Last Updated on 2023年1月13日 by カメさん
こんにちは!看護師のカメさん(@49_kame)です。
この記事は6~7分程度で読めます。
今回は質的研究のデータ収集方法の1つである面接法(インタビュー調査)について解説するよ。
面接法は、看護師の質的研究においては主要な調査方法の1つです。今回は、面接法の概要を説明した後で、実際の論文を見ながら理解を深めていきたいと思います。
質的データの収集方法にはどんなものがあるの?
質的データの収集は以下の3つに分類することができます。
それぞれのデータ収集方法は以下のようなものが考えられます。
面接法による収集
参与観察(参加観察)法による収集
診療録から収集
今回は上記のデータ収集方法の中でも面接法について解説するよ。
面接法とは?
面接法とは、研究者が研究対象者と直接対面しながら情報を収集する手法です。面接法には「データ収集の手段による分類」と、「面接対象との関わり方による分類」があります。
データ収集の手段による分類では、「構成的(構造的)面接法」「半構成的(半構造的)面接法」「非構成的(非構造的)面接法」の3種類に分類することができます。
また、面接対象との関わり方による分類では「個人面接」「集団面接」「電話調査」の3種類に分類することができます。
面接法はICレコーダーでの記録やビデオの録画によりデータを収集するから、回答者に対する十分な倫理的配慮が必要になるよ。
データ収集の手段による分類
構成的面接法
構成的面接法は、質問の内容や回答の方式が厳密に決められている面接方法です。
事前に面接のガイドラインを細かく立てることで、面接によって得たい情報を明確とできるよ。
質問紙を読み上げた上で、いくつかの選択肢から回答してもらうなど。
半構成的面接法
半構成的面接法とは、捉えたい現象や事象に関する質問をいくつか準備しておき、その質問をきっかけに会話を展開して情報を収集する面接方法です。
会話の流れに合わせて質問を変化させることができるので、柔軟に意見を聞き取ることが可能だよ。
対象の生活歴や、対象が記載した記録の内容、研究テーマに関する特定の出来事などの質問をきっかけとして会話を展開します。
特定の出来事をきっかけとして行う面接をクリティカル・インシデント技法と呼ばれています。
クリティカルインシデント法とは、重要な出来事・行動に関して、直接経験した人々に思い出してもらうことにより、結果に影響を与えた要因を体系的に収集する手法です。例えば、自己学習が進まないという出来事であれば「どうして自己学習が進まないのですか」「自己学習しなくて良いと思った理由はなんですか」などの質問をきっかけに会話を展開します。
クリティカルインシデント技法を更に深めたものにレパートリー・グリッド法があります。これは、結果の議論だけではなく、結果に至った過程を面接にて入念に調査しようとする手法です。
看護師の研究はほとんど半構成的な面接だよ。
非構成的面接法
非構成的面接法とは、明確な面接のガイドラインを用意せずに、日常的な対話から手探りで情報を収集する手法です。
非構成的面接は帰納的推論に基づく研究の代表だね。
帰納的推論とは?
科学的研究を進めるためには、帰納的推論と演繹的推論という2つの異なった推論方法が必要となります。
帰納的推論とは、研究対象である現象の中に入り込み、研究者自身が観察して発見していく推論方法です。また演繹的推論とは、研究者自身は、研究対象である現象の外に身を置き、客観的に観察することで発見していく推論方法です。
面接対象との関わり方による分類
個人面接
個人面接は、1人ひとりの研究対象にじっくりと時間を掛けて、情報を収集する手法です。
研究者と対象の1対1の面接であり、対象のペースに合わせて面接することができます。そのため時間を十分にかけることができ、本質に迫りやすいとされます。
本質に迫りやすいということは、プライバシーへの配慮も重要となります。プライバシーが守られるような面接環境を設定して、安心して会話ができる環境を整えましょう。
集団面接
集団面接とは、構成的な面接により集団の傾向に関する情報を収集する手法です。複数の対象に対して同じ質問を同時にすることで、同じ条件による面接が可能となります。
集団面接のメリットは、集団自体の特質を捉えることができる点です。そのため集団のグループダイナミクスを捉えたい時などに有効です。
個人の意見を捉えるような研究テーマには不向きだよ。
電話調査
電話調査は、構成的に行う場合と半構成的に行う場合があります。
電話調査を構成的に行う場合は、集団面接と同様に、集団の傾向に関する情報を収集することができます。
