Last Updated on 2023年7月19日 by カメさん
こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は7~8分程度で読めます。
カメ今回は倫理審査の概要について解説するよ
研究のハードルを上げている一つに倫理審査があると思います。
倫理審査ってよく分からないですよね。この記事を読んで倫理審査を理解することで、研究への苦手意識を減らしましょう。
倫理審査とは?
倫理審査とは?
- 人を対象とする全ての研究が対象
- 研究対象者の人権とプライバシーの保護を目的とする
- 研究を実施する機関には研究倫理委員会という第三者委員会が設置されている
- 研究倫理委員会は10名程度の様々な分野の専門家や非専門家で構成される
看護師が行う研究がほとんどに人が関わるよね。だから、ほとんどの研究で倫理審査が必要になるよ。
倫理審査の流れ
倫理審査は以下の流れに沿って行われます
指定講習とは?
倫理審査を申請するための条件として、研究倫理に関する講習を指定する施設がほとんどです。
講習内容は施設により異なります。1つの講習で良い施設もありますし、複数の講習受講が必要になる施設もあります。
最近はオンラインの受講もできるようになって便利になったよね。
申請書類とは?
※申請書類の詳細はこちらをクリックしてください。
基本的な申請書類は、どの施設でも同じですが、形式が指定されている場合が多いので施設の倫理委員会のHPを確認するようにしましょう。
書類の提出方法を確認しよう
倫理審査の申請用書類の提出方法は施設毎に異なります。直接書面にて提出を行う施設が多いと思いますが、オンラインの申請を行う施設も増えています。オンライン申請の場合、事前の登録等も必要になるため早めに確認しましょう。
介入研究とか、本審査になりそうな研究を計画している場合は、倫理委員会の開催日・申請期限を確認しよう。
本審査と迅速審査ってなに?
倫理審査には本審査と迅速審査の2つがあります。
本審査とは?
- 毎月の決められた日時に研究倫理委員会が開かれ、そこで審査される。
- 委員会の会場もしうはWeb上にて出席します。
- 委員会にて研究に関する説明及び審議応答を行う。
- 研究責任者の出席が絶対である。
- 審査前に事前レビューが必要。
迅速審査とは?
- 書面やメールで随時審査を行う
- 観察研究や他施設で倫理審査を受けている研究に適応される
観察研究とは介入を行う研究だよ
本審査のヒアリングではどんなこと聞かれるの?
倫理審査では研究の科学性と倫理性の両面から評価を行います。そしてその根拠となるのが研究計画書です。
研究計画書が全てであり、研究計画には研究実施に関する全ての情報が記載されている必要があります。
本審査の場合、対面にて研究の説明を求められることがあります。しかし、対面での説明はあくまで研究計画書の不足を補うための質問です。研究者が説明した内容は参考程度であり、口答で補足説明をしても、研究計画書に記載されていなければ審査には通りません。
対面審査の練習に時間は使わず、研究計画書を徹底的に見直しましょう。
本審査のヒアリングでは研究説明用のスライドが必要になることもあるよ。事前に確認しよう。
事前審査・事前ヒアリングとは?
倫理審査では事前審査を行う機関が多いです。書類による事前審査や事前ヒアリングがあります
事前審査・事前ヒアリングとは?
- 倫理審査をスムーズに行うためのもの
- 倫理委員による事前アドバイス
- 事前審査の指摘事項を基に修正して、本審査を行う
報告書の提出とは?
倫理審査に通ったら終わりではありません。
年度末に「経過報告書」または「終了報告書」を提出する必要があります。
また、有害事象が発生してしまった場合に速やかに倫理委員会に報告することも研究者の責務の一つです。
報告書の提出手順は施設毎に異なるから確認しよう。
倫理審査に必要な書類は?
倫理審査の申請には以下の書類が必要になります。
倫理審査に必要な書類
①研究倫理申請書
②研究計画書
③依頼書・研究説明文書
④同意書
⑤同意撤回書
施設によっては「利益相反申告書」や「研究者の履歴書」等が追加で必要になる場合もあります。必要な書類及び形式は施設毎に異なるので確認しましょう。
研究の方法によっても必要な書類が異なる
例えばWeb上でアンケート調査を実施する時などは、同意書・同意撤回書は必要ありません。
以下に申請書類全般のチェックリストを作成しました。書類を作成した際は確認してみてください。
①研究倫理申請書
研究倫理申請書に記載する内容
- 研究者名
- 研究テーマ
- 倫理的配慮
- 研究成果の公開方法
- 研究予定
施設によっては、研究計画書に研究倫理申請書の内容を記載するところもあるよ。
研究倫理申請書に記載する各項目について解説します。
研究者名
研究責任者と共同研究者の名前・所属を記載します。
研究倫理申請書に記載の研究責任者は、倫理委員会の出席が原則必要になります。
研究テーマ
研究名を記載してください
倫理的配慮
倫理的配慮に記載する内容
- 研究対象
- 研究協力による利益
- 研究協力による不利益
- 健康被害に対する対応や措置
- 自由意思の尊重
- プライバシーの保護
どのような人にどのように依頼するのか
研究協力により、対象者個人または社会に対して、どのような利益があるのかを記載します。
研究協力によ研究協力により生じる、身体的・心理的不利益を具体的に記載します。
研究協力により、対象者個人または社会に対して、どのような研究協力により身体的・心理的な症状が現れた場合に、どのような対応を準備しているのかを記載します。
研究対象の自由意思が尊重されていることを記載します。研究協力を拒否できること、強制力が排除されていることを強調しましょう。
プライバシーを保護するためにどのようにデータを処理するのか記載します。
プライバシーを保護するためにどのようにデータを処理するのか記載します。
研究成果の公開方法
分析されたデータを、どこで公開する予定なのかを記載します。
研究予定
研究を計画している日時を記入します。○○年〇月〇日~○○年〇月〇日など、概ねの予定で大丈夫です。
②研究計画書
研究計画書を書く時は「倫理的配慮」「社会的な価値」「科学的な妥当性と正当性」の3つポイントが重要となります。
やる価値のある研究なのか、倫理的に問題ないか、自問自答しながら記載していこう
倫理審査に提出する書類なので倫理的配慮を中心に書く
社会的な価値や科学的妥当性・正当性に偏りすぎないようにしましょう。研究の背景を長々書くというよりは、倫理的配慮として、研究方法の科学的妥当性を説明するイメージです。
研究計画書にはどんな内容を書くの?
