救命センターで看護師を10年以上。教育担当も経験。大学院では教育心理学と教育工学を活用しながら看護師の生涯学習について研究。目標は看護研究を身近にすること・看護師が看護を楽しみながら働き続けるためのサポートをすること。現場の看護師さんが研究や実践ですぐに使える情報を届けたいと思っています。資格は看護師/保健師/統計士。看護研究や大学院進学等、何でもご相談ください!ご連絡は問い合わせフォームやTwitterのDMよりお願いします。

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看護師必見!ファシリテーターの役割・ファシリテーション技術:完全ガイド

教育方法

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こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。

この記事は15分程度で読めます。

カメさん
カメさん

今回はファシリテーターの役割やファシリテーション技術について徹底的に解説します。

看護師の教育ではグループワークを行うことが多くあります。そのため、ファシリテーターをお願いされることも多いと思います。またファシリテーションの技術は、臨床におけるカンファレンスの場においても力を発揮します。

今回はファシリテーションの概要から、効果的なファシリテーションの技術まで、実践可能な知識をお伝えします。ファシリテーションの技術はグループワーク・カンファレンスへの活用だけでなく、看護実践にも活用出来るので、ぜひ身につけましょう。

この記事が下記のような

  • 「急にファシリテーターを頼まれて困っている」
  • 「グループワークの質を上げたい」
  • 「病棟のカンファレンスの質を上げたい」
  • 「病棟チーム会で成果を出したい」

などの悩みを持つ方の力になれれば幸いです。

看護師の教育について詳しく知りたい方は【看護師への教育を学びたい人へ】押さえるべき教育理論を解説「看護教育は“経験学習”דインストラクショナルデザイン”」を参照してください。

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  1. ファシリテーションとは?
  2. ファシリテーターの役割
    1. ➀ 外面的なプロセスへの支援とは?
    2. ② 内面的なプロセスへの支援とは?
    3. 内面的プロセス・外面的プロセスの両側面を支援する
  3. ファシリテーターに求められる4つの能力
    1. ファシリテータの能力➀:場をデザインする能力
    2. ファシリテータの能力②:対人関係に関する能力
    3. ファシリテータの能力③:議論を構造化する能力
    4. ファシリテータの能力④:合意形成を促進する能力
  4. 5つのファシリテーション実践技術
    1. ファシリテーション技術①:議論を整理する技術
      1. OARRとは?
      2. 見える化とは?
    2. ファシリテーション技術②:議論を促進する技術
      1. ➀質問の種類
        1. オープンクエスチョンとは?
        2. クローズドクエスチョンとは?
        3. 「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」はどのように使いわけるの?
      2. ②質問のタイミング
      3. ③質問の内容
    3. ファシリテーション技術③:物理的な環境を整える技術
      1. レイアウトを整える
        1. 対面の場合
        2. オンラインの場合
      2. 参加者を検討する
    4. ファシリテーション技術④:心理的な環境を整える技術
    5. ファシリテーション技術⑤:コミュニケーションスキル
      1. 受け取る力
        1. パッシブリスニング
          1. 沈黙(非言語的)
          2. あいづち(非言語的)
          3. 思いを引き出す(言語的)
        2. アクティブリスニング
          1. オープンクエスチョン(言語的)
          2. パラフレーズ/おうむ返し
          3. 聴く姿勢(非言語的)
          4. 表情/目線(非言語的)
          5. 口調(非言語的)
      2. 伝える力
        1. 言語化する力
          1. 言語化の準備:観察する(観察力)
          2. 言語化の準備:思考を整理する(思考力)
          3. 言語化:思考を言葉に変換する(語彙力)
          4. 言語化:相手が理解しやすく変換する(要約力)
        2. アサーティブコミュニケーション
          1. アサーティブコミュニケーションのポイント
          2. アサーティブコミュニケーションの技術
  5. ファシリテーションの理論:Diamond of participation
    1.  拡散 (Divergence)
    2. 探求 (Groan)
    3. 収束 (Convergence)
    4. Diamond of participationの活用方法
    5. ブレインストーミングとの違いはなに?
      1. ブレインストーミング(Brainstorming)とは?
      2. ブレインストーミングとDiamond of participationの違いは?
  6. ファシリテーションに関する論文を紹介
  7. おまけ:ファシリテーションの活用範囲
    1. 1:問題解決型のファシリテーション
    2. 2:合意形成型のファシリテーション
    3. 3:教育研修型のファシリテーション
    4. 4:体験学習型のファシリテーション
    5. 5:自己表現型のファシリテーション
    6. 6:自己啓発型のファシリテーション
  8. まとめ

ファシリテーションとは?

まずはファシリテーションとは何かについて解説します。

ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。

集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。

日本ファシリテーション協会ホームページ

英語のFacilitate(ファシリテート)の意味を見ると、「物事を促進する・円滑にする」などの意味があります。そしてFacilitator(ファシリテーター)は、Facilitateの役割を担う人です。この役割は、グループワークなどにおける進行役にあたります。

ファシリテーターの役割

ファシリテーターには大きく分けて2つの役割があります。1つ目はグループワークの進行を行う「外面的プロセスへの支援」であり、2つ目は参加者それぞれの考えを深める「内面的プロセスへの支援」です。

チームダイナミクスを最大限に活かすためには、これら2つの側面にアプローチする必要があります。

➀ 外面的なプロセスへの支援とは?

外面的なプロセスとは、グループワークにおける段取りや進行など、プログラムの運営を円滑に行うための要素です。

プログラムを円滑に進めてグループワークを成功に導くのもファシリテーターの役割です。

② 内面的なプロセスへの支援とは?

