Last Updated on 2023年3月21日 by カメさん
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こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は5分程度で読めます。
今回はインストラクショナルデザインのモデルの1つである、IDの第一原理について解説するよ。
インストラクショナルデザインとは?
インストラクショナル・デザイン(lnstructiOnal Design: ID )とは、教育活動の「効果・効率・魅力」を高めるための手法を集大成したモデルや研究分野、またはそれらを応用して学習支援環境を実現するプロセスのことを指します。
IDには様々な理論があり、代表的な理論を下記の記事にまとめているので興味のある方は参照してください。
「IDの第一原理」と、今まで紹介したIDとの比較
今までの記事で紹介したIDのモデルと、今回紹介するIDの第一原理について、まとめました。
- どのような学習支援が望ましいかを総合的にまとめたものが「IDの第一原理」です。
- 学習支援の設計において、 どのようなプロセスで学習設計をするのが望ましいかを具体的に整理したものが「ADDIE モデル」です。
- 学習支援で盛り込むべき事象をさらに細かく教授法レベルのサイズで提案したものが「ガニェの9 教授事象」です。
- 学習への動機づけに焦点を当てて整理したものが「ARCS モデル」です。
いずれのモデルも学習支援設計の際に活用することで、より良い学習支援につながるものと考えます。
概念の大きさだと「IDの第一原理」>「ADDIEモデル」>「ガニエの9教授事象」>「ARCSモデル」かな。
IDの第一原理とは?
IDの第一原理とは、M. David Merrill(2002)が提唱した「インストラクションの第一原理」のことです。「メリルの第一原理」とも呼ばれます。英語ではFirst Principles of Instructionです。
ホテルのランキングのように、「5 つ星インストラクションの要件」「メリルの5つ星」とも呼ばれているよ。
IDの第一原理は、構成主義に影響を受けた多くのID理論の統合を目指しており、近年提唱されている複数のID理論に共通する特徴をまとめています。メリルは効果的な学習環境を実現するために必要な 5つの要件(下記の図)を提示しています。
IDの第一原理 5つの要件 | 説明 |
---|---|
問題(Problem) | 現実に起こりそうな問題に挑戦する |
活性化(Activation) | すでに知っている知識を動員する |
例示(Demonstration) | 例示がある(Tell me でなく Show me) |
応用(Application) | 応用するチャンスがある(Let me) |
統合(Integration) | 現場で活用し、振り返るチャンスがある |
構成主義とは?
構成主義とは「人間の知識は、すべて構成されるもの」という考え方に基づいています。
つまり、自分で積極的に自らの知識を構成していくということです。この考え方は従来の「教師中心」の授業から「学習者中心」へ、「教えること」から「学ぶこと」への転換をもたらしました。
構成主義の代表的な理論家はピアジェです。ピアジェは「発達」と「学習」を関連付けて、発達の過程で能動的に知識を構築すると考えました。
「IDの第一原理」の5つの要件をそれぞれ解説
下記が先ほども提示した「IDの第一原理」の5つの要件です。それぞれ、例を交えながら解説していきます。
IDの第一原理 5つの要件 | 説明 |
---|---|
➀問題(Problem) | 現実に起こりそうな問題に挑戦する |
②活性化(Activation) | すでに知っている知識を動員する |
③例示(Demonstration) | 例示がある(Tell me でなく Show me) |
④応用(Application) | 応用するチャンスがある(Let me) |
⑤統合(Integration) | 現場で活用し、振り返るチャンスがある |
➀問題(Problem) : 現実に起こりそうな問題に挑戦する
1つ目の要件は、現実世界の問題 (Problem)への導入です。まずは、現実に起こりそうな問題をまず学習者に提示します。
この問題は解けるか!解けるようになりたいとは思わないか!と挑発しましょう。笑
ID では学習者に対して、この研修でできるようになって欲しいことを学習目標として提示することが重要と言われています。つまり研修の出口の設定です。
ID第一原理の1つ目の要件は、出口の設定をさらに拡張したものと言えます。
現実世界に問題を提示することにより学習者は「この研修で学ぶと、職場のこんなところで役に立つのか」というイメージができます。結果として「明日から役に立つ」「是非挑戦したい」と思わせることができ、研修への動機付けへと繋がります。
いつ役に立つか分からない研修より、明日から役に立つ研修の方がやる気になるよね。
仕方がなくやらされる研修を脱却して、能動的に学ぶ研修へと転換しよう!
