Last Updated on 2023年7月19日 by カメさん
こんにちは!看護師のカメさん(49_kame)です。
この記事は10分程度で読むことができます。
今回は、質的研究で目にすることの多い観察法について説明するよ。
研究におけるデータ収集法には観察法や、面接法、質問紙法などがあります。ちなみに質問紙法は介入研究や郵送でのアンケート調査など様々な研究デザインで使用されているので耳にされたことがある方も多くいると思います。
観察法と観察研究は違うから注意してね!
観察法と観察研究は違う!
観察研究:
介入研究と対比して使われる。そこにあるのも、これから起こるものを調査する研究。
観察法:
目の前の事象を、研究者が直接観察して調査するデータ収集の方法。
観察法とは?
観察法とは?
- 簡単に言うとありのままを見る研究方法
- 観察者の能力で研究の深さが変わる
- データ収集の枠組みで分類すると、「構成的観察法」や「非構成的観察法」に分けられる
- 研究者が参加するかどうかで「参加観察法」と「非参加観察法」に分かれる
観察者の能力で研究の深さが変わるから、皆さんの臨床経験を活かすことができる研究方法でもあるね。
観察法を選択する時のフローチャートを示します。これを見てから下記の説明を参照すると分かりやすいと思います。
構成的観察法・非構成的観察法とは?
観察法をデータ収集の枠組みで分類すると「構成的観察法」と「非構成的観察法」に分かれます。
構成的観察法とは?
構成的観察法とは?
前もって観察の視点を決めておくもの
構成的観察法を適用する場合は、研究課題を明確に絞り込む必要があるよ!
明確に研究課題が決まれば、その目的の事象を網羅するために以下のような指標を使用します。
カテゴリーシステム
観察するときにどんな事象を集めてくるかを事前にカテゴリー分けします。
カテゴリーに学問的背景が加わるとエビデンスレベルが上がります。
チェックリスト
事前に項目を作成して、事象が発生の有無をチェックします。
事象を網羅的チェックする方法と、非網羅的にチェックする方法がありますが、網羅的な方法は観察する人の負担がとても大きいです。そのため必要な項目だけ作成して、その項目が発生したらチェックをするのが一般的です。
評定尺度
事前に項目を作成して、それぞれに得点をつけます。この方法を使用することで目標とする事象に対して客観的な評価をすることができます。
つまり量的な視点でも分析できるということだよ。
構成的観察法の例
構成的観察法の例として、臨床でも良く使用するブレーデンスケールがあります。これはカテゴリーシステムと評定尺度を組み合わせたものとも言えます。
ブレーデンスケールは褥瘡の評価で使用する指標だよ。
評価スケールを自分で作成する方法もありますが、このように既成のスケールを使用することでエビデンスレベルを確保することができます。
非構成的観察法とは?
非構成的観察法とは?
評価の枠組みを作りすぎずに構造化せず観察する方法
非構成的と言っても、まったく構造化しないのではありません。観察日誌やフィールドノートなどを用いて記録を行います。
基本的には出来事や会話などの客観的データを記載しますが、そこに理論や観察者の解釈などの主観的なデータを記載して分析していくことが重要です。
観察日誌を分析するのがフィールドノートだよ。
フィールドノート
フィールドノートで分類する際は、以下に示す図のように項目に沿って分類すると論理的な分析を行うことができます。
分析方法はここに示した分類方法以外にもSOAPやフォーカスチャーティングなどの看護記録でお馴染みの形式で分類する方法があるよ。
参加観察法・非参加観察法とは?
自分の研究において「参加観察法」が適しているのか、「非参加観察法」が適しているのかを検討します。どちらを選ぶかは観察者と対象の関係性によって決めましょう。
参加観察法とは?
参加観察法とは?
観察者が実際に対象の生活の中に入り込んで観察する方法
文化人類学の研究手法にエスノグラフィーというものがあります。特定の文化の中で生活する個人や集団の行動パターンを記述することと定義され、看護研究にも活用されています。
素晴らしい方法だけど、負担も大きいし時間も掛かるよ。
非参加観察法とは?
非参加観察法とは?
観察者が第三者として対象の行動を観察する方法
看護師の研究ではこのデータ収集方法を良く目にするね。
観察法に関する実際の論文
今回は非参加観察法を用いた論文を紹介します。
論文1(非参加観察法+構成的観察法)
1つ目の論文は、訪問看護師が終末期の患者や家族にどのようなケアをどのくらいの時間行っているかを非参加観察法にて調査した論文です。
以下に記載の表は、調査の際に使用したチェックリストです。つまりこの研究は、非参加観察法・構成的観察法ですね。
ちなみにこの研究では、構成的観察法で得られたデータを統計解析して量的な結果を示しています。
論文2(非参加観察法・非構成的観察法)
2つ目に示す論文は、急性呼吸不全の患者さんがNPPVを継続していくための看護師の臨床判断を非参加観察法にて調査した論文です。
この論文では前述の論文とは異なり、非参加観察法で得られたデータから半構成的面接を行い分析しています。
データ収集法はフィールドノートを使用しています。つまりこの研究は、非参加観察法・非構成的観察法ですね。
この研究は、観察した情報と面接の情報からカテゴリー化を行い質的な分析を行っています。
まとめ
参加観察法は、個人の能力や偏見が反映されるため否定的な意見もあります。しかし、観察者の能力に左右されることは良いことでもあると思います。
観察者が研究テーマに精通している場合、より本質に迫ることができると考えます。また、個人の偏見についても後述する論文のようにチェックリストなどの指標を用いることで偏見を減少させることもできます。自分の研究に適した方法を選択しましょう。
おまけ(個人的見解)
質的研究は軽視されることが多くあります。しかし量的研究(特にアンケート調査)にもバイアスが多いことや、概観しかとらえられないなどの限界があります。統計的分析のせいで、まるで絶対的な結果のように見えることがあるため注意が必要です。
量的研究と質的研究のどちらが上などではなく、正しい方法論・解釈ができている研究かどうかで論文の評価をするべきだと感じます。質的な視点と量的な視点の双方から迫ることが、研究の本質に迫るために重要なことだと思います。そのためにも日頃から論文のクリティークを行い、客観的な視点を持ち続けることが重要だと考えます。
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