内面的なプロセスとは、グループワーク参加者1人1人の考えや感情の動きのことです。

思考的側面や心理的側面に働きかけることは、グループワークの質を高めるために重要です。

内面的プロセス・外面的プロセスの両側面を支援する

グループワークでは、様々な考え方を持つ参加者同士が、自分の考え方や感情をぶつけ合うこで、新たな考え方が生まれて、大きな成果に繋がります。

これは、ファシリテーターが外面的プロセスの支援により、議論の道筋を整え、内面的プロセスの支援により議論を深めるきっかけを作ることで促進します。

ファシリテーターの存在は、人と人の間を繋ぎ、大きな相互作用を生むことに繋がります。

カメさん
カメさん

ファシリテーターには進行役に徹する場合と、参加者として意見を発言する場合があるよ。状況によって使いわけよう。

ファシリテーターに求められる4つの能力

ファシリテーターには下記の4つの能力が必要と言われています。ファシリテーションを行う際に参考にしてみてください。

ファシリテータの能力➀:場をデザインする能力

ファシリテータに求められる能力の1つ目は「場をデザインする能力」です。「場をデザインする能力」とは下記のような能力です。

「場をデザインする能力」を簡単に言うと、「場をつくり」、「場をつなげる」能力のことです。

ファシリテーションは、グループワーク当日に加えてグループワークの計画段階から必要となります。開催するグループワークのタイムスケジュールなどを事前に計画するのもファシリテーターの役割の1つです。

カメさん
カメさん

ファシリテーターとして当日の参加をお願いされることも多いけど、大事なことだから覚えておこう。

単に参加者に集まってもらうだけだと、有意義なディスカッションにはなりません。グループワークの目的を明確にすることで、議論の方向性が明確となります

また議論の方法やタイムスケジュールを明確にすることで、効果的かつ効率的にグループワークを進めることができます

さらに、話しやすい環境の構築も重要です。活発なディスカッションのためには、安心・安全な場を提供する必要があります。そのためには、関係性に配慮した参加者の設定や、グラウンドルールの設定が重要となります。

カメさん
カメさん

環境の設定によって、ディスカッションの質は変わってくるよ。例えば、みんなが緊張して発言を恐れていたり、タイムスケジュールが不明慮なグループワークだと、ディスカッションの質が低下するよ。

グラウンドルールとは?

グランドルールとは、ディスカッションの際に「あらかじめ定めておくルール」のことです。参加する全員が、指定したグラウンドルールを守ってディスカッションに臨みます。ルールを事前に決めておくことで、ディスカッションがスムーズに進行したり、ディスカッションの場が活性化するなどの効果があります。

例えばグランドルールには、以下のようなものがあります。

  • 否定ではなく改善策を伝える
  • 参加者全員は対等な関係である
  • 相手の意見は最後まで聴く
  • 知り得た情報は他言しない
  • ディスカッションを楽しむ
カメさん
カメさん

グラウンドルールを設定することは心理的安全性(安心して発言できる環境)を保つことにも繋がるよ。

ファシリテータの能力②:対人関係に関する能力

ファシリテータに求められる能力の2つ目は「対人関係に関する能力」です。「対人関係に関する能力」には以下のようなものがあります。

「対人関係に関する能力」とは、主にコミュニケーションに関する能力のことです。「参加者の発言を受け止めること」、「参加者の発言を引き出すこと」が重要となります。

有意義なディスカッションとするためには「拡散」「探求」が重要となります。「拡散」「探求」とは、たくさんの意見を出し合い、様々な角度から意見を深めることです。たくさんの意見を出し合うことで議論が深まるとともに、出された結論の合理性が高まります。

カメさん
カメさん

ファシリテーションのフレームワーク(拡散→探求→収束)については下記で解説しているよ。

ファシリテーターには、この「拡散」「探求」を促進する役割があります。参加者の発言を受け止めることで、話しやすい環境を構築し、さらなる発言を引き出します

また、誰か一人の発言を受け止め、他の参加者に繋げることで、議論の連鎖を生み出すことが「探求」へと繋がります。議論を関連づけ連鎖させることで、参加者が想像していないような結果へと導くことができます。

効果的な「拡散」「探求」を促進するためには、傾聴や質問などのコミュニケーション能力が鍵となります。

ファシリテータの能力③:議論を構造化する能力

ファシリテータに求められる能力の3つ目は「議論を構造化する能力」です。「議論を構造化する能力」には以下のようなものがあります。

「議論を構造化する能力」とは、「拡散」により引き出された意見を、「繋ぎ合わせて、整理する」能力です。

意見を繋ぎ合わせて整理することを「収束」と呼びます。「拡散」により引き出された意見が、「探求」にて深められ、ディスカッションの後半で「収束」へと向かい、結論が導かれることが理想的です。

ファシリテーターには議論の「収束」を促進する役割が求められます。ファシリテーターは議論の全体を概観し、論理的な思考を活用し、参加者達が、議論を収束(構造化)していけるようにサポートします。収束(構造化)には、「ファシリテーション グラフィック」が有用です。簡単に言えば、議論を「見える化」するテクニックです。下記に記載しているので参照してください。

ファシリテータの能力④:合意形成を促進する能力

ファシリテータに求められる能力の4つ目が「合意形成を促進する能力」です。「合意形成を促進する能力」には以下のようなものがあります。

「合意形成を促進する能力」とは、議論を「まとめて、合意を促す」能力です。

「拡散(意見を出し合う)」「探求(意見を深める)」「収束(意見を整理する)」により議論がまとまり始めたら、最後は結論の決定です。どのような選択を決定するのか、どのように意見をまとめるのかを検討していきます。

最終決定の際には、意見の衝突が生まれることが多くあります。意見の衝突が起きた際に、双方の合意が得られるような結論へと導くのもファシリテーターの役割の1つです。意見の対立には良い面もあり、異なる意見が衝突することにより、更に深い議論へと繋がる可能性もあります。有意義なディスカッションを経て参加者が納得した結論に到達できるかは、ファシリテーターの力量にかかっています。

カメさん
カメさん

看護師の研修とかだと、課題解決を目的としないグループワークも多くあるよね。そのようなグループワークのファシリテーターを行う場合は、無理やり「収束」や結論の決定の段階に移らず、「拡散」や「探求」の段階を、時間をかけてできるような働きかけも重要だよ。

5つのファシリテーション実践技術

それでは、ファシリテーションを行い議論を活性化するための具体的な実践技術を5つ解説します。

ファシリテーションの技術には以下のようなものがあります。

カメさん
カメさん

それぞれの技術を詳しく解説するよ

ファシリテーション技術①:議論を整理する技術

ファシリテーション技術の1つ目は「議論を整理する技術」です。「議論を整理する技術」とは、グループワークの場に出てきた意見を整理して方向づける技術のことです。

議論を整理する技術には下記の技術などがあります。

OARRとは?

OARRとは、目標やルールを共有することでグループの足並みを揃える技術です。

カメさん
カメさん

参加者が共通理解をすることで、みんなが同じ方向を向くことができるよ。

OARRとは、下記の(Outcome、Agenda、Role、Rule)の頭文字を取ったものです。OARRを参加者の方と共有することで、ディスカッションの足並みが揃います。計画段階からOARRを考えましょう。

Ruleとは前述のグラウンドルールのことです。

カメさん
カメさん

OARRをグループワークの最初に提示しよう。議論を方向づけるためには最初の共通理解が鍵になるよ。

もやしの約束

参加者の足並みを揃える技術には、「もやしの約束」というものもあります。下記の「も・や・し」を事前に参加者の方と共有することで、ディスカッションの足並みが揃います。

カメさん
カメさん

OARRも、もやしの約束も、事前に参加者全員の合意を得てからディスカッションを始める重要性を示しているよ。

見える化とは?