現実の問題を提示する有用性
- 「現実にこの場面で使える知識や技能を学んでいるんだ」という見通しを与えることで動機付けに繋がります。
- 現実にありそうな問題に取り組むことで、受講者は一定の成就感を味わうことができます。その中で徐々に難易度を高めていきましょう。
フィジカルアセスメントに関する研修を考えます。
例えば、実際にあった急変の事例をもとに15分前のバイタルサインを提示して考えてもらいます。その中で、急変を未然に防ぐ知識を学んでもらうとともに、現実問題に目を向けてもらうことができます。
研修に関連する事例を事前課題として書いてもらうなど、事前に自分で職場で課題を考えてきてもらうなども有効だよ。
②活性化(Activation) : すでに知っている知識を動員する
2つ目の要件は、学習者の過去の経験を思い出してもらう「活性化(Activation)」です。成人学習者は、これまで様々なことを学んでいます。「活性化」では、その知識を活用してもらいます。
1つ目の要件で提示した 「問題」を解決するために、すでに知っている知識を総動員してもらいます。
ここでは正解を提示せず、自分なりの解決策を考えてもらいます。
重要なことは、「知識を総動員して解決策を検討しても不十分だ」という、知識の壁を感じてもらうことです。知識の壁の実感は新しい学びへのきっかけになります。
大人はすでに様々な知識を持っているという観点も大事だね。自分は何を知っていて、新しく学ぶべきことは何かを能動的に考えてもらうことが重要だよ。
すでに知っている知識を活用する有用性
ID で重要なことは学習者中心の教育設計です。従来の教育では、すでに決まっている研修内容を伝える形式であり、学習者は置き去りになります。
「活性化」により、すでに知っている知識を活用することで、今までの学習を振り返るとともに、応用場面を考えることができます。さらには、新しく学ばなければいけない知識も理解することができます。つまり、「活性化」とは受け身ではない能動的な学習の準備だと言えます。
引き続き、フィジカルアセスメントに関する研修を例にします。
1つ目の要件で提示した現実問題について、自ら考える時間を作ります。
例えば、気道や呼吸、循環等、生理学的な枠組みを記載した用紙を渡して、それぞれの枠組みに必要なフィジカルイグザミネーションを考えてもらうなどが有効です。この時、グループワークを活用することも有効です。
「活性化」は、今まで学んだ知識を活かす段階だから、研修参加者の事前知識の確認も重要だね。上記の例だとフィジカルイグザミネーションについての事前知識をある程度持っている集団に実施するのが望ましいよね。
③例示(Demonstration) : 例示がある(Tell me でなく Show me)」
3つ目の要件は、「例示(Demonstration)」です。ここで重要なことは、「Tell me でなくShow me」 です。つまり情報を与えるだけでなく、例を示せと言うことです。つまり基本的な情報だけではなく、事例を中心とした研修展開が重要となります。
また研修において、どのような能力(知識 or 技術)を身につけて欲しいかによっても以下の2パターンのように例示方法が異なります。
③ー1:新しい知識を教える場合
新しい知識を教えるときには、その知識と関係するものと、関係しないものを例示しながら解説します。
フィジカルアセスメントにおけるABCDアプローチ(A:気道、B:呼吸、C:循環、D:意識の順で観察・評価を行う方法)の概念を身につけて欲しい場合、ABCDに含まれる観察項目と、含まれない観察項目をそれぞれ解説する。
③ー2:技術(手順)を教える場合
技術(手順)を教えるときには、まず最初に全体像を見せ、その後で各ステップごとに練習を行い最後に統合することが効果的です。
フィジカルアセスメントにおけるABCDアプローチの手順を身につけて欲しい場合、ABCDアプローチを行い患者の状態を評価する例を示した後で、ABCDそれぞれの観察項目について例示する。
Tell me とは「基本的な教科書的情報」で、Show me 「現場で実際にどうやって使うのか」だよ。身につけて欲しい知識を現場で実際に使う際の例を示すことが重要になるよ。
④応用(Application) : 応用するチャンスがある(Let me)
4つ目の要件は「応用(Application)」です。例示したことについて実際にやってもらう、練習の段階です。
「Show me」の次は、やってみる段階です。つまり「Let me」です。
