Last Updated on 2023年12月29日 by カメさん
こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は3~5分で読むことができます。
今回は標本抽出・サンプリングについて解説するよ。簡単に言うと研究する時の対象の選び方だよ。
母集団とは?
母集団とは?
- 研究で明らかにしたい本当の対象のこと。
- 例えば「全国の看護師」「A病院の看護師」「全国の糖尿病患者」「関東圏のお大学の看護学生」など。
このように大抵の母集団は膨大な数になるため全数調査は不可能なことが多いです。
ちなみに総務省が行う国勢調査などは全数調査だよ。
標本・標本抽出(サンプリング)とは?
母集団を全て調査できない時に登場するのが標本抽出(サンプリング)です。
標本とは?
母集団から一部のデータを取り出した(抽出)データのこと。
統計解析は、この取り出した標本を分析して母集団の結果を推定するために必要(推測統計)。
少ない数で計算できれば負担も減るね。
標本抽出の方法は2種類ある
標本抽出には2つの方法があります。それは確率的標本抽出と非確率的標本抽出です。
確率的標本抽出とは?
母集団から標本を無作為(ランダムで)に抽出する方法です。無作為に抽出するのでバイアスが起きづらいです。
バイアスとは、データが偏ってしまい正しい結果が出ないことだよ
ここからは確率的標本抽出法の詳しい方法を解説します。
単純無作為抽出法とは?
標本を抽出する母集団の全てのデータ(標本抽出枠)を用意します。
例えば、A病院の看護師800名の名簿リストなどです。この母集団全てを対象に研究を行うのは大変なため、この中から標本を抽出します。
この方法は名前の通りランダムで標本を抽出するため、標本を抽出する時に乱数表を使います。
乱数表の使い方
先ほど用意した名簿リストに通し番号をつけて、上記の乱数表を用いて予定する対象者(例えば100人とか)を抽出します。
適当に選んだところ(鉛筆を倒して先が当たったとことか)が12で、12から右にスタートしたとすると「12,26,67・・(必要数分)」が抽出されるね。もし50以上対象がいなければ67は捨てて次の数字ですね。
紙でやる方法もありますが、Excelを使用するのが簡単でおすすめです。
Excelで乱数を表示させる方法
Excelの一つのセルに「=INT(RAND()*100+1)」と入力してEnterを押すと、そのセルに1以上100以下の数字が表示されます。そしたら、セルの右下をドラッグして必要分のセルまで引っ張ると、乱数が表示されます。
層化無作為抽出法とは?
これは母集団を明確な層に分けることができる場合に使用します。
例えば病院であれば、ベッド数で分類して、1000床以上、900床~1000床未満、800床~900床未満など。看護学校などであれば、大学、短期大学、専門学校などです。
まずは母集団をいくつかに分けるよ!
この母集団の層から、それぞれ無作為に標本を抽出します。
層化無作為抽出法を用いることで、層毎の母集団を反映することができます。人数の少ない層を反映させたい場合は単純無作為抽出ではなく、層化無作為抽出法を使いましょう。
系統抽出法とは?
まずは標本抽出枠を用意します。その標本抽出枠のリストから一定の間隔で標本を抽出する方法です。
例えば2人間隔で標本を抽出するなどです。
これは標本抽出枠のリストがもともとランダムに番号化されている必要があり、五十音や入社年度などの関係する社員名簿や学生名簿は適していません。
逆に患者さんのリストの場合を用いる際は有用です。
患者さんは無作為に受付で番号化されているからね。
多段抽出法とは?
母集団をグループに分け、そこから無作為抽出でグループを選び、さらにその中から無作為抽出で対象者を選定する方法です。段階を分けて抽出するため、多段抽出法と呼ばれます。
例えば、全国の看護師を調査したいのであれば、都道府県を無作為抽出(➀段階)し、その都道府県から病院を無作為抽出(②段階)し、病院毎に単純無作為抽出(③段階)を行うなどです。
クラスター抽出法とは?
母集団がとても大きくて標本抽出枠を用意できないような時に使用します。
母集団を、クラスター(小集団・集落)に分け、いくつかのクラスターを無作為抽出します。そして、それぞれのクラスターにおいて全数調査を行う方法です。
例えば、全国の病院(各病院がクラスター)から無作為に病院を抽出し、抽出した病院の看護師を全て調査するなどです。
抽出した病院の全数を調査するのは負担が大きいため、個人の研究で使用されることはほとんどないよ
非確率的標本抽出とは?
母集団から標本を作為的(研究者が意図的に)に抽出する方法です。
この方法は研究者の考えが強く影響するため注意が必要です。
例えば、新しく開発した測定用具の評価など特定の専門家の意見が求められる場合などに使用されます。
割当法とは?
母集団の中から、研究に必要とされる要素を意図的に抽出する方法です。
例えば、看護師の調査で男性に必要数参加してもらうなどです。
看護師は男性の人数が少ないからね。
男性にも必要数参加してもらうことで、看護師や看護学生を代表するデータに近づけることができます。
機縁法とは?
研究者が身近な標本を集める方法です。
例えば、自分の担当した患者や、自分の所属する病棟の看護師を対象とする場合、または知人に紹介してもらう場合などです。
看護研究ではよく見られる方法だね。
この方法は上記の確率的標本抽出と比較して偏りが出やすく、母集団を代表する結果とならないことが多くあります。
研究内容によってはこのような標本抽出しかできないときもあります。この抽出法を利用する場合は、できだけ偏りが少なくなる工夫をします。
スノーボール法とは?
機縁法にて選定した対象者に、次の対象者を紹介してもらうことで雪だるま式に対象者を増やす方法です。
質的研究で対象者を増やしたいときなどによく使われます。
まとめ
研究の質を高めるための要因の1つとして、標本抽出があります。研究によっては無作為な標本抽出ができなことも多々あります。大事なことは、母集団を明確にし、自分がどのような標本抽出をするのかを理解することです。
研究には必ず限界があります。完璧な研究はできないので、自分が行う研究を詳細に理解して、限界を把握した上で解釈することで、研究の質が高まります。
引用・参考文献
- 川口孝泰(2020) .看護研究 ミニマム・エッセンシャルズ.医学書院,東京.
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