見える化とは、ファシリテーション・グラフィックとも呼ばれ、その名の通り議論を皆から見えやすい形にすることです。

見える化を行うことには下記のようなメリットがあります。

カメさん
カメさん

見える化することで、自分の意見が相手に確実に伝わっているという安心感を得ることができるよ。

それでは、見える化の具体的な手順を下記に示します。

見える化の効果を高めるためには以下のポイントに留意しましょう。

カメさん
カメさん

対面での会議ならホワイトボードがおすすめだよ。オンラインの会議ならPowerPointの画面を共有しながら議論を進めることが一般的だよ。他にも、オンライン上のホワイトボードとしてGoogleのGoogle Jamboardもおすすめだよ。

オンライン会議の場合は画面の構成も考慮

オンライン会議の場合は、PC上の画面でグループワークを行います。そのため、画面を共有することにより各参加者の表示画像が小さくなってしまいます。相手の顔が見えにくいと議論を活性化することができません。

「画面を共有して見える化すべきなのか」、「画面の共有は最低限にして、相手の顔が見えるにようにするのか」は、議論のテーマも踏まえて事前に検討しましょう。

ファシリテーション技術②:議論を促進する技術

議論を整理することができたら、次は「議論を促進する技術」を学びましょう。「議論を促進する技術」とは、整理した意見をもとに議論を前に進め、深めていく技術です。

議論を促進する主な技術は、質問方法に関する技術です。効果的なタイミングで効果的な内容の質問を行うことで議論を促進・活性化することができます。

質問は事前に、ある程度考えておくと良いです。質問を考える際には上記の3つのポイントに留意します。

➀質問の種類

質問の種類は主に以下の2つがあります。

オープンクエスチョンとは?

オープンクエスチョン(open question)とは、開いた質問とも呼ばれます。回答の範囲を制限しないため、回答者が自由に答えることができます

例えば、「なぜそのように考えました?」「あなたならどのような行動をとりますか」などの質問です。

「オープンクエスチョン」のメリットには以下のようなものがあります。

「オープンクエスチョン」では、具体的な内容を聴くことができるので、会話の幅が広がるとともに、内容の深まりも期待できます。

カメさん
カメさん

回答者の負担が大きいというデメリットもあるから注意しよう。

クローズドクエスチョンとは?

クローズドクエスチョン(closed question)は、閉じた質問とも呼ばれます。オープンクエスチョンとは反対に、回答をの範囲を制限する質問です。つまり、選択肢の中から選んでもらうような質問のことです。

例えば、「あなたは○○に参加したことがありますか。はいorいいえでお答えください。」や「○○と△△のどちらが好きですか。」などの質問です。

「クローズドクエスチョン」のメリットには以下のようなものがあります。

カメさん
カメさん

ちなみに選択肢が4つとか5つあるような質問もクローズドクエスチョンだよ。

「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」はどのように使いわけるの?

「オープンクエスチョン」は、相手から具体的な回答を得たい場合や、会話の幅を広げたい時に使います。

また「クローズドクエスチョン」は、回答者から得たい内容が明確に決まっている場合に使用します。

グループワークの際には、「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」のどちらも使うことが、会議の活性化には効果的です。例えば、「まずはクローズドクエスチョンから始めて、場を温めつつ、クローズドクエスチョンから得た回答を、オープンクエスチョンにて深堀りしていく」などの方法が考えられます。

「オープンクエスチョン」ばかりだと、負担も大きく、会議も円滑に進みません。しかし「クローズドクエスチョン」ばかりしていると、回答者は議論に参加しているよりも、尋問を受けている気持ちになります。

活発な議論を支援するためには、「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」のメリットとデメリットを理解して使い分けることが重要です。

カメさん
カメさん

意識的に使い分けることが重要だよ。どちらかにこだわらず、柔軟に議論を整理していこう。

②質問のタイミング

質問を行うタイミングも重要です。

グループワークの、「どの段階」で「どのような質問をするのか」を明確にしておきましょう。質問のタイミングを検討する際は、後述のグループディスカッションのフレームワークを活用することが有用です。このフレームワークは拡散→探求→収束で構成されます。「拡散」で意見を出し合い、「探求」で意見を深め、「収束」で意見をまとめます

それぞれの段階で質問の内容を検討することで、タイミングを考慮した質問を実践することができます。

例えば、「拡散」の段階であれば「○○について、どのような考えがありますか?」などの意見を引き出す質問を行います。そして「探求」の段階では、「もしあなただったら○○の場面でどのように行動しますか?」など意見を深めるような質問を行います。そして「収束」の段階では「○○について、どのような対策が考えられますか?」など、議論が結論に向かうような質問を行います。

カメさん
カメさん

戦略的に質問を検討しておこう

③質問の内容

質問の内容は議論の流れによっても変わりますが、ある程度は事前に検討しておくと良いでしょう。

質問の内容を考える時は、まずは自分が参加者の方から引き出したいと思っていることを明確にします。そして引き出したいことを考えるためには、今回のグループワークの目的を再確認する必要があります。

例えば、グループワークの目的が、「転倒のインシデントの対策検討」だとします。その場合、参加者の方から引き出したいことは、「転倒のインシデントの現状と新たな対策方法等」だと思います。引き出したいことが明確となったら、上記のフレームワークに基づくタイミングの合った質問内容を事前検討しておきましょう。

上記の「転倒のインシデントの対策検討」を目的としたグループワークについて考えてみます。

まずは「拡散」の段階で、

  • 「今までに経験した患者の転倒事例を教えてください」
  • 「危ない!と思うのはどのような状況ですか?」

などの質問で意見や事実を引き出します

次に「探究」の段階で、

  • 「○○の事例の問題点は、なんだと思いますか?」
  • 「○○の状況で、転倒が起こる理由にはどのようなことが挙げられますか?」
  • 「転倒を防ぐためには、どのような対策が必要ですか?」

などの質問で、「拡散」で出た意見を深めましょう

最後に「収束」の段階として、

  • 「○○と言う対策案が出ましたが、病棟での運用は可能だと思いますか?」

などの質問で、議論の結論を導くとともに合意形成を図りましょう

意見も質問の形で!

