種類の仕事量があります。
- 肺の弾力に逆らう呼吸仕事量
- 気道抵抗に逆らう呼吸仕事量
の2種類です。
肺自体の問題なのか、気道の問題なのかを見極めながら対応しましょう。
⑤輸液ルートの確保
ショックの対応を行う際は、必ず輸液のルートは2か所以上確保しましょう。
正中に20G以上が理想です。
血管が虚脱しているので難しいから頑張って!
全てのショックで大量輸液が必要なわけではない!
血液分布異常と循環血液量減少性ショックの2つはショックの是正のために大量の輸液が必要になります。しかし、心原性ショックや閉塞性ショックで大量輸液を行うと状態が悪化するため注意してください。
ルートの確保は全症例で必須だけどね。
⑥ショックの原因検索(ショックの要因毎の治療)
ABCの安定化と並行してショックの原因検索も行います。もしもショックの原因が「心原性ショックや閉塞性ショック」であれば輸液量を減量します。
「心原性ショックや閉塞性ショック」の原因は血液量減少(相対的にも絶対的にも)ではありません。血液が拍出できない状態での過剰な輸液は心負荷の増大など悪影響を及ぼすことがあるので注意しましょう。
ショックの要因毎の治療も解説
ショックの治療は、ショックの要因毎に異なります。ショックの要因とは「ショックの4分類」のことです。「ショックの4分類」については【これでショックは恐くない:前編】看護師必見「ショックの概要・ショックを発見する方法を解説!」を参照してください。
ショックの治療は、アプローチを間違えると状態が悪化する可能性もあるため正しく理解しましょう。
治療は医師の判断が全てだけど、看護師も医療チームの一員として理解しておく必要があるよ。輸液の管理など、看護師が理解しておくべき点はたくさんあるしね。
ちなみにショックの4分類とは下記のことです。
Hypovolemic shock (循環血液量減少性ショック)の治療
まずは輸液を投与して輸液への反応を評価します。そして輸血が準備出来次第、輸血を投与します。
輸血開始までの時間が患者の転帰を左右するため、事前の準備など多職種の連携が重要です。また、出血が原因の場合は止血しなければ良くなりません。ABCを安定させることを最重要に考えながらも、ショックの原因への治療を予測しながら行動しましょう。
輸液への反応とは?
輸液への反応とは、初期輸液投与後のバイタルサインの変化のことです。下記に外傷初期診療ガイドラインの内容をまとめています(あくまで外傷における出血性ショックの分類です)。
Distributive shock(血液分布異常性ショック)の治療
血液分布異常性ショックの代表はアナフィラキシーショックと敗血症性ショックです。どちらも外液の投与とカテコラミンが必要となります。
使用するカテコラミンは、敗血症性ショックは主にノルアドレナリン、アナフィラキシーショックでアドレナリンです。
敗血症性ショックの治療
敗血症性ショックの治療を下記にまとめています。良かったら参照してください。
アナフィラキシーショックの治療
アナフィラキシーショックの治療を下記にまとめています。良かったら参照してください。
アナフィラキシーショックは0.5mgを「筋注」です。
症状が改善しなければ5-15分間隔で再度投与します。アナフィラキシーショックに遭遇した場合はアドレナリンを複数回投与できる準備をしておきましょう。
血液量が減少しているから、外液の負荷も忘れずにね!
外傷後の場合は神経原性ショックも考慮
外傷後のショックで徐脈・血圧低下の場合は脊髄損傷による自律神経失調に伴う神経原性ショックの可能性があります(出血性ショックの否定が前提)。外傷と徐脈がキーワードです。
徐脈+ショックは他にも高Kや下壁の心筋梗塞でも引き起こされるよ。
外傷後の神経原性ショックの治療についても下記にまとめているので良かったら参照してください。
このショックも末梢血管拡張による相対的な血液量減少によるショックです。そのため血管収縮薬であるノルアドレナリンが効果的です。また徐脈が遷延する場合には、副交感遮断薬であるアトロピンを使用します。
Cardiogenic shock(心原性ショック)の治療
心原性ショックの場合は心筋梗塞の判断が重要です。
心筋梗塞であれば、早期に血行再建を行う必要があるため、心電図・心エコー・心筋バイオマーカーの検査の準備をしながら循環器内科の医師にコンサルトします。
看護師が速やかに検査の準備をして、治療を予測していくことが重要だよ
心筋梗塞は、発症から6時間以内に治療開始!
看護師が速やかに行動することで、心筋梗塞のゴールデンタイム(6時間:心筋のダメージを少なくできる時間)以内に治療を開始することができます。
入院患者の高齢化の影響もあり、循環器と関係無い疾患で入院した患者が急に心筋梗塞を併発することは多々あります。そのため、常に心筋梗塞が起こるかもしれないというアンテナを張ることが重要です。
「6時間以内に治療開始」を合言葉に、速やかな行動を心掛けましょう。
Obstructive shock(閉塞性ショック)の治療
閉塞性ショックは主に心タンポナーデ、緊張性気胸、肺血栓塞栓症です。
どの病態も、血液量の減少が原因ではないので輸液負荷は行いません。心臓が血液を拍出できないことによるショックであるため、輸液負荷を行っても状態は改善しません。
心タンポナーデの治療
心タンポナーデの特徴的な症状と治療を下記にまとめているので良かったら参照してください。
心タンポナーデはBeckの三徴(頸静脈怒張、低血圧、心音微弱)が有名です。他にも奇脈やKussmaul徴候を呈します。
また心タンポナーデの診断にはエコーが有用です。早期に診断して、治療へ移行することができるように迅速に準備しましょう。
通常でも心嚢液は50ml程たまっていますが、100mlになっただけでも心タンポナーデになります。
緊張性気胸の治療
緊張性気胸の特徴的な症状と治療を下記にまとめたので、良かったら参照してください。
放置すると血圧が低下してショックへ移行するので注意が必要です。緊張性気胸は進行が早く、早期に心停止へ移行するためX線などの確定診断を待たずに脱気(穿刺針やメス)を行う場合があります。全例ではありませんが、頭には入れておきましょう。
すぐにX線撮影ができるなら、X線撮影を行ってから治療を行うことが推奨されているよ。
肺血栓塞栓症
肺血栓塞栓症の特徴的な症状と治療を下記にまとめたので、良かったら参照してください。
肺血栓塞栓症の原因として多い深部静脈血栓症の症状(下肢の腫脹・圧痛・発赤)が先行して現れることもあります。そのため、看護師が早期に深部静脈血栓症の兆候に気付くことができれば、重症化を防げる可能性があります。
まとめ
看護師がどれだけ早期にショックを察知できるのか、どれだけ先を予測して迅速に治療環境を調整できるのかにより患者の転帰は異なります。
平常時から知識を固め、急変時には落ち着いて広い視野を持って行動できるようにしましょう。
急変は怖いことだけど、知識があれば落ち着いて行動することができるよ!
引用・参考文献
坂本 壮(2015).救急外来ただいま診断中!.中外医学社,東京.
林 寛之(2017).Dr林&今の外来でも病棟でもバリバリ役立つ!救急・急変対応(メディカのセミナー濃縮ライブシリーズ).メディカ出版,大阪.
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