Last Updated on 2022年11月13日 by カメさん
こんにちは!救命センターで働く看護師のカメさん(@49_kame)です。
今回は意識障害の原因疾患がまとめられた「AIUEOTIPS」について解説するよ。
- AIUEOTIPSとは?
- A : Alcohol アルコール
- A : Aortic Dissection 大動脈解離
- I : Insulin(hypo/hyper-glycemia) 低/高血糖
- U : Uremia 尿毒症
- E : Encephalopathy(hypertensive) 高血圧症
- E : Encephalopathy(hepatic) 肝性脳症
- E : Endocrinopathy(adrenal , thyroid) 内分泌疾患
- E : Electrolytes(hypo/hyper-Na , K , Ca , Mg) 電解質異常
- O : Opiate or other overdose 薬物中毒
- O : Decreased O2(hypoxia , CO intoxication) 低酸素(一酸化炭素中毒を含む)
- T : Trauma 外傷
- T : Temperature(hypo/hyper) 低/高体温
- I : Infection(CNS , sepsis , pulmonary) 感染症
- P : Psychogenic 精神疾患
- P : Porphyria ポルフィリン症
- S : Seizure てんかん・痙攣
- S : Shock ショック
- S : Stroke, SAH 脳卒中
- まとめ
- 引用・参考文献
AIUEOTIPSとは?
AIUEOTIPSとは意識障害の鑑別疾患の頭文字をまとめたものです。
意識障害の診療において一般的に使われる指標であり、分かりやすいので覚えておきましょう。
意識障害の原因となる疾患が頭に入っていれば、臨床推論の精度も向上するね。
AIUEOTIPSを全て確認する必要はない
AIUEOTIPSは、原因不明の意識障害や、取りこぼしが無いかを確認する際に使用するものです。
そのためAから順番に否定していくような使い方はしないため注意してください。
それでは、AIUEOTIPSのAから順に解説していきます。
A : Alcohol アルコール
慢性的なアルコール中毒の患者は食事摂取の不良や肝機能障害により糖質やビタミンB1欠乏を来しやすく、低血糖やウェルニッケ脳症による意識障害を呈するリスクが高いです。
アルコールによる意識障害を診断する際には、推定アルコール血中濃度を測定します。アルコール血中濃度の計算方法は割愛します。アルコール血中濃度が200mg~250mg/dLを超えると意識障害を呈すると言われています。
アルコール血中濃度が200mg/dL以下の場合は、意識障害の原因がアルコール以外の可能性が高いよ。
ブドウ糖を投与する前にビタミンB1を投与することを忘れないように!
ビタミンB1欠乏が疑われる場合にはビタミンB1(メタボリン、チアミン)の投与が推奨されています。
糖質からエネルギーを産生する際にビタミンB1を消費するため、ブドウ糖を投与する前にビタミンB1の投与が必要となります。
A : Aortic Dissection 大動脈解離
大動脈解離では解離腔の内膜がフラップ状になり、脳への血流が開通・閉塞される(剥離した内膜が血流を阻害する)ことにより一過性の意識障害を呈することがあります。
フラップとはパタパタと開閉するものという意味だよ。
大動脈解離を原因とする心血管性失神に注意
大動脈解離では、意識障害だけではなく、失神を呈することもあります。
疼痛による血管迷走神経反射や、頸動脈の閉塞や解離の進展に伴う血流障害、心嚢内・胸腔内への破裂に伴う急激な血圧低下が原因として挙げられます。
I : Insulin(hypo/hyper-glycemia) 低/高血糖
hypo glycemia 低血糖
意識障害の診断では、早期に低血糖を否定します。なぜなら簡易的に測定することができ、対応も容易だからです。
低血糖は進行すると低血糖脳症へと移行するリスクもあり、意識障害が4時間以上では、不可逆な高次脳機能障害をひきおこすとされているため注意が必要です。