ファシリテーターとして意見を述べる際は、常に質問の形で意見を述べるようにしましょう。質問は次の議論を呼び、場の活性化に繋がります。

カメさん
カメさん

質問のタイミングと内容を事前に検討しておくことで、話し合いを方向づけるとともに、話し合いの範囲を限定することができるよ。

ファシリテーション技術③:物理的な環境を整える技術

ファシリテーション技術の3つ目が「物理的な環境を整える技術」です。「物理的な環境を整える技術」とは、安心して意見を言い合える環境を作る技術です。

カメさん
カメさん

リラックスして議論のできる、安全で安心な会場設計を大事にしよう。

安全で安心な場を作ることで、意見を言いやすい環境となります。結果として議論が活性化します。また参加者が承認や有用感を得やすくなるので主体性が向上します。

レイアウトを整える

グループワークの形式が「対面形式」なのか「オンライン形式」なのかで考えるべきことが異なります。

対面の場合

まずは、机と椅子をどのように配置するかを検討しましょう。

検討すべきポイントを下記に示します

これらはグループワークの内容によっても異なります

例えば課題解決型のグループワークでは、近い距離で何か資料を見ながら検討する形式が効果的です。

また、日頃の思いを語り合うような対話形式のグループワークであれば、机や資料は用意せず、椅子に座って気軽に話してもらうような環境設定が有効です。

議論と対話の違いは?

議論とは課題となっていることなどを論理的に話し合い、何かを決める方法です。また対話とは、お互いに本音で話し合うことにより、物事の本質に迫る方法です。

カメさん
カメさん

「議論」と「対話」で作るべき雰囲気も異なるから、計画段階から目的を明確にしておこう。

オンラインの場合

新型コロナウイルスの影響もあり、オンラインでのグループワークも増えています。

オンラインの場合のポイントは下記の通りです。

オンラインの場合は、顔が見えているかどうかが重要なポイントです。グループワークの場合はできるだけ顔を出してもらいましょう。

また資料の共有についても、画面を共有すると相手の顔が小さくなり見えにくくなるなどのリスクもあるため、何を優先するかを検討しましょう。

カメさん
カメさん

カメさんが良くやるのは、事前にPDFの資料をメールで送り、当日は議論の最初だけ画面共有する方法だよ。そうすれば、議論の時はお互いの顔が見えるからね。

参加者を検討する

参加者の検討も、安全安心な場を作るためには重要な要素です。

参加者の要素は下記の通りです

例えば4人グループのうち所属が同じ人が2人いると、その2人だけ共通の事例で盛り上がってしまうことがあります。

また、管理職と新人を同じグループにすると、新人が萎縮し議論が活性化しない可能性もあります。

カメさん
カメさん

とにかく安全で安心な場を作ることを意識しよう。

オンラインでも少数で話し合える場を作る

オンラインの場合も、全体説明の後に少人数のルームを作成して移動してもらうなどの工夫が必要。

ファシリテーション技術④:心理的な環境を整える技術

ファシリテーション技術の4つ目が「心理的な環境を整える技術」です。「心理的な環境を整える技術」とは、リラックスした安心感のある環境を作る技術です。

カメさん
カメさん

物理的な環境を整える技術は実際のレイアウト等で、心理的な環境を整える技術は雰囲気を作る技術だよ。

リラックスできると安心感が高まり意見が出やすくなります。その結果として参加者意識が高まり主体的な議論が生まれていきます。

心理的な環境を整える技術には以下のようなものがあります。

ここでは、どれだけ緊張をほぐすことができるかが重要になります。

グループワークの場にお菓子や飲み物を用意するだけでも、リラックスした雰囲気を作ることができます。

また議論の始めにアイスブレイクを行うことが有用です。アイスブレイクとは、氷を溶かす、つまり緊張をほぐす方法のことです。

アイスブレイクの方法には以下のようなものがあります。

自己紹介のメリットには、お互いを知るだけでなく、声を出して議論のウォーミングアップができるという利点もあります。

また簡単なストレッチやゲームも緊張をほぐすために効果的です。参加者同士で協力する簡単なゲームを行うことで、お互いが打ち解けやすくなります。

カメさん
カメさん

自己紹介として突拍子もない質問が効果的だと言われているよ。例えば「自分を文房具に例えるなら何か?」とかね。

下記のサイトでアイスブレイクに使えるミニゲームを紹介しているので良かったら参照してください。

ファシリテーション技術⑤:コミュニケーションスキル

ファシリテーション技術の5つ目が「コミュニケーションスキル」です。「コミュニケーションスキル」とは対人関係に関する技術です。

ファシリテーションの基礎になる技術なので抑えておきましょう。

コミュニケーションスキルには以下のようなものがあります。

コミュニケーションスキルは大きく分けて「受け取る力」と「伝える力」の2つに分けることができます。

そしてそれぞれ、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションに分けることができます。

カメさん
カメさん

言語的コミュニケーションはバーバルコミュニケーション(verbal communication)、非言語的コミュニケーションはノンバーバルコミュニケーション(non-verbal communication)と呼ばれるよ。ちなみに人が会話をする際は90%程度がノンバーバルコミュニケーションだよ。

受け取る力

言語的・非言語的コミュニケーションでは受け取る力が何よりも重要視されます。相手に寄り添いしっかりと聴く(受け取る)こと、つまり傾聴を心掛けましょう。しっかりと相手の意見や思いを受け取ってから、自分の主張を述べることが建設的な議論へと繋がります。

傾聴とは?

