Last Updated on 2023年7月19日 by カメさん
こんにちは!キャリア相談もしている看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は10分程度で読めます。
今回は、看護師を辞めたいと思った時に参考になる理論・考え方をまとめました。
看護師をやっていると、「もう辞めちゃいたいな」「違う仕事探そうかな」と思うことが良くあります。そんな時は、様々な理論・考え方を活用して、現在の状況を客観的かつ多様な視点で捉えることが重要です。
今回は、自分の状況を客観的に見つめるために役立つ理論・考え方を5つ紹介します。この記事が「看護師を辞めたい…」と感じて、将来のキャリアに悩んでいる人の助けになれたら幸いです。
辞めたいと感じて悩んでいる時は視野が狭くなっているよ。そのため勢いで間違った行動を取ってしまうことがあるから注意してね。辞めたいと思ったら、一度落ち着いて、今回紹介する考え方を使って現状を整理してみよう。
看護師の離職率の状況や離職の原因について解説した後で、「辞めたい…」と感じた時に役立つ理論・考え方を紹介します。
看護師の離職率は増加傾向
まずは看護師の離職率から考えてみたいと思います。2021年度の看護師離職率は下記のようになっています。
2021年度の看護師離職率は正規雇用看護職員が11.6%、新卒採用者のうち10.3%、既卒採用者16.8%でした。看護師の離職率は、2020年度と比較して増加傾向にあります。
一般的な大卒の就職後3年以内の離職率が31.5%(2020年度)なことを考えると、看護師の離職率は低いのかもしれません。
看護師の離職の原因は何?
看護師の離職の原因を、先行研究から探ってみましょう。
まずは新人の離職原因です。下記の論文から新人の離職原因をリストアップしました。この論文では「なぜ仕事を継続できているか」についても調査しているため、合わせて紹介します。
<新卒看護師の離職原因>
- 新卒看護師の離職理由
- 看護の実践能力の不足
- 精神的落ち込みであった
<新卒看護師の継続理由>
- 看護師としてのやりがい
- 看護師としての自覚
- 同期(仲間)との励まし合い
- 先輩看護師への尊敬の気持ち
この結果から、新人看護師が仕事を続けるためには「知識・技術への支援と周囲のメンタルサポート」が必要なことが分かります。
当たり前の支援ができていないから。みんな辞めてしまうんだね。
次に中堅看護師の離職原因です。
下記の論文から、中堅看護師の離職理由を探ってみましょう。下記の論文をもとに中堅看護師の離職理由をリストアップしました。また、上記の論文と同様に「中堅看護師が仕事を続けることができている理由」についても調査しているので合わせて紹介します。
齊藤 茂子(2017).中堅看護師はなぜ離職するのか―最近5年間の統合的レビュー―.東洋大学大学院紀要,54,385-405.
<中堅看護師の離職原因>
- 多忙な業務と重い責任に関わる問題
- ライフイベントに関わる問題
- 自信喪失・疲弊感に関わる問題
- 人間関係に関わる問題
- キャリアアップ
<中堅看護師の継続理由>
- 看護への思い・やりがいの再発見
- 自己の対象化による気づき
- ワーク・ライフ・バランスへの配慮
- 周囲からの承認・支え
- スキルアップへの支援
- 仕事を失うことへの懸念
「自己の対象化」とは、自己を見つめなおすことです。自分の考え方に改めて気付いたり、新しい発見をすることが就業継続に繋がります。
この論文は文献レビュー論文で、中堅看護師の定義は3年〜20年と幅が広いよ。多くの人に当てはまるね。
「看護師を辞めたい…」と思った時に役にたつ理論・考え方5選
それでは本題の、「看護師を辞めたい…」と思った時に活用して欲しい理論・考え方を5つ紹介します。
「看護師を辞めたい…」と思った時に役にたつ理論・考え方5選
- ➀クォーターライフクライシス
- ②計画的偶発性理論
- ③キャリアレインボー
- ④キャリアアンカー
- ⑤レジリエンス
どの考え方も、自分と向き合うことを重視しているよ。これらの考えを活用することで自分が納得したキャリアを歩むことができるよ
それでは、それぞれ詳しく解説します。
➀クォーターライフクライシス
まずはクォーターライフクライシスです。この考え方には、私自身もだいぶ救われました。自分を客観視するきっかけになる考え方だと思います。
クォーターライフ・クライシスとは、幸福の低迷期のことで、20代後半から30代が陥りやすいとされます。
クォーターライフ・クライシスの概要を下記にまとめます。
- 頭文字を取ってQLCとも呼ばれる
- 成人初期(18〜30歳)に発生する発達上の危機
- 一般的に人生の4分の1が過ぎた20代後半から30代にかけて訪れるためクォーターライフと呼ばれる
- 人生について思い悩み、幸福感が低迷する時期
成人初期は、社会人に移行する期間です。一方で本人は社会からは認められていないのではないかという焦燥感やジレンマを感じます。
SNSで同世代の成功者達を目にすることで「早く何ものかにならなければいけないと感じること」も原因の1つのようです。
