Last Updated on 2023年5月18日 by カメさん
こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は5分程度で読めます。
今回は、帰納法・演繹法・仮説演繹法について解説するよ
「帰納法」と「演繹法」は、いずれもロジカルシンキング(論理的思考)の1つです。ロジカルシンキングとは、論理的に道筋を立てて物事を考え、合理的な結論を導き出す思考法です。
臨床で看護師として働く上で、有用な思考法であることに加えて、質的研究・量的研究を理解するためのベースになる知識です。そのため研究の基礎になる思考法でもあると言えます。研究のためにも、実践のためにもこの動画で帰納法と演繹法を理解しましょう。
YouTubeでも詳しく解説しているので良かったら参照してください。
質的研究・量的研究について詳しく知りたい方は【量的研究・質的研究ってなに?】看護師必読「看護研究の分類を理解しよう」を参照してください。
「帰納法・演繹法」と「質的・量的研究」の関係
一般的には、質的研究は帰納法的思考により行い、量的研究は演繹法的思考法にて行います。
そのため、質的研究は帰納的研究と呼ばれ、量的研究は演繹的研究と呼ばれることがあります。
質的研究、量的研究にも色々な手法があるので、一概には言えないけどね。
帰納法とは?
まずは帰納法から解説していきます。帰納法とは、論理的に物事を考えるための1つの思考法で、「帰納的推論」や「帰納的アプローチ」と呼ばれることもあります。
帰納法の「概要」
帰納法を簡単に説明すると、「複数の物事・事例を並べて、共通する情報・ルールを抽出・統合して結論を得る」という考え方です。
帰納法は、英語でinduction(インダクション)と言われます。つまり、論理を、うちに収束させていくイメージです。
帰納法で扱う「物事や事例」
帰納法と演繹法では、扱う物事や事例も異なります。
帰納法では、過去の事例や個人の経験則、会話、インタビュー記録などの、主観的データをもとに行います。つまり、数字では表すことのできないデータを対象とします。
帰納法の「思考過程」
帰納法の思考過程を図にしました。
複数の個別的な事実の共通項を探して、結論を導くのが帰納法です。
上記の図をもとに帰納法の思考過程の例を示します。
この例では、複数の看護師にインタビューを行っており、その際のインタビュー記録の共通項を探した結果、看護師が多忙であるという結論が導かれています。
この例からも分かる通り、帰納法のポイントは共通点を抽出することです。複数ある物事や事例から、共通する情報・ルールを取り出して、そこから結論へと導きます。
帰納法の「メリット・デメリット」
帰納法にはメリット・デメリットがあります。
帰納法のメリットは、
個別的な事例や事実から、情報や法則や命題を導き出すことができることです。つまり、新しいことを明らかにすることができます。
反対に、帰納法のデメリットは、
主観的なデータをもとにした議論が中心となるため、不適格な情報から不適格な結論が導かれる可能性があることです。
そのため、帰納法では、信頼できる情報・正しい計測が重要になるよ。
演繹法とは?