極度の低血糖が持続すると心停止へと移行するリスクがあるとも言われているよ。
低血糖+ショックバイタルの場合は注意が必要
低血糖単独でバイタルサインが変化することは少ないと言われています。低血糖+ショックバイタルを認める際は、敗血症に伴う低血糖の可能性も検討しましょう。
hyper glycemia 高血糖
高血糖により意識障害を呈する病態として、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高浸透圧高血糖症候群(HHS)があります。
DKAとHHSは、インスリン欠乏の有無などの違いはありますが、どちらも脱水と意識障害を引き起こします。
U : Uremia 尿毒症
尿毒症とは、急性または慢性の腎臓障害により全身の諸臓器に機能障害を招く状態です。
腎不全が原因となるため、意識障害以外にも心不全や肺水腫、電解質異常などにより全身状態が悪化するリスクがあるので注意が必要となります。
E : Encephalopathy(hypertensive) 高血圧症
高血圧性脳症とは、急激な血圧上昇により脳血流が増大し脳浮腫、頭蓋内圧亢進により意識障害や痙攣、頭痛、嘔吐が引き起こされる疾患です。
高血圧性脳症は原因となる腎不全などの既往や、脳出血の合併など高血圧性脳症以外の疾患にも注意が必要です。
主な治療は降圧薬、脳圧降下薬の投与などです。
180mmHg以上の血圧に注意
具体的な血圧は、収縮期血圧180mmHg以上、拡張期血圧110mmHg以上の急激な高血圧において脳症が発生します。注意点は、血圧の値だけではなく、その人の背景にも注目することです。
高血圧性脳症は、慢性の高血圧や腎不全、妊娠高血圧症候群などの背景がある患者で発生しやすいと言われています。
E : Encephalopathy(hepatic) 肝性脳症
肝性脳症とは肝機能の低下から、肝臓で解毒されるアンモニア等の物質が蓄積することで中枢性の症状を呈する病態です。肝性脳症は昏睡度がⅠ~Ⅴ段階に分類されており下記の症状を呈します。
羽ばたき振戦とは?
両手を前に出してもらった状態で手のひらを返した時に、筋肉の緊張が突然失われることにより、手指が不規則に震える症状です。
羽ばたき振戦は脳機能の異常によって、腕の筋肉のコントロールに影響が出た結果なので、肝性脳症以外にも低K血症など他の要因によっても発現します。そのため羽ばたき振戦=肝性脳症ではないので注意してください。
E : Endocrinopathy(adrenal , thyroid) 内分泌疾患
内分泌疾患において緊急かつ意識障害を呈する代表的な疾患に甲状腺クリーゼと副腎クリーゼがあります。
甲状腺クリーゼとは?
甲状腺クリーゼとは、血中の甲状腺ホルモン濃度が高くなり、高熱やショック、意識障害などを来たす病態です。
甲状腺ホルモンのコントロールが不良な状態の方などが、感染や手術などの強いストレスが加わることで発症します。
心不全症状や頻脈、不整脈等の症状を併発する可能性があるため注意が必要です。主な治療は甲状腺薬や、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の投与となります。
副腎クリーゼとは?
副腎クリーゼとは、急性の副腎機能不全の状態です。突然の高熱や血圧・血糖の低下から意識障害を呈します。
敗血症などの際に急速に両側の副腎組織内に出血がおこったり、慢性の副腎機能不全の患者が感染症・外傷・精神的ストレスを被った際に副腎皮質ホルモンが不足して発症します。
副腎から分泌される血圧や血糖を保つために必要な糖質コルチコイドの不足が原因のため、血圧が下がりショック状態に陥ることがあるので注意が必要です。主な治療は副腎皮質ホルモン(ステロイド)の補充です。
甲状腺クリーゼ・副腎クリーゼともにショック・意識障害になる可能性があるから注意が必要だよ。
E : Electrolytes(hypo/hyper-Na , K , Ca , Mg) 電解質異常
主な電解質異常である高/低K、高/低Na、高/低Caのうち、意識障害を引き起こすのは高/低Na、高/低Caです。更に臨床で遭遇することが多いのは低Na血症です。
低Na血症は、院内発症だと脳外科の手術後などに発症し、外来だと心因性の多飲症で発症することが多くあります。
急速なNaの補正に注意