クォーターライフクライシスには下記の5つの段階があり、自分がどの段階にあるかを把握することが重要です。
5つの段階に関する詳細は30代前後の看護師必見!転職したくなるのはクォーターライフクライシスが原因かも?を参照してください。
クォーターライフクライシスを踏まえてキャリアを考えると…
まずは、成人初期(18-30才)頃に感じるジレンマや焦燥感は特別なことではなく、誰しもが経験する発達過程だと理解しましょう。
この発達段階(クォーターライフクライシス)を乗り越えるポイントは「他人と比べず、自分と向き合う」ことです。自分と向き合うことでキャリアや人生についての新しい発見や再認識に繋がります。
上記の中堅看護師の就業継続理由にも自己の対象化(自己と向き合う)があったね。
クォーターライフクライシスについて、さらに詳しく学びたい方は30代前後の看護師必見!転職したくなるのはクォーターライフクライシスが原因かも?を参照してください。
②計画的偶発性理論
次に紹介するのが計画的偶発性理論です。
計画的偶発性理論は、これからのキャリアに悩んだ時や、今までのキャリアを振り返る時にも有用な考え方です。
この考え方を活用することで「自分のキャリアは今のままで良いんだ」と肯定的な受け止めができるようになります。
計画的偶発性理論の概要を下記にまとめます。
- Krumboltz博士(1999)により提唱
- Planned Happenstance理論の日本語訳
- 個人のキャリアの8割が、偶然によって起きる予測できないことによって決定されることを前提とした理論
この理論は偶然を積極的に活用して行こうという理論です。
人生は偶然に支配されています。自分の望まない偶然もあるでしょう。しかし偶然を活用することで、自分が思いもしなかった道を歩むことができるかもしれません。
計画的偶発性理論を踏まえてキャリアを考えると…
まずは人生が偶然に支配されていることを認めましょう。偶然の出来事は、日々の生活の中で無数に起きています。しかし、自分が意識しないと偶然の出来事は通りすぎてしまいます。
そのため偶然の出来事は自分から掴み、活用していく必要があります。偶然の出来事を自分のキャリアに上手く活用するためには、5つのスキルが重要と言われています。
偶然を掴む練習として、自分の人生を振り返ることが有用だと言われています。
自分の人生のターニングポイントを思い出してみましょう。その時は、5つのスキルのうちどれを活用しましたか?その時に活用したスキルは、これからの人生でも、あなたを助けてくれるスキルです。
計画的偶発性理論について詳しく知りたい方は【計画的偶発性理論】看護師の転職「今の職場に残るべき?」を参照してください。
③キャリアレインボー
次に紹介するのがキャリアレインボーです。
キャリアを考える時に、多くの人は「給料」や「やりがい」ばかりを考えてしまいます。しかしキャリアを「発達過程」と捉える考え方もあります。
それが「キャリアレインボー」です。この考え方を活用することで、キャリアについての視野を広げることができます。
キャリアレインボーの概要を下記にまとめました。
- Super, D. E. (1980)が提唱
- キャリア発達を、生涯における役割の分化と統合の過程として示した
- キャリアの発達を人間の発達と関連づけ、人生を5つのライフステージ(成長段階、探索段階、確立段階、維持段階、下降段階)に分けることができる
- キャリアは、様々な役割を担いながら生涯を掛けて変化していく
- キャリアはライフロール(9つの役割:下記に詳細を記載)の組み合わせである
- 職業上の志向や能力だけではキャリア発達しない
- ライフロールとキャリアは相互に関連する
キャリアを発達過程として捉えることを「キャリア発達」と言います。キャリア発達とは「社会の中で自分の役割を果たしながら自分らしい生き方を実現していく過程のこと」です。人生の役割を明確に示したものがキャリアレインボーです。
キャリアレインボーを踏まえてキャリアを考えると…
人生の役割を理解した上で、キャリアを設計(人生設計)することが重要です。そうすることで、人生に対する視野を広げることができ、悩みが軽減できるかもしれません。
Super, D. E. は、人生には9つの役割 (子ども, 学生, 余暇, 市民, 労働者, 年金受給者, 配偶者, 家庭人, 親) を提唱しています。
これらの役割は重なりあって、個人のキャリアを形成しています。今の自分の役割はどんなものがあるのか、何歳でどのような役割ができるのか、などを図にしてみましょう。
下記の図は「22歳で大学を卒業し,すぐに就職。26歳で結婚して,27歳で1児の父親となる。47歳の時に1年間社外研修。57歳で両親を失い,67歳で退職。78歳の時妻を失い81歳で生涯を終えた。」人について、Super, D. E. が図式化したキャリアレインボーです。
上の例は一般的な人生に感じるけど、図にすると、沢山の役割を抱えていることが分かるね。
それでは、上記の例を参考にあなた自身の人生についてもキャリアレインボーを考えてみましょう。過去や現在のあなたの状況を客観的に振り返るとともに、将来の自分について考えながら記載してみましょう。