傾聴とは相手の気持ちに共感して相手の立場に立って聴くことです。相手への好き嫌いは置いておき、否定することなく肯定的な態度で最後まで聴くことが重要です。

カメさん
カメさん

傾聴は単なる「聞く」とは異なるよ。ポイントは、最後まで聴くこと、相手の話したいことを聴くこと、能動的な姿勢で聴くことだよ。

傾聴の技術には以下の2つがあります。

パッシブ・リスニングを全体の8割程度で、アクティブ・リスニングを全体の2割程度で構成すると良いでしょう。

パッシブリスニング

パッシブリスニングは受動的な傾聴と呼ばれています。つまり、相手の話しを黙って聴く傾聴の方法です。

パッシブリスニングの目的は、相手の課題を解決することではなく、相手の考えや思いを引き出すことです。

カメさん
カメさん

静かに相手の意見に耳を傾けよう。

パッシブリスニングのポイントは以下の3つです。

カメさん
カメさん

相手への共感を示しながら、上記のポイントを実践すると効果が倍増するよ

沈黙(非言語的)

沈黙は、相手が話す準備を提供するために重要です。沈黙の間に相手は話すことや、気持ちを整えます。

沈黙に耐えられずに話してしまうことが多いと思いますが、話す準備をしている相手を邪魔することになるので注意しましょう。

カメさん
カメさん

どっしり構えて、相手が話し始めるのを待とう。

あいづち(非言語的)

あいづちとは、相手の発言に合わせて頷き等のアクションを起こすことです。アクションを示すことで、「私はあなたの話しを聴いている」と示すことができます。

あいづちは、議論の促進剤になるので積極的に使いましょう。

思いを引き出す(言語的)

相手の思いを引き出す言葉かけも、パッシブリスニングの1つです。重要なことは、あくまで相手の考えや思いを引き出すことが目的ということです。

何かの課題解決へと誘導するような言葉掛けをしてはいけません。

例えば、「今の話しについて、詳しく教えてください」や「その時、どのようなことを大切にしていましたか?」など、受動的な態度で相手の考えや思いを引き出し、深掘りしていきましょう。

アクティブリスニング

アクティブリスニングとは、能動的な傾聴と呼ばれています。

受動的な傾聴であるパッシブリスニングと対になる考え方です。

アクティブリスニングのポイントを以下に示します。

オープンクエスチョン(言語的)

オープン・クエスチョンは、前述の質問方法で解説した通りです。選択肢の質問(クローズドクエスチョン)ではなく、考えや思いを自由に答えてもらう方法です。オープンクエスチョンを活用することで、発言の背後にある考えや思い、感情を引き出すことができます。

自分の聴きたいことだけを質問するのではなく、あくまで相手に寄り添い相手の課題解決や思いの表出を助けるための質問が大切です。

例えば、「あなたはその時、どのようなことを思いましたか?」「今だったらどのように行動しますか?」などです。

カメさん
カメさん

共感的な態度で行う質問は立派な傾聴だよ。

オープン・クエスチョンのポイント

オープンクエスチョンでは5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、どうした)を意識すると良いでしょう。オープンクエスチョンは、話しが広がり過ぎてしまうというデメリットもあるので、系統的な質問を心がけましょう。

パラフレーズ/おうむ返し

パラフレーズとは、相手の言葉を繰り返すコミュニケーション技法であり、おうむ返しとも呼ばれています。

ポイントは、相手の話しを繰り返す際に「あなたの話しを知りたいです、理解したいです」という姿勢を見せることです。

例えば、「〇〇という考えを持っていたんですか?」「それは〇〇という意味ですか?」などです。

カメさん
カメさん

単純に発言を繰り返すと不快感を与える可能性もあるから注意しよう。

パラフレーズを活用することで、相手は「私の話しを聞いてくれている」という気持ちになり、発言を引き出すことができます。

聴く姿勢(非言語的)

聴く姿勢は身振りや行動、態度に現れます

例えば、腕を組みながら話しを聴いていたり、落ち着かない様子で話し頷き聴いていると、相手は発言を控えてしまうかもしれません。

あなたの聴く姿勢から、相手がリラックスできる場の空気を作りあげましょう。

表情/目線(非言語的)

あなたの表情や目線でも、場の空気感は変化します。

顔色を伺うという言葉があるように、人は他人の表情を良く見ています。自分が見られているという意識を持つことが大切です。

カメさん
カメさん

年上としてファシリテーターを任されている時は、特に注意が必要だよ。

まずは「表情」が重要です。良い表情を作るためには気持ちが大切です。「あなたの話しを聴きたい」「あなたの話しに共感する」といった相手に寄り添う姿勢を意識することで、自然と相手が話しやすい表情となるでしょう。

また、相手の表情に合わせることも重要です。楽しい話しであれば適度な笑みを浮かべ、辛い話しの時は辛い感情を表現しましょう。とにかく相手に寄り添うことが重要です。

新型コロナ感染症が蔓延した影響でマスクを着用する機会が増えました。そのため、相手の表情が見えづらい状況が多々あります。

マスクをしてグループワークを行う場合は、目元の表情を意識したり、身振り手振りで感情を表現するように意識しましょう。

次に大切なことが「目線」です。

コミュニケーションにおいては、お互いに目を合わせることが重要と言われています。アクティブリスニングでは、会話をする時にお互いに目を合わせることが重要とされています。

特に対面でのグループワークの際は、話しをしている相手の目をしっかりと見ながら傾聴するようにしましょう。

目を見て話しを聞くことで、相手は「私の話しを聴いてくれている」と感じることができます。

カメさん
カメさん

目線を合わせすぎると緊張感を与える可能性もあるから、柔軟に調整しよう。

口調(非言語的)

口調は、発言する際の抑揚や声のトーン、テンポをコントロールすることで調整できます。

口調も、表情と同様に「自分の気持ち」が反映されます。相手に寄り添う態度、共感する態度を心掛けることで、場に適した口調となるでしょう。

カメさん
カメさん

テクニック的に口調を変えると、わざとらしくなるよ。落ち着いた態度で相手に寄り添うことがポイントだよ。

伝える力

傾聴にて相手の意見をしっかりと聴いたら、次は自分の考えを相手に伝えましょう

伝える力で押さえるべきは以下の2点です

言語化する力

自分の考えや思いを言語化することで、相手に伝えることができます。

考えていることを言語化するステップと必要な能力を下記に紹介します。

言語化の準備:観察する(観察力)

観察は言語化の前段階です。

物事を観察することは、日々の臨床経験であったり、グループワーク中の相手の発言など多岐にわたると思います。

看護師の耳馴染みの良い言葉で表現すると「気づき」です。

物事の本質に「気づく」ことができるように目を凝らして観察力を鍛えましょう。良い気づきは、良い発言に繋がります。

言語化の準備:思考を整理する(思考力)

「気づき」を得られたら、次はその「気づき」を頭の中で論理的に整理します。論理的な思考で整理することで、「気づき」の段階で複雑に散らかっていたものが、相手に伝わりやすい内容に変換されます。

例えば、「何か変だ」という感覚が、論理的な思考で筋道を立てることにより「なぜ変なのか」という状況に変換できます。

カメさん
カメさん

相手に伝えるためにも、自分が理解するためにも重要な過程だよ。

論理的思考とは?

