Last Updated on 2023年12月28日 by カメさん
こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は5分程度で読めます。
感度・特異度について解説するよ。
今回は「感度・特異度」「陽性・陰性・偽陽性・偽陰性」「陽性的中率・陰性的中率」「陽性尤度比・陰性尤度比」の用語について解説するよ。
陽性・偽陽性・陰性・偽陰性とは?
まずは、検査における陽性・陰性の用語を整理しましょう。以下の図は「疾患のあり・なし」と「検査の陽性・陰性」を表にしたものです。
つまり、偽陽性や偽陰性は検査における間違いのことだね。
感度・特異度とは?
感度・特異度とは検査における判定の精度、つまり検査の正確度を表した用語です。
感度(sensitivity)とは?
- 真に疾患を有する者を検査によって陽性と正しく判定できた割合
- 陽性の人を陽性と正しく判定できる割合
特異度(specificity)とは?
- 真に疾患を有さない者を検査によって陰性と正しく判定できた割合
- 陰性の人を陰性と正しく判定できる割合
感度と特異度を考える上でのポイントは?
感度のポイント
- 感度が高い検査は見落としが少ない検査
- 感度が高い場合には偽陰性(疾患があるのに陰性と間違う)が少なくなる
- 感度が低いと偽陰性が増える
特異度のポイント
- 特異度が高い検査は過剰に疾患ありと判断することが少ない検査
- 特異度が高い検査では偽陽性(疾患がないのに陽性と間違う)が少なくなる
- 特異度が低いと偽陽性が増える
感度が低くて偽陰性が増えるということは、疾患の取りこぼしが増えるということ。反対に特異度が低くて偽陽性が増えるということは、間違って疾患と判断することが増えるということだよ。
感度・特異度の計算方法は?
感度・特異度の計算方法について上記表を再度用いて解説します。
感度は、「A(疾患ありのうち陽性)」を「A+C(疾患ありの合計)」で割った値です。特異度は、「D(疾患なしのうち陰性)」を「B+D(疾患なし合計)」で割った値です。
感度・特異度の計算は「疾患あり・なし」のうちの「陽性・陰性」に注目しよう。
陽性的中率・陰性的中率とは?
感度・特異度に合わせて陽性的中率と陰性的中率を確認しましょう。
陽性的中率とは?
陽性と判断した時に、真に疾患ありである確率
陰性的中率とは?
陰性と判断した時に真に疾患なしである確率
陽性的中率と陰性的中率の計算方法は?
陽性的中率と陰性的中率の計算方法について上記表を再度用いて解説します。
陽性的中率は「A(真の検査陽性)」を「A+B(検査陽性の合計)」で割った値です。陰性的中率は「D(真の検査陰性)」を「C+D(検査陰性の合計)」で割った値です。
陽性・陰性的中率の計算は、「陽性・陰性」のうちの「真の陽性・真の陰性」に注目しよう。
有病率が低い疾患に注意
感度と特異度が高い検査であっても、有病率が低い疾患の検査の場合は陽性的中率が下がります(そもそも陽性になる数が少ない)。そのため有病率が低い疾患の場合は、追加の精密検査を検討する必要があります。
陽性尤度比・陰性尤度比とは?
尤度比(陽性尤度比、陰性尤度比)という用語についても触れておきたいと思います。これは「疾患を有していた場合に何倍陽性になりやすいのか」、「疾患を有していない場合に何倍陰性になりやすいのか」の指標です。
陽性尤度比(positive likelihood)とは?
- 感度が高いほど、特異度が高いほど、大きくなる値
- 陽性や陰性を正しく判断できるほど大きくなる
陰性尤度比(negative likelihood)とは?
- 感度が高いほど、特異度が高いほど、小さくなる値
- 陽性や陰性を正しく判断できるほど小さくなる
陽性・陰性尤度比はどちらも、正しく陽性・陰性を判断できるかどうかの指標だよ。
陽性尤度比・陰性尤度比の計算方法は?
陽性尤度比と陰性尤度比を算出するためには感度・特異度の値が必要になります。感度・特異度の計算は前述したため割愛します。陽性・陰性尤度比の計算方法を下記に示します。
陽性尤度比は「陽性を正しく判断できる割合(感度)」を「陽性と間違って判断する割合(1-特異度)」で割った値です。陰性尤度比は「陰性と間違って判断する割合(1-感度)」を「陰性を正しく判断できる割合(特異度)」で割った値です。
1-感度・1-特異度とは?
1-感度:真に疾患を有する者を検査で陰性と間違って判断した割合
1-特異度:真に疾患を有さない者を検査で陽性と間違って判断した割合
どちらも検査を間違える割合のことだね。
尤度比の効果量とは?
尤度比の効果量とは?
- 疾患を有していた場合、どのくらい陽性になるのかの大きさ
- 疾患を有していない場合、どのくらい陰性になるのかの大きさ
効果量の目安を表にしたので参考にしてみてください。
尤度比の大きさを判断する指標だよ。算出された尤度比を見て、実施している検査がどのくらい陽性・陰性を正しく判断できるのかを評価しよう。
COVID19の検査の感度・特異度は?
2019年12月より始まったCOVID19のパンデミックにより身近になった、ウイルスを検出する検査を例に感度・特異度を考えてみたいと思います。
ウイルスを検出する検査とは?
ウイルスを検出する検査として、ウイルスゲノムを検出する検査(PCR検査)、ウイルス蛋白質を検出する検査(抗原検査)などがあります。
抗原検査とは?
抗原検査には抗原定性検査と抗原定量検査があります。
抗原定性検査
- 簡易キットを用いるものと、専用の機械を用いるものに分かれる
- 感度はPCRに比べて低いが、特異度は一般的に高く100%に近い
- 迅速に結果が出るという反面、感度が低いため偽陰性(疾患を取りこぼす)が多い
- 感度が低いので検査結果が陰性でも、感染対策を緩めることができない
抗原定量検査
- 専用の機械が必要
- 30分程度の検査可能
- 抗原定性検査に比べて5~50倍程の感度がある
- PCR検査と同程度の正確性がある
ちなみにPCR検査は70~90%近い感度と言われ、感度・特異度ともに高い検査だよ。
無症状患者への検査に注意
無症状の患者とは、有病率が低い患者さんのことです。どんなに感度・特異度が高い検査でも有病率が低いと陽性的中率が下がるため留意が必要です。追加の検査も検討しましょう。
陽性・陰性を完璧に判断できる検査はないよ。だから、検査結果だけではなくて総合的な判断をするようにしよう!
引用・参考文献
- 対馬栄輝(2020).医療統計解析使いこなし実践ガイド.羊土社,東京.
- 対馬栄輝(2019).医療系研究論文の読み方・まとめ方.東京図書,東京.
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