上記のような48時間以内の急性の低Na血症ではなく、高齢者のような慢性の低Na血症により意識障害を呈した場合に治療介入する場合はNaの補正に注意が必要です。
慢性の低Na血症において急速にNaを補正すると浸透圧の問題から脳細胞より水分が流出し、浸透圧性脱髄症候群(ODS)を発症します。
ODSになると意識障害が進行し、痙攣や四肢麻痺が出現、致死的となることもあるから注意だよ。
O : Opiate or other overdose 薬物中毒
薬物中毒は主に救急外来で遭遇する疾患です。救急外来を受診した意識障害の患者に薬物中毒の可能性がある場合や、意識障害の原因が分からない場合は、Triage®「トライエージ」を活用します。Triage®は患者の尿を用いてベンゾジアゼピン類(BZO)やアンフェタミン類(AMP)、オピオイド(OPI)などを検出します。
AMPは覚せい剤だよ。
Triage®陽性=薬物中毒ではない
Triage®は、服薬直後では反応しないことや、常用量でも陽性となってしまう問題点があります。偽陽性が多いとの報告もあるため、あくまで診療の補助として活用します。
O : Decreased O2(hypoxia , CO intoxication) 低酸素(一酸化炭素中毒を含む)
低酸素血症(Pao2 60Torr以下)の状態は、肺胞低換気や換気血流不均等、拡散障害、シャント等の呼吸不全により引き起こされます。動脈血中の酸素が不足することで、必要な酸素を供給できずに意識障害を呈します。治療は、原因である呼吸不全の解決が目標となります。
高二酸化炭素血症や一酸化炭素中毒でも意識障害になる
「肺気腫とかCOPDによる高二酸化炭素血症」や、「火災や換気不十分な室内での火の使用による一酸化炭素中毒」でも意識障害になります。
T : Trauma 外傷
外傷による意識障害の原因としては頭部外傷による意識障害もしくは循環不全による意識障害が考えられます。
頭部外傷の場合は、脳挫傷による出血や、脳挫傷部位及び周囲の脳浮腫により頭蓋内圧亢進が亢進して意識障害を呈します。
頭部外傷による意識障害は頸部に注意
頭部外傷ということは、頸椎を損傷している可能性もあります。頸椎の保護や項部正中の圧痛の有無を必ず確認するようにしましょう。
外傷では切迫するDを確認する
外傷による意識障害は切迫するDを確認しましょう。
外傷診療において脳ヘルニアを疑う所見を切迫するDと表現するよ。
切迫するDの基準は?
- GCS≦8
- 急速な意識低下(GCS 2点以上)
- ヘルニア徴候(瞳孔不同、片側麻痺、Cushing 現象:高血圧と徐脈)
T : Temperature(hypo/hyper) 低/高体温
低体温
低体温により意識障害を引き起こす代表例は偶発性低体温症です。偶発性低体温症とは、何らかの予期せぬアクシデントによって体温が異常に低下し、深部体温が35℃未満の状態になった状態です。
意識障害が先行して低体温になったのか、低体温により意識障害を呈しているのかの判断が重要です。復温に合わせて、意識障害の原因検索を行いましょう。
低体温症では、体温の低下により電解質異常や不整脈により致死的となる可能性もあるため注意が必要です。
低体温の原因が敗血症の場合もあるから注意しましょう。
低体温の敗血症は死亡率が高いから早期の対応が必要だよ。
高体温
高体温により意識障害を呈する代表例は熱中症です。熱中症とは、体温が上がることで、体内の水分や塩分のバランスや、体温の調節機能が破綻して、体温の上昇や眩暈、痙攣、意識障害等を来す疾患です。熱中症は重症度により以下の3段階に分かれています。
乳幼児や高齢者は、熱中症を起こしやすいの特に注意が必要です。
熱中症は軽視されがちだけど、重症の熱中症は致死率が高いよ!
I : Infection(CNS , sepsis , pulmonary) 感染症
髄膜炎や脳炎など、中枢神経系の感染では、当然のことながら意識障害を呈します。また臨床で遭遇することの多い、肺炎や尿路感染等でも発熱の影響で意識障害を呈することがあります。特に高齢者では発熱により意識障害を呈することが多いので注意が必要です。
せん妄の原因で最も多いのは感染症だよ。
また敗血症を疑う指標であるqSOFAでも、意識障害は観察項目の1つです。
CNSとは?