論理的思考は、ロジカルシンキングとも呼ばれています。

伝えたい自分の主張を、根拠をもとに、筋道立てて考えることです。散らかっている物事を、整理し、構造化し、収束(まとめる)していくことで結論に至る過程がロジカルシンキングです。そのため、今回紹介しているグループワークの要素である「拡散」「探求」「収束」はロジカルシンキングの過程そのものです。

ちなみに、看護でもよく使われる批判的思考(クリティカルシンキング)は「物事を批判的に捉えることで、正しい論理へとつなげていく思考方法」です。つまり物事を客観的に捉える方法です。論理的思考にて整理したものを、批判的思考にてチェックすることをおすすめします。

言語化:思考を言葉に変換する(語彙力)

それでは、思考を言語化していきましょう。

思考を言語化することは、言葉の通り、思考に言語を当てはまていく作業です。そのため、言語化とは言葉を発することだけではなく、頭の中で思考を言葉にしていく作業も含まれます。頭の中で思考を言語化し、下記の「相手が理解しやすく変換する」の行程を経た上で相手に伝えましょう。

カメさん
カメさん

思考の整理と、言語化は同時並行で行われているよ。

言語化する上で重要になるのが、語彙力です。語彙力とは簡単に言うと「知っている言葉の数」です。どんなに素晴らしいことを考えていても、知っている言葉が少ないと、適切に表現することができません。「なんというか、こう、分かってはいるんだけど、伝えられない」という状況は、語彙力の低さが影響しています。

語彙力を増やすためには、その領域の専門用語に関する知識を増やすことが重要です。会話の相手との共通言語を増やす努力を継続しましょう。

言語化:相手が理解しやすく変換する(要約力)

相手に理解しやすく伝えるためのポイントは内容を短くまとめることです。

頭の中で言語化したものをダラダラ語ってしまうと、聴いている側は、「何を言っているのか分からない」という感情が湧いてしまいます。

内容を短くまとめる、つまり要約が重要です。要約にははPREP法(プレップ法)が有用とされています。

PREP法(プレップ法)とは論理的な文章を書くためのフレームワークです。下記のPoint(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論)、の頭文字を取ったものです。

報告の際のSBARは悪い要約の典型例

看護師が報告の時にSBARを全て伝えてしまう状況が、伝わりにく状況の典型例です。SBARとはS(Situation:状況)、B(Background:背景)、A(Assessment:評価)、R(Recommendation:提案)の頭文字を取ったものです。

報告の時に使うと有用と言われていますが、SBAが長すぎて、何を言っているのか分からない状況が多くあります。そのため上記のPREPに当てはめて、報告の際にはR(提案=point:結論)から伝えた上で、Reasonである、SBAを伝えると良いでしょう。

カメさん
カメさん

色々なことを伝えたい気持ちもわかるけど、まずは結論を伝えよう。結論を知ってから理由を聴く方が理解しやすいからね。

アサーティブコミュニケーション

思考の言語化により、伝える内容を整えることができたら、次は主張の方法です。主張を伝える際には、柔らかく考えを伝える技術であるアサーティブコミュニケーションが有用です。

アサーティブコミュニケーションとは、相手の意見を尊重した上で、自分の主張を伝える技術です。

カメさん
カメさん

相手の意見を尊重することは、対等に相手に向き合うことだよ。

アサーティブコミュニケーションのポイント

アサーティブ・コミュニケーションには下記の4つのポイントがあります。

上記のポイントを意識することで、自然とアサーティブなコミュニケーションとなります。

「率直」:率直とは、自分の考えを素直に伝えることです。もちろん失礼なことを言ってはいけませんが、自分が考えていることをストレートに伝えることが重要です。相手を気遣うあまり、遠回し遠回しに伝えようとして、結局何が言いたいのかよくわからなくなった経験は誰しもがあると思います。

相手に伝えやすいように思考を言語化した上で、「私はこのように考えています」と正直にストレートに伝えましょう。

「対等」:対等な立場とは、相手を尊重し、目線を合わせることです。相手を見下していたり、相手を脅威に思っていたら、アサーティブコミュニケーションは成り立ちません

攻撃的な態度や、委縮した消極的な態度も避けましょう。態度や思いは相手に伝わります。

「相手を尊重し、目線を合わせて対等にコミュニケーションを行う」と常に意識しながらコミュニケーションを行うことが重要です。

カメさん
カメさん

どちらかが優位に立ってしまう状況は避けましょう

「誠実」:誠実さとは、嘘をつかないことです。自分にも、相手にも嘘をつかず、正直に対応するようにしましょう。

相手に嘘をつかないことは、当たり前として、自分に嘘をつかないということがポイントです。自分に嘘をつくとは例えば、相手と意見が異なった時に、相手を気遣い反論を飲み込む行為などです。

相手の意見を受け止めつつ、自分の考え・思ったことを正直に伝えるという誠実な態度が大切です。これは上記の率直さにも繋がるところです。

「自己責任」:アサーティブコミュニケーションの最後のポイントは、「自己責任」です。自己責任とは、自分の発言や態度に責任を持つことです

どんな発言であっても、良くも悪くも結果に影響します。また、どんなに誠実に対応したとしても率直な発言は、相手を傷つけることがあります。

コミュニケーションにより起こった結果まで責任を持つことも、重要なポイントの1つです。また、発言をしなかったことによる結果にも責任が発生することを押さえておきましょう。

カメさん
カメさん

コミュニケーションを取った時点で、発言してもしなくても責任が発生するんだね。

アサーティブコミュニケーションの技術

アサーティブ・コミュニケーションを実践するために役立つ技術としてDESC法(デスク法)というものがあります。

DESC法とは下記の頭文字を取ったものです。

Describe(描写)Explain(表現)Specify(提案)Choose(選択)の4つの段階に分けて自分の考えを主張することが、アサーティブコミュニケーションに繋がります。

「Describe(描写)」:アサーティブコミュニケーションでは、前提として客観的な視点が重要となります。客観的な視点とは、自分の考え(主観的な視点)を含めていない事実のことです。

Describe(描写)の段階では、事実のみを伝えましょう。この段階では、自分の推測や感情を入れないように注意しましょう。

「Explain(表現)」:Describe(描写)で客観的な視点を伝えることができたら、次はExplain(表現)として主観的視点を伝えます。事実に対して、自分がどのように考え・感じたのかを率直に伝えましょう。主観的な視点を伝える時は、前述のアサーティブコミュニケーションの4つのポイントに留意することが大切です。