演繹法とは、帰納法と同様に、論理的に物事を考える思考法の1つです。「演繹的推論」や「演繹的アプローチ」と呼ばれます。
演繹法の「概要」
演繹法を簡単に説明すると、「すでに知られている法則や一般論から、結論を導く」考え方のことです。演繹法は、英語でdeduction(ディダクション)と言います。つまり、論理を積み上げて、外に広げていくイメージです。
演繹法で扱う「物事や事例」
演繹法で用いる物事や事例は「一般論やルール、先行研究で明らかになっている事実など」です。演繹法の場合は、数字で表すことのできる客観的データを使用することが多いです。
帰納法では反対に、個別の事例など、数字では表せない主観的データを使用しているよ。
演繹法の「思考過程」:三段論法
演繹法の思考過程には、色々な形式がありますが、最も一般的なものが三段論法と呼ばれる思考過程です。三段論法とは、演繹法の思考形式の1つで、「一般論と、観察事項をもとに推論を重ねて結論を導く」考え方です。古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスが確立したと言われています。
三段論法の思考過程を図にしました。一般論やルールなどの大前提から、次に観察した事実などの小前提を当てはめて結論を導く思考法です。
「A=B、B=C、ゆえにA=C」という3段階の思考法となっています。図にある通り、抽象度を徐々に下げて具体化していくことがポイントです
下記が三段論法の例です。
まずは大前提として、先行研究で、「職場環境の悪化により離職率が高まる」ことが分かっていたとします。そして小前提として、「あなたの所属施設での調査で、離職率の上昇により患者満足度が低下した」とします。この結果を三段論法に落とし込むと、「職場環境の悪化は患者満足度の低下を招く」という結論を導くことができます。
演繹法の「メリット・デメリット」
演繹法にもメリットとデメリットがあります。
演繹法のメリットは、
前提が正しければ必ず結論も正しいという、真理保存性という特性があることです。そのため、物事を検証することに向いている思考法です。
演繹法のデメリットは、
すでに前提の中に結論となるものが含まれているということです。そのため、演繹法では、新たな知識を得ることが難しいです。
まあ演繹法は、あくまで検証することを意義としているので、必ずしもデメリットであるとは言えないかもしれないけどね。
仮説演繹法とは?:帰納法と演繹法の組み合わせ
帰納法・演繹法の応用として、仮説演繹法という考え方があります。仮説演繹法とは、帰納法と演繹法を組み合わせた思考法のことです。
仮説演繹法の「概要」
仮説演繹法を簡単に説明すると、帰納法によって仮説を作り、それを演繹法によって実験可能な予測にし、実験によって仮説を検証する」考え方です。
仮説演繹法を活用した研究方法に混合研究法があります。混合研究法とは質的研究と量的研究を組み合わせた研究方法です。混合研究法について詳しく知りたいかたは○○○〇を参照してください。
仮説演繹法の「手順」
仮説演繹法の手順を下記に示します。
問題を発見したら、まずは帰納法によって仮説を導きます。その後で、演繹法を活用して実験可能な「予測」を導きます。最後に、予測をもとに実験をすることで仮説の検証を行います。
仮説演繹法の「思考過程」
下記が仮説演繹法の思考過程です。
まずは、帰納法により個別の事実から共通事項を探し、仮説を作ります。演繹法により、その仮説に情報を追加しながら、実験可能な予測にまで具体化します。そして具体化した予測を実験にて検証します。
仮説演繹法の例を示します。
例えば、「スタッフの少ない病院では患者満足度が低い、看護師がすぐ辞める病院はクレームが多い、働きやすくて有名な職場は患者にも人気」という個別の事例から、共通項を探し、「看護師が辞めたいような病院は患者にも人気がない可能性」という仮説を立てます。その次に、仮説に対して、「職場環境の悪化は離職率が高まる」という、先行研究にて明らかになっている情報を追加して、「職場環境と患者満足度には影響があるのではないか」という予測を立てます。最後にアンケート調査にて、この予測を検証します。この検証により、仮説の確からしさがたかまります。このプロセスが仮説演繹法です。
仮説演繹法の「メリット・デメリット」
仮説演繹法のメリットは、
帰納法と演繹法の問題点を解消できることです。帰納法の問題点は、「結果が必ずしも論理的に正しいとは言えないこと」です。また演繹法の問題点は、「新しい知識が獲得できないこと」です。仮説演繹法を使用することで、これらの問題点を解消することができます。
仮説演繹法を使用して帰納法と演繹法を組み合わせることで、「新しいことの発見」と「正しさの検証」を両立することができるよ。
仮説演繹法のデメリットは、
扱うデータが膨大となり、労力や費用がかかることです。2つの思考法を組み合わせているため、データ量も増え、時間も労力も掛かります。本当に帰納法と演繹法を組み合わせるべき問題なのかを事前に検討するようにしましょう。
まとめ
帰納法(質的研究)で新しいことを発見し、演繹法(量的研究)により論理を積み上げて検証する。つまり、帰納法と演繹法は一連の流れです。
自分が対象としている事象や目的を事前に分析し、帰納法・演繹法どちらの思考法で検討するのが適切かを考えて議論を展開しましょう。
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