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Coagulase-negative Staphylococci: CNS)のことであり、ヒトの皮膚、粘膜、上気道に常在し、医療関連感染起因菌となる。
P : Psychogenic 精神疾患
精神疾患に罹患している患者は以下の2つの場合を念頭に置く必要があります。
- 原疾患により意識障害を呈する場合
- 低Na血症(水中毒・薬剤によるSIADH)や薬物中毒、頭蓋内疾患の合併等、原疾患以外で意識障害を呈する場合
既往に精神疾患があるからといって安易に原疾患によるものと決めつけないようにしよう。もしかしたら循環不全による意識障害などの危険な状態の可能性もあるからね。
P : Porphyria ポルフィリン症
本邦においては、稀な疾患とされています。ポルフィリン症とは酸素と結合するヘムの合成に関与する酵素の異常によってポルフィリン体が過剰となる代謝疾患です。
主な症状は腹痛・嘔気といった消化器症状に加えてせん妄や痙攣などの精神症状を呈します。
診断には尿中ポルホビリノゲンの測定が必要となります。
通常の検査では異常がないため、精神疾患と誤診されることが多くある疾患だよ。
S : Seizure てんかん・痙攣
痙攣後は意識障害を呈することが多くあります。また、見た目には痙攣が収まっているように見えても痙攣が持続していることがあります。
痙攣の診断には目撃情報や脳波の検査が必須となります。
痙攣の裏にある疾患に注意
痙攣は頭蓋内疾患や循環不全等、様々な要因により起こります。そのため痙攣や遷延する意識障害は、原疾患が引き起こした症状の一つであることを念頭に置きながら、ABCの評価を行いましょう。
これは意識障害全般に言えることだね。とにかくまずは「ABCの安定化」が重要だよ。
S : Shock ショック
ショックとは、主要臓器に循環障害を呈した状態です。循環障害により脳血流が低下すると、脳組織における酸素需給のバランスが破綻し、不穏や痙攣等の意識障害を呈します。
ショックが原因で意識障害を呈しているということは、ABCも何かしら破綻しているはず。全身観察を行いABCの安定化に努めよう。
ショックに起因する痙攣や不穏への鎮静薬投与に注意
痙攣や不穏に対してはジアゼパムなどの鎮静薬を使用することが多いと思いますが、血圧が低下して意識障害を呈している患者に鎮静薬を使用すると、状態が悪化して心停止に移行します。
S : Stroke, SAH 脳卒中
脳卒中による意識障害が疑われた場合に重要なことが、脳梗塞なのか、脳出血なのかの診断です。
脳梗塞と脳卒中は治療が異なる上に時間が患者の転帰を左右します。脳梗塞では血栓溶解療法では発症から4.5時間以内、血管内治療であれば8時間以内等の時間的制限があります。また脳出血においても緊急手術が必要となる場合が多くあります。
早期に診断を行うためには、早期の頭部CTが必要となります。脳卒中が疑われる場合は、すぐにCTが撮影できるように準備しましょう。
脳卒中症状は大動脈解離に注意
前述したように、大動脈解離は脳卒中様症状を呈します。大動脈解離に対して血栓溶解療法や血管内治療を行うと致死的となります。脳梗塞が強く疑われる場合でも頭部CTと合わせて胸部CTも撮影し大動脈解離を否定する必要があります。看護師としては、大動脈解離の可能性を念頭に置き、血圧の左右差等の身体的所見を収集しましょう。
まとめ
今回紹介したAIUEOTIPSはあくまで、意識障害の鑑別疾患をまとめたものであり、1つ1つ確認する必要はありません。
まずはABCを評価して、生理学的異常の有無を評価しながら、急変におけるCommon diseaseを検討するのが一般的です。
ただし疾患を検討する上で、AIUEOTIPSは有用な資料となるため頭に入れておきましょう。
引用・参考文献
- 坂本 壮(2015).救急外来ただいま診断中!.中外医学社,東京.
- 林 寛之(2017).Dr林&今の外来でも病棟でもバリバリ役立つ!救急・急変対応(メディカのセミナー濃縮ライブシリーズ).メディカ出版,大阪.
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