カメさん
カメさん

率直な考えだったとしても、相手を責めるような態度はNGだよ。

「Specify(提案)」:客観的な事実と主観的な視点を相手に伝えることができたら、次は「Specify(提案)」にて具体的な提案を行います。

具体的な提案とは、実現可能な提案のことです。相手の状況・背景等に配慮した上で現実的に実現が可能な提案を行いましょう。また、提案を強制しないことが重要です。相手の意見を尊重しましょう。

「Choose(選択)」:Specify(提案)で具体的な提案を行った後に、相手の反応に合わせて次の行動を伝えます。相手の反応に合わせて伝えるべき内容を変えるのでChoose(選択)と呼ばれます。

例えば、Specify(提案)で伝えた提案に賛成してもらえた場合は、次の行動を提示します。「それなら、○○していきましょう」などですね。

また、Specify(提案)で伝えた提案に賛成してもらえなかった場合は、別の提案を行いましょう。「そうですか。それならば○○などはどうですか?」などです。

カメさん
カメさん

相手の反応に合わせて柔軟な対応を取ることが重要だよ。相手の反応を想定して、提示できる選択肢をいくつか用意しておこう。

ファシリテーションの理論:Diamond of participation

 Diamond of participationとは、Sam Kaner が著書の中で説明しているファシリテーションの方法論、フレームワークです。Diamond of participationは、主に課題解決等の何かを生み出すためのグループワークで活用できます。

議論が、「拡散 (Divergence)」と「探求 (Groan)」、「収束 (Convergence)」の3つの段階を経ることにより新たなものが生み出されます。

これをダイアモンドの形で表現しています。

引用:Diamond of participation  Sam Kaner(2014) https://wiki.p2pfoundation.net/Diamond_of_Participation

 拡散 (Divergence)

まずは拡散です。この段階では、「課題としていること」や「新たに取り組みたいこと」などのグループワークのテーマに沿った意見を出し合います

ポイントは、とにかく意見を出し合うことです。この段階では、制限等は設けずに好きなように意見を出し合いましょう。

沢山の意見を出すためには、「質より量を重要視する」ことや「相手を批判しない」などのグラウンドルールを事前に設定し、安心・安全な場を作ることが重要です。

気軽に意見を出しやすい空気感を作りましょう。

カメさん
カメさん

新しいものを生み出す営みには、安心・安全な場が絶対条件だよ。

探求 (Groan)

「拡散 (Divergence)」にて意見を出し切ったと感じたら、次の段階に進みましょう。次は「探求 (Groan)」です。この段階では、拡散で出し合った意見を吟味し、深めていきます。

新しいものを生み出したり、何かを改善するためには、この段階が重要です。出し合った意見について、様々な角度から吟味し、悩みに悩みましょう。

議論が立ち止まってしまったり、何度も同じ議論を繰り返したりなど、嫌な気持ちになることもあるかもしれませんが、新しいものを生み出すためには苦しい時間も必要です。しっかりと吟味していれば、あるタイミングで「もしかして、これって…」というように議論が新しい方向に展開していくことでしょう。

結論を急がず、みんなで立ち止まって話し合いましょう。

カメさん
カメさん

Groan とは呻きという意味だよ。みんなでたくさん呻きながら議論を深めていきましょう。

収束 (Convergence)

「拡散」で出し合った意見を「探究」にて深めることができたら、議論は「収束」へと向かいます。

「収束 (Convergence)」とは、議論を結論づけていく段階です。

議論から導き出された新たな方法や改善策を決めて行きましょう。

十分に「拡散」「探究」が出来ていれば、自然と結論に向かうことが大半です。

探求の時間を得て、なんとなく方向性が見えてきた感覚が出てきたら、話し合いは収束に向かいます。この時間では決めていくことを前提に、何を基準に決めるのかや、どのようにするのかと言った具体的な事柄を話しあっていきます。

 「探究」で議論が深まっていない状況や、誰かの合意形成が不十分な場合は「収束」に難渋します。そのような時は、どのような方法・基準で結論を決めるのかを話し合った上で、再度議論を行いましょう。全員の合意形成に至るまでの意見の衝突が大切です。

参加者全員が「話しきった」と感じた上で、結論に辿り着くことが理想です。

カメさん
カメさん

ファシリテーターには、議論を収束に導くために、みんなが考えや思いを出し切れるような支援が求められるよ。

Diamond of participationの活用方法

課題解決や、新しいものを生み出すためのグループワークの際に、このフレームワークを活用しましょう。

「拡散」→「探究」→「収束」のフレームワークをもとに、グループワークのタイムスケジュールを作成し、各段階毎の質問項目を事前に検討しておくと良いでしょう。

そうすることで、議論の方向性を整えることができます。

また、「拡散」→「探究」→「収束」のフレームワークを参加者に提示することも効果的です。

参加者それぞれが、フレームワークの段階を把握しておくことは、考えや思いを出し切ることに繋がり、納得感のある結論へと繋がります。前述のOARRのAの段階で、このフレームワークを活用して話し合いのプロセスを共有することも効果的です。

カメさん
カメさん

お互いに、「拡散」はこれで十分かな?とか考えることが大切だね。

ブレインストーミングとの違いはなに?

課題解決や新しいものを生み出すためのグループワークの技法としてブレインストーミングがあります。これは、看護の世界でも頻繁に使われている技法です。このブレインストーミングとDiamond of participationの違いを説明します。

ブレインストーミング(Brainstorming)とは?

ブレインストーミング(Brainstorming)とは、アイデアを生み出す方法論の1つです。1950年代にアメリカ人のアレックス・F・オズボーンによって考案されました。

ブレインストーミングは、グループワークで、ホワイトボードなどにアイデアを書き出し、意見を出し切ったところで、KJ法などにより意見をまとめる方法です。複数人で意見を出しあったものを、整理しまとめる作業を通して新しいアイデアを生が生み出されます。

KJ法とは?

KJ法とは、ブレインストーミングで出された雑多な情報を効率的に整理する方法です。

ブレインストーミングの際に、付箋などをしようして意見を書き出します。そして、付箋の位置を変えたり、グループに分けたり、関連性を記述するなどして、情報を整理します。

このように、雑多な情報を、意味ある情報に変換していく方法がKJ法です。

ブレインストーミングとDiamond of participationの違いは?

