Last Updated on 2023年12月30日 by カメさん
こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は7分程度で読めます。
今回は看護研究における基本属性について解説します。ちなみに基本属性は、背景データや背景因子と呼ばれたりするよ。このブログで採用している統計ソフト「EZR」での呼び方が背景データだから、この記事では用語を「背景データ」に統一するね。
看護研究において、対象の背景データは単なる数字や情報の集積ではありません。それは患者個人の人生、生活、健康を深く理解する上で貴重な鍵になります。背景データを正しく、効果的に取り扱うことで、看護研究はより精度の高い結果をもたらし、結果的には患者ケアの質の向上に繋がります。
この記事では、研究対象の背景データの重要性、収集・分析方法を詳しく解説します。看護師、研究者、学生が日々直面する疑問や課題を解決する際に、背景データが如何にして力となり得るのかを説明できればと思います。
背景データとは?
背景データは看護研究の質と方向性を左右する重要な要素です。この記事では、背景データの収集、分析の全体像を詳しく解説し、看護研究におけるその価値を解説します。
それでは実際の研究例を交えながら、どのように背景データが研究結果に深い影響を与えるかを示していきます。
背景データの概要
背景データとは、研究対象が持つ性質や特徴のことです。背景データは、基本属性や背景因子と呼ばれます。これらのデータのうち、研究対象の基本的な性質に関するデータをデモグラフィック属性と呼びます。デモグラフィック属性(Demographics)とは、人口統計学的属性のことで、年齢、性別、居住地、家族構成、職業、収入などを指します。
背景データでは、デモグラフィック属性に加えて、研究内容に関するデータを収集するよ
背景データの意義と研究における役割
研究では対象者の背景を理解することが大切です。その理解を助けるのが背景データです。
背景データは、研究対象者の人口統計学的、社会経済的、医療的特性を含む情報の集合です。これには年齢、性別、民族性、教育経験、職業、健康状態などが含まれます。
これらのデータから対象者の特性に関する情報を得ることで、個々の対象者の情報が研究結果にどの程度関連しているかを判断することができます。研究では、研究結果を一般化(他の状況でも応用可能か)することが重要です。対象者の特性を理解することで、研究結果が今回の対象に限定するものなのか、それとも一般化可能な結果なのかを解釈することができるようになります。
研究結果を正しく理解するためにも、背景データで対象者の特性を理解することが重要なんだね
背景データは特に介入研究で重要
介入結果を分析する上で、研究対象の特性が特に重要となります。介入研究で結果を解釈する際には研究対象者のベースラインがどのような状況だったのかを理解する必要があります。
ベースラインとは、研究を開始する時点における対象者の年齢や性別、疾患の重症度といった背景データのことです。例えば、研究開始の時点ですでに介入群と対照群(介入しない群)のベースラインが同じじゃない場合は、介入結果に影響を及ぼしている可能性があります。
ベースラインが分からずに介入しても、介入が影響して変化した状態なのか、介入前からあった状態なのか分からないからね。
なお、そのような結果に影響を与える要因は、交絡因子と呼ばれます。
交絡因子とは?