ここで重要なことは、学習者側に「私にやらせてください(Let me)」と思わせることです。練習の段階では動機付けが重要となります。3つ目の要件である例示の段階までで、学習者の興味を引き出しましょう。
また、練習の段階では必ずフィードバックを行いましょう。身につけて欲しいことは、学習者にとって新しい事柄です。そのため、ほとんどの場合で失敗します。その時に適切なフィードバックがあることで、失敗の原因を考え、理解することができ、より深い学習につながります。
練習の段階では、自習のように放置してはダメだよ。練習を見守り、適切なアドバイスやフィードバックを行うことが重要だよ。
引き続きフィジカルアセスメントの研修について考えます。
ここでは、実際にやってみたいと思わせることが重要です。例えば、研修参加者の所属する部署で実際に起こりそうな事例をもとに人形を用いてシミュレーションを行うなどです。出来るだけ本番に近づけることがポイントです。
またシミュレーション後にデブリーフィングを行い、フィードバックを行うことで学習効果が上がります。
⑤統合(Integration) : 現場で活用し、振り返るチャンスがある
最後の5つ目の要件は「統合(Integration)」です。統合とは、研修で学んだ知識を現場で活用するチャンスを与えることです。
つまり学習と業務の統合です。教育心理学では、これを学習の転移と呼び、IDの第一原理においても重要視しています。
学習の転移とは?
学習の転移とは教育心理学における用語であり、以前の学習がのちの学習に影響を及ぼすことです。つまり学習者が習得した知識や技能を異なる場面で活かすことです。
メリルは、「学習したことを生かす機会がないうちは、 本当の学習にはならない」と言っています。学習したことを実際に業務で活かすことができたという経験により、学習した内容が着実に身につきます。
そのため、経験学習も重要となります。学習した事を実践し、振り返り、 内省(リフレクション)することで、自らの学びを客観視して、次の学びへ繋げることができます。つまりIDに経験学習を織り交ぜる事で、自律した学習者の育成に繋がります。
最後も、フィジカルアセスメント研修を例に考えます。
統合の段階として、研修終了後の課題を提示します。課題の内容は、業務の中で実際にフィジカルアセスメントを実践してもらい報告してもらう形式とします。この時に、例えばコルブの経験学習モデルに沿った学習資料などを活用すると効果的です。
上記の経験学習のリンクに学習資料の例もあるので参考にしてね。
「IDの第一原理」を活用した論文を紹介
この研究は、小学生が認知症高齢者への対応方法を実践的に学ぶための学習方法として、ロボットを活用した学習方法を開発し、効果を検証した研究です。
お馴染みのコミュニケーションロボットのpepperを活用しているよ。
教材開発の過程で、下記のようにIDの第一原理を活用しています。
➀「問題」:Pepperが認知症高齢者の症状を示すことで、学習者である小学生は現実的な問題に直面します。
②「活性化」:その際に、自分の既存知識を用いて対応してもらいます。
③「例示」:教授者が、pepperに正しい対応を行うと穏やかになる様子を例示します。
④「応用」:最初の問題と異なる症状で、再度対応を行なってもらう。
⑤「統合」:応用の段階で、なぜ自分がそのような対応をして、なぜpepperがそのような反応をしたのか振り返る。
統合では実際に認知症高齢者と関わる体験などがあると、学習の転移が進むから効果的だよね。
下記の図が、教材開発におけるIDの第一原理の活用を図示したものです。
詳細は分かりませんが、教材の学習評価の指標を作成する際にもIDの第一原理を活用しています。教材開発と評価が結びついているため、一貫した評価が期待できると考えます。
教材開発と評価にはARCSモデルも活用しているよ。
まとめ
メリルが提唱するID第一原理は、インストラクショナルデザイン(Instructional Design)の1つの理論です。この理論では効果的な学習環境を実現するために必要な要素を提示しています。
どのような研修でも、どのような教材開発でも、設計する際の指針として必ず役に立ってくれる理論です。特に、動機付けの難しい看護師のような成人学習者への学習の場の設計に効果的です。
是非活用してみてね!
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