ブレインストーミングとDiamond of participationの大きな違いは、ブレインストーミングには「探求」の段階がないことです。

ブレインストーミングでは「拡散」にて意見を出し合ったものを、KJ法にて「収束」させます。つまり「拡散」→「収束」のフレームワークとなっています。

このようなフレームワークの利点は、短時間で多くのアイデアを生み出すことができることです。しかし、新しく優れたものを生み出すためには、豊富な「探求」の時間が必須です。

カメさん
カメさん

新しい知を生み出すためには、十分な議論が必要になるよ。

時間を確保することができるのであれば、Diamond of participationのフレームワークを活用し、最良のアイデアを生み出しましょう。

ファシリテーションに関する論文を紹介

それでは最後に、ファシリテーションに関する論文を紹介します。今回は2つの論文を紹介します。まずは下記の論文です。

この研究は、倫理カンファレンス(倫理的問題を吟味し、行動に移せるように導く)におけるファシリテーションスキルを明らかにした研究です。調査内容は、臨床指導看護師17名への半構造化面接調査です。その結果、下記のスキルが明らかになっています。

この結果から知識や経験の蓄積をベースとして、前述した場の雰囲気づくりや、事前の準備が重要となっていることがわかります。

続いてファシリテーションの困難さを調査した研究についても見てみたいと思います。下記の論文を紹介します。

この研究は、ファシリテーションにおいて認識されている困難さの実態を明らかにした研究です。調査内容は、様々な領域でワークショップを行っているファシリテーションの実践者に、質問紙調査や面接調査を行っています。その結果、下記のような困難さが明らかとなりました。

この結果から、マネジメントに関する困難さを感じていることが分かります。自身が行うグループワークでは、この結果を活かして事前に対策を練っておくことをおすすめします。

論文の中では、領域毎の困難さの違いや、熟達度による困難さの違い等も明らかにしているため、良かったら参照してみてください。

おまけ:ファシリテーションの活用範囲

ファシリテーションは幅広い場面・分野で活用することができるスキルです。今回は幅広い場面の中の1つの「議論を促進するための働きかけ」に焦点を当てました。しかし、ファシリテーションにはもっと大きな役割もあります。例えば、組織に働きかけ問題解決や変革・創造に関わることもファシリテーションの1つです。

ファシリテーションは幅広い場面・分野において、知識創造を支援することができるスキルです。是非、会議の場面だけでなく、様々な場面で活用してみてください。

ファシリテーションの活用分野は主に「1問題解決型、2合意形成型、3教育研修型、4体験 学習型、5自己表現型、6自己啓発型」の6つに分けられます。

さらに、これらの活用分野を「個人的⇔社会的(組織・集団)」という軸と、「学習的(啓発・理解・体験)⇔創造的(意思決定・合意形成・価値創造)」という 2 つ の軸で示したものが下記の図になります。

カメさん
カメさん

ファシリテーションは社会生活や個人の充実 に対して幅広く役に立つ手法なんだね。

1:問題解決型のファシリテーション

問題解決型のファシリテーションは、ビジネス分野や政治分野で主に使われます。ビジネスにおける課題解決や、組織の意思決定に向けた取り組みなど、創造的な活動を推進します。チーム全般に大きく働きかけるため、社会性・組織性に関するスキルた求められます。

カメさん
カメさん

病棟での課題解決に取り組むためのファシリテーションとかも含まれるね。

2:合意形成型のファシリテーション

合意形成型ファシリテーションは、多様な意見を共有し、整え、合意形成を推進していくファシリテーションです。参加者が納得感のある結論を出すためのファシリテーションが求められるため、高い社会性のスキルが必要になります。

合意形成型のファシリテーションは、例えば地域づくりなどの活動で、住民の合意形成が必要な場面で活用できます。

3:教育研修型のファシリテーション

教育研修型のファシリテーションでは、参加者に自律的な学習を促します。近年は看護教育でも頻繁に取り上げられるようになったアクティブラーニングにおけるファシリテーションはなども、この分野です。参加者の自主性に働きかけるため、従来の講義型の授業と対比して説明されることが多くあります。

カメさん
カメさん

院内の集合研修のファシリテーションをお願いされたりしたら、この分野のファシリテーションスキルが必要になるよ。

4:体験学習型のファシリテーション

体験学習型のファシリテーションは、自然の中で体験を共有することを通して学習を促すファシリテーションです。環境教育や自然教育の際に活用されます。ポイントは、知識を提供する学習ではなく、体験を促す学習だということです。

参加者が経験を学びに繋げることができるようにファシリテートするスキルが求められます。

5:自己表現型のファシリテーション

自己表現型のファシリテーションは芸術の世界で活用されます。多様な参加者同士の相互作用により、新しい作品を創造するためのファシリテーションです。

参加者の本当の想いを引き出し、新しいものを生み出すファシリテーションは、多くの場面で活用可能です。例えばワークショップにより、新たな看護の知を創造するような取り組みにも活用することができるでしょう。

6:自己啓発型のファシリテーション

自己啓発型のファシリテーションは、個人に働きかけて、変革を促すファシリテーションです。コーチングのように、個人に気付きを与えることにより自己変革を促進します。

看護師の例で考えると、プリセプター制度を導入している場合に活用が期待されるスキルです。

カメさん
カメさん

日々の看護実践について気づきを与えるような関わりも立派なファシリテーションだよ。

まとめ

ファシリテーションは、議論の場を切り盛りするスキルです。場を切り盛りするとは、場を作り、まとめ、新たなアイデアを生み出したり、メンバーの合意形成を図ることです。そして、ここで重要になるのが、傾聴する力です。

たくさん解説してきましたが、ファシリテーションにおいて、これだけは覚えておいて欲しいことが「傾聴のスキル」です。相手を尊重し、目線を合わせ、傾聴する。これを意識することが、ファシリテーターとして最も重要です。

議論を滞りなく回すことに注力してしまうことが多いと思いますが、参加者の気持ちを配慮したファシリテーションを行って頂けると嬉しいです。

ファシリテーションのスキルは、1つのディスカッションでの役割だけでなく、組織や社会でも活用ができるスキルです。是非、所属する施設や部署、地域における新たな知識の創造のために役立ててください。

カメさん
カメさん

参加者とファシリテーターが対等な関係となることが重要だね。自分の意見を我慢したり、相手の意見を一方的に否定するようなことは避けよう。相手を尊重しながら自分の気持ちを伝えることが大切です。そうすることで、議論の場が「安心・安全の場」になるよ。

看護師の教育について詳しく知りたい方は【看護師への教育を学びたい人へ】押さえるべき教育理論を解説「看護教育は“経験学習”דインストラクショナルデザイン”」を参照してください。

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