交絡因子とは調査する変数以外で結果に影響を与える変数のことです。
交絡因子とは下記の3つの条件を含めるもの
➀結果に影響を与える
②原因との関連がある
③原因と結果の中間因子(原因と結果の間にある)ではない
背景データの種類:一般的なカテゴリー
背景データは大きく量的データ(連続変数など)と質的データ(カテゴリカルデータ)に分けられ、研究デザインによってそれぞれのデータを組み合わせて収集します。
量的データには、年齢、体重、身長などがあります。これらは数値化可能であり、統計解析に直接利用されます。また質的データには性別や職業、所属部署などがあります。これらのデータはカテゴリカルまたは記述的であり、分類として比較する際に役立ちます。
看護研究で収集される背景データには性別や年齢、婚姻状況、子どもの有無、子どもの数、看護職としての経験年数、 現在の病院での雇用形態、勤務形態、病床数、保有資格などがあります。背景データには決まったものはなく、あなたの研究疑問を解決するために必要な項目を検討しましょう。
背景データの収集と分析
背景データ収集方法
背景データの収集は、アンケート、インタビュー、既存のデータベースの利用、公的記録からの情報抽出など、多様な方法で行われます。
選択される方法は、研究の目的、対象者の特性、利用可能なリソース、そして研究倫理の観点から決定されます。
看護研究ではアンケートが一般的な方法です。アンケートは効率的な手法ですが決められた情報しか収集できないので、現象を深く理解したい場合にはインタビューなどの方法が選択されます。
看護研究のアンケートであれもこれも質問して背景データだけで何十項目も収集している研究があるよね。アンケート調査の場合は、相手の負担も考えて、研究疑問の解決に必要最低限の項目だけを収集するようにしよう
背景データの分析方法
収集したデータは、データの性質に応じて記述統計、推測統計、または質的分析を用いて分析されます。これらの分析により背景データの傾向、関連性、パターンを明らかにし、研究結果との関連を分析します。
研究結果が背景データの影響を受けた結果なのかどうか、またどのような背景データのある対象に、どのような結果が得られたのかなど、研究対象と研究結果の関連を明らかにしましょう。
背景データの分析結果は、研究結果の解釈に直接影響を与えます。適切に研究結果を理解することは、臨床への示唆として看護介入の提案を行うために重要となります。研究結果にだけ目を向けるのではなく、どのような対象だったから、今回の結果が得られたのかを確認するようにしましょう。
背景データの収集・分析時の注意点
背景データを解析する際は、以下のポイントに注意を払うことが重要です。下記の5つのポイントに注意を払いながら背景データを解析することで、研究者はより信頼性の高い結果を導き出すことができます。
➀データの品質確保
解析する前に、データが正確で完全であることを確認します。
欠損データ、異常値、重複データなどの問題を特定し、適切に処理します。これはデータの信頼性と解析結果の正確性を保証する上で重要となります。
②倫理的配慮
特に患者情報を扱う看護研究において、プライバシー保護、患者の同意、倫理委員会の承認などの倫理的側面を遵守することが不可欠です。データを匿名化または擬似匿名化することで、個人情報を保護しましょう。
③適切な分析手法の選定
背景データの種類(量的または質的)に基づいて、適切な統計手法を選びます。量的データには平均値、標準偏差などの算出、質的データには比率の分析などを適用します。
④代表性の確保
研究サンプルが母集団を適切に代表していることを確認します。サンプルが偏っている場合、結果の一般化が困難になる可能性があります。適切なサンプリング方法を選択し、サンプルサイズが統計的に十分であることを確認しましょう。
標本抽出やサンプルサイズの計算については「標本抽出(サンプリング)とは?」看護研究の疑問を解決「対象者の選び方を解説」や【サンプルサイズとは?】「研究に必要な対象者数の計算方法を解説!(検定力分析・区間推定)」を参照してください。
⑤結果の解釈と報告
解析結果は、研究の文脈に基づいて慎重に解釈される必要があります。統計的に有意な結果だけでなく、臨床的にも意味のある結果に焦点を当て、その結果を正確に解析します。どうしても統計的な結果にだけ注目してしまいがちなので、あたなの臨床経験上、今回のデータが意味のあるものなのかどうかを検討しましょう。
背景データ実例
実際の論文で背景データを見てみましょう。
今回参考にするのは下記の論文です。
これは尺度開発の論文です。そのため、どのような対象にテストしたかは重要な要素となります。今回開発した尺度を、今後利用していきたい対象と同様の対象にテストができたかなどを検討する必要があります。
下記がこの研究の背景データに関する結果です。
この研究では、背景データとして性別や年齢、看護職資格、婚姻状態、勤続年数、看護師経験年数を収集しています。また分析としては、全てのデータを質的変数として分析し、各分類の比率を算出しています。この研究では、経験年数をカテゴリ化して質的に分析していますが、研究によっては数量データとして量的に解析する研究もあります。
まとめ
背景データは看護研究の根幹をなす要素であり、研究者が質の高い、信頼性のある結果を得るために不可欠な要素です。この記事が、背景データの重要性を理解し、適切に収集、分析、解釈するための手引きとなり、看護研究の質の向上に寄与することを願っています。
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