正解・不正解はありません。自分の人生を客観視する機会になれば幸いです。
人生の役割を視覚化することで、キャリアを「仕事」 という狭い意味でのキャリアではなく、 「どのように生きるか」 といった広い意味でのキャリアを考えることができるようになります。
あなたの人生の役割は「看護師」だけではありません。是非広い視野からキャリアを考えてみましょう。
キャリアレインボーについて詳しく知りたい方は【キャリアレインボー】看護師の転職「自分のライフスタイルに合わせた転職とは?」を参照してください。
④キャリアアンカー
次はキャリアアンカーを紹介します。
これは、エドガー・シャイン(Schein,Edgar H)が提唱した考え方です。
上記のキャリアレインボーが、個人のキャリアを広い視野で捉えた一方で、キャリアアンカーは、職業に特化した考え方です。
キャリアアンカーは仕事であなたが大事にしていることを、改めて考えることができる考え方です。
仕事で大事にしていることについて、自分で考える機会は少ないと思います。しかし理論をもとに考えることで、思いもしない発見があるかもしれません。是非、あなたが仕事で大切にしていることを改めて考えてみてください。
- エドガー・シャイン(Schein,Edgar H)が提唱
- 「仕事体験を通じて自覚された才能と能力、動機と欲求、態度と価値が相互に作用して開発されたもの」と定義
- キャリア発達の基盤となる
- 個人のキャリアを導き、方向づける
- 長期的な職業人生の中での拠り所となる
- 職業に就いてから5~10年のキャリア初期段階の時期に開発される
キャリアアンカーとは、今後のキャリアを考える上での拠り所となる考え方です。後述しますが、キャリアアンカーは8つあります。自分のキャリアアンカーを知ることで、本当に自分が納得した人生を歩むことができるようになります。
ちなみにキャリアアンカーとは、船が安全な港に停泊できるように錨(アンカー)を下ろすことになぞらえているよ。
キャリアアンカーを踏まえてキャリアを考えると…
まずは自分が仕事をする上で大切にしていることを把握しましょう。あなたの大切にしていることは以下の8つのキャリアアンカー(キャリアを考える上での拠り所)のうちどれでしょうか。もちろん1つでは無いと思います。
看護師としての自分はどんなことを大事にしていましたか?何を大事にするかに正解はありません。自分を知ることが大切です。
自己理解をすることで、今の現状を変えるべきなのか、それとも考え方を変えるべきなのかなど、悩みの本質が見えてきます。自分が何を大事にしているかを明確にした上で、悩みと向き合ってみましょう。
キャリアレインボーについて詳しく知りたい方は【キャリアアンカーとは?】看護師の転職「自分の傾向を理解しないとキャリアに失敗する」を参照してください。
上記の記事では、看護師が選ぶことの多いキャリアアンカーなども解説しているよ。良かったら参照してね。
⑤レジリエンス
最後に紹介する考え方がレジリエンスです。
将来に不安があり、看護師を辞めようか悩んでいる人も多いかと思います。そんな時に活用できるのがレジリエンスです。レジリエンスは不安やストレスへの適応能力です。これを高めることは将来の不安に対応する際に有用です。
レジリエンスについての概要を下記にまとめました。
- 英語でresilience
- 困難で脅威的な状況にもかかわらず、うまく適応する能力・過程・結果
- 不安等のストレスに対応する個人の適応能力を説明する概念
レジリエンスとは、ストレスなどの圧力を跳ね返すまたは順応する能力です。
またレジリエンスは回復性にも重点をおいており、ネガティブな状況に陥った時に回復できる能力であるともされています。
レジリエンスを踏まえてキャリアを考えると…
レジリエンスは、今からでも高めることができます。レジリエンスの向上は、悩みを受け入れる、解決することに繋がるかもしれません。
レジリエンスを高める方法として、アメリカ心理学会(APA:American Psychological Association)が以下の10個の方法を提唱しています
上記の10個の方法の中から、自分に合ったものをやってみましょう。悩みを解決するヒントが得られるかもしれません。
レジリエンスに関すること以外にも、看護師が抱える将来の不安について【このままで良いの?】看護師が感じる将来の不安を分析「不安への対処法も解説するよ」でまとめているのでよかったら参照してください。
まとめ
辞めたいと思ったら、まずは自分の本当の気持ちを確認してみましょう。嫌いな組織や、苦手な上司などのことは一度忘れて、自分が本当に大切にしていることは何かを考えることが大切です。
仕事だけでなく、プライベートも含めて考えましょう。その上で、辞めたいと思う気持ちが続いているならば、転職や退職も選択肢だと思います。
大切なことは、冷静になって自分の気持ちを聴くことです。それが納得したキャリア形成に繋がります。同じ転職や退職であっても、自分が納得しているならば良い転職・退職です。
今回紹介した理論・考え方が悩み解決の助けとなれば幸いです。
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