Last Updated on 2024年3月28日 by カメさん
こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は5~6分で読めます。
今回は、t検定などの2つの群に関する統計解析について解説するよ!
2標本の差の検定は、看護研究の方法を検討する際に基本となる解析のデザインです。苦手意識がある方も多いかもしれませんが、手順を踏めば難しい検定手法ではありません。是非使ってみてください。
また3つ以上の群を比較する方法を知りたいかたは【分散分析とは?:前編】看護研究の疑問を解決「3つ以上の対応のないデータを分析しよう」【分散分析とは?:後編】看護研究の疑問を解決「3つ以上の対応のあるデータを分析しよう」を参照してください。
2つのグループの差を比較するとはどういうこと?
2つのグループの差を分析する場合には、「2標本:独立した2群」と「1標本:対応のあるデータ」2つのパターンがあります。
2標本:独立した2群とは?
独立した2群(対応のないデータ)を用いた2標本の差の検定とは、2つのグループからそれぞれ収集するデータを比較する分析のことです
例えば、介入群と対照群の2群を比較する分析などです
1標本:対応のあるデータとは?
「対応があるデータ」を用いた2標本の差の検定とは、1つのグループから収集する2つのデータを比較する分析のことです
例えば、1グループへの介入前後の点数の比較などです
分析方法にはどんな種類があるの?
2つのグループの差を比較する分析方法を決定する際は以下のことに留意します。
分析方法を決定する際のポイントとは?
- 「独立した2群」or「対応のあるデータ」
- 「パラメトリック」or「ノンパラメトリック」
- 「等分散する」or「等分散しない」
パラメトリックとは正規分布のことです。正規分布に従うかどうかも分析方法を選ぶ上で重要な要素になるので確認するようにしてください。正規分布について詳しく知りたい方は【正規分布とは?:概要編】看護研究の疑問を解決「データの分布を理解しよう」を参照してください。
パラメトリックの場合は等分散も確認する
2標本でパラメトリックの場合は、さらに等分散かどうかも確認する必要があるので注意してください。
等分散を確かめるためにはLevene検定やF検定を使用します
正規分布を確認する検定と同様に、帰無仮説(本来は検定で否定したい仮説)が「等分散である」になるため、p≧0.05の場合に「等分散である」となります(差の検定であれば、p<0.05で帰無仮説が否定されて、差がある可能性が高いことが分かり嬉しい)
分析方法はどうやって選ぶの?
上記の分類を踏まえた上で、分析方法を決める際は以下のフローチャートを参照してください。
正規分布の確認と等分散の確認は普段の有意水準の考え方と違って、正規分布や等分散がp≧0.05だから注意してね。
検定結果の判定方法
2標本の差の検定の結果はp値(有意水準)が基準より高いか低いかで判定します。基準値よりp値が低い場合(p<0.05など)は「有意差あり」という結果になります。
「有意差あり」とは、「確率的に今回の結果が偶然の差ではなく意味のある差の可能性が高い」ということです。
論文ではどのように使われている?
わかりにくいと思うので実際に論文を見て説明していきます。
論文1:異なる2群を比較するパターン「独立した2群のデータの比較」
この論文は介入群と対照群の独立した2群を設定した、がん患者への看護介入に関する研究です。
アウトカムは意思決定に関する尺度(Decisional Conflict Scale; DCS)と、不安に関する尺度(state-trait anxiety inventory-from JYZ: STAI-JYZ)を使用して評価してます。
DCSとSTAI の得点差を、有意水準0.05で2標本のt検定で比較しています。
独立した2群の比較で紹介した論文ですが、がん患者の意思決定支援への看護介入の効果を検討した論文でした。意思決定は看護の様々な場面で必要とされていて、今後も重要視されていくと思います。このように、なかなか目で見えない看護の効果を検討する研究は、看護の発展のためにも、また研究を通して看護の素晴らしさを伝えていくためにも意義深いと感じました。
論文2:同じ群を比較するパターン「対応のあるデータの比較」
看護学生と薬学生が協同して学ぶ実習の前後で看護学生に対してアンケートを取った専門職連携教育(Inter professional Education;IPE)に関する論文です。つまり実習の前後でどのような変化があるかを見た論文です。
この論文で使われているRIPLSという尺度は、The Readiness for Inter professional Learning ScaleというIPEの準備状況を評価する尺度の日本語版です。
このRIPLS の合計得点は、学年ごとに実習前後の 2 時点を Wilcoxon の符号付き順位検定で比較しています。
正規分布じゃなかったから対応のあるt検定じゃなくてWilcoxonの符号付順位検定を使用したんだね。
まとめ
2標本の差の検定は、看護研究の中でもよく使われる統計手法です。手順通り解析を行えば、難しい統計解析手法ではないので、是非使ってみてください。この記事が統計解析に悩む方の力になれれば幸いです。
今回は2群の差について確認したけど、2群の関係性を見るための相関分析という分析方法もあるよ。
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