研究計画書に記載する内容
- 研究の背景・目的
- 研究の方法
- 研究対象への倫理的配慮
大きく分けると上の3つだね。細かく分けると、書くことはもっと沢山あるよ。施設指定の書式を確認しよう。
研究計画書のチェックリストを以下に記載します。確認してみてください。
研究の背景・目的
研究の必要性・重要性を分かりやすく記載します。
- 臨床疑問と文献レビューの結果を簡潔に記載すること
- 何が明らかになっていて何が明らかになっていないかを記載すること
研究計画書の段階で背景を深められると、研究に一貫性が出るし、論文を書くときも楽だよ。
研究の方法
研究方法を科学的妥当性も踏まえながら具体的に記載しましょう。
- 研究を実施する過程を、どのようなスケジュールでどのような場所で実施するのかを具体的に記載すること
- 調査内容の提示方法や、対象者の選定方法、依頼の方法、データの収集方法、データの扱い方を記載すること
- サンプルサイズの計算など、研究を実施する上での科学的合理性を記述すること
ここが倫理審査で一番チェックされるよ。分かりやすく正確に書こう。
研究対象への倫理的配慮
研究を実施する上での倫理的な問題を明確にして、依頼方法や同意の取得方法について記載します。
ここは研究倫理申請書に記載したような内容を書くよ
③依頼書・研究説明文書
依頼書も研究説明文書もインフォームドコンセントの際に使用する重要な書類です。
依頼書では、文頭の挨拶(時候の挨拶)などから始まり、研究の説明や意義を記載します。
研究説明文書では研究計画書の内容とほとんど同じですが、専門的な用語は避けて、誰でもわかる内容で記載します。
施設責任者への依頼書は承諾書の添付も忘れずに
研究実施予定の施設の責任者への依頼書の場合は、依頼書に合わせて承諾書も配布して、研究協力の有無を書面にて確認します。
- 研究の内容や、手順が具体的かつ簡潔に記載されているか
- 平易な文書で記載されているか
- 研究協力に伴う利益・不利益は記載されているか
- 健康被害に対する対応の準備は記載されているか
- 自由意思を尊重する旨は記載されているか
- 発表方法やプライバシーの保護について記載されているか
- 研究責任者等の問い合わせ先が記載されているか
つまり研究倫理申請書や研究計画書の内容が記載されているかとういうことだね
依頼書・研究説明文書のチェックリストを以下に作成しました。確認してみてください。
④同意書
チェックリスト
依頼書・研究説明文書の内容を十分に理解してもらった上で同意の有無を確認します。
同じ文書の同意書を2通用意します。研究対象者保管用と研究者保管用の2通を用意し、お互いに保存しましょう。
同意書に必要な内容
- 「依頼書・研究説明文書に従って十分な説明を受け同意した」という内容の文章
- 同意した年月日
- 研究対象者と研究者の署名
意識障害のある方を対象とする場合など、研究対象の方が自らの判断が不可能な可能性がある場合は、代理人の氏名・続柄を記載する項目を設けます
⑤同意撤回書
自由意思の尊重において、研究対象者がいつでも研究の不参加を示すことができるように、事前に同意撤回書を用意します。
同意撤回書に必要な内容
- 自らの意思で同意を撤回するという内容の文章
- 同意撤回の年月日
- 研究対象者(代理人)の署名
- どの段階のデータまで使用可能かのチェック(全てのデータの同意を撤回するのか、同意の撤回までのデータは使用して良いのか)
研究計画書や研究説明文書に、同意を撤回しても研究対象には不利益が生じない旨を必ず記載しましょう。
同意書・同意撤回書のチェックリストを以下に作成しました。確認してみてください。
利益相反とは?
最後に利益相反について解説します。
利益相反とは?
- conflict of interest : COI
- 研究者の社会的責任と、外部から得られる利益が衝突(相反)すること
- 研究者の「公正な姿勢」が損なわれる、または損なわれる可能性があると第三者から疑われること
企業からの資金提供によって研究を実施しているとします。資金提供してくれた企業にとって有利または不利になる可能性がある時に、研究結果の判断が公正でなくなる可能性があると第三者から疑われる状況です。
カメ:利益相反があることは悪いことがじゃないよ。大事なことは、利益相反を開示して適切に管理することだよ。
利益相反については、施設によって「利益相反申告書」などの形式で提出を求められる施設もあるため、事前に確認しましょう。
以下に利益相反に関するチェックリストを作成しました。確認してみてください。
まとめ
研究内容について勉強したことを沢山書きたくなる気持ちを抑えて、倫理的配慮を中心に書類を書き上げましょう。
倫理審査における基本事項は、今回解説した内容でどこの施設も変わりありません。しかし、申請方法や必要な書類の形式は施設によって異なります。各施設の倫理委員会のHPにて確認しましょう。メールや電話でも倫理申請の方法は確認することができます。
倫理申請の基本を押さえて、後は施設の基準に柔軟に対応しましょう。
カメ 倫理審査のための指定講習を受け忘れないように注意してね
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