また電話調査を、半構成的・非構成的に行う場合は、対面では話しづらいような率直な意見を聴くことができるという長所があります。
電話調査であっても、面接内容の精査や、アポイントメント、プライバシーの配慮等を必ず検討しよう。
面接法を用いて調査した実際の論文
論文①:医療ニーズの高い小児に対する訪問看護師の在宅ケア実践における困難
この研究は、医療ニーズの高い小児に対する訪問看護師の在宅ケア実践における困難を半構成的面接法にて明らかにした研究です。
研究方法
インタビューガイドに基づく半構造的面接法で実施されました。
インタビュー内容は、「医療ニーズの高い小児に対するケアの内容」「看護ケア実践時に困っていること」です。インタビューの所要時間は 30分~40分程度で行い、データの記録方法はICレコーダーによる記録です。
抽象度の高い質問項目として自由に語ってもらっているね。
結果
このインタビューにより、医療ニーズの高い小児に対する訪問看護師の在宅ケア実践における困難として、
「単独での看護ケアの実践」「適切な時期の受診の促進」「予測できない急変時の対応」「小児特有の知識やスキルの体得」「母親との関係づくり」「多職種との連 携の促進」の 6つのカテゴリーが抽出されました。
以下は結果の図の抜粋です。
論文②:中堅期の市町村保健師の職業的アイデンティティの形成プロセスと影響要因
小路浩子(2021).中堅期の市町村保健師の職業的アイデンティティの形成プロセスと影響要因―複線径路等至性モデリング(Trajectory Equifinality Modeling: TEM)による分析―.日本看護科学学会誌,41,876–884.
この研究は、中堅期の市町村保健師の職業的アイデンティティの形成プロセスと影響要因を半構成的面接法にて明らかにした研究です。
研究方法
上記同様にインタビューガイドに基づく半構造的面接法で実施されました。
半構造的面接を1人につき2回実施しています。データの記録方法はICレコーダーによる記録です
インタビュー内容は、1回目の面接で「保健師になる前から現在までの人生経験及び職業経験」、2回目の面接で「職業への意識」について聞き取りを行なっています。
この論文も質問項目がだいぶ抽象的だね。自由度の高い質問項目を設定することが半構造的面接では重要だよ。
結果
インタビュー結果を、複線径路等至性モデリング(TEM)を用いてモデル化することで、保健師のアイデンティティ形成プロセス及び、形成プロセスに影響する要因を明らかにしました。
このインタビューにより、中堅期保健師の職業的アイデンティティの形成プロセスは「自分らしさ発揮までの焦燥期」「保健師としての自信の獲得期」「キャリア移行に対する応変期」の3つの時期に区分さることが明らかとなりました。
また、アイデンティティ形成プロセスに影響する要因は、「住民との関わりを重ねることによる保健師としての自信の獲得」や「環境や役割等の変化」等が影響していることが明らかとなりました。
言語データを図にすることは、現象を明らかにするためには分かりやすくて良いよね。今度の研究で使ってみようかな。
複線径路等至性モデリングとは?
複線径路等至性モデリングとは、TEM(Trajectory Equifinality Modeling)と略されます。
TEM は個々人が多様な径路を辿ったとしても等しく到達する地点(等至点)があるという概念を組み込んでいます。個々人が辿る径路と選択に焦点をあて、多様な経験の類似性及び相違性を比較検討します。そうすることで、径路の特徴やその背後に潜む関係性を明らかにすることができるとされています。
今回紹介した研究では、中堅期の市町村保健師の経験の径路を探究することにより、職業的アイデンティティ形成プロセスと、経験の経路の背後にある、形成に影響を与えた要因を明らかにしようとしています。
フォーカスグループインタビュー(focus group interviews: FGI)とは?
最近活用されることの多い面接方法に、フォーカスグループインタビューという手法があるため紹介します。フォーカスグループインタビューは、FGI(Focus Group Interviews)と略されます。
フォーカスグループインタビューはグループ内での自由な話し合いで得られたデータから、帰納的推論により新たな理論を導くことができます。
フォーカスグループインタビューについてはPatton(1990)が「半構造的・標準化されていないインタビューフォーマットを通して、ある特定の問題に対する参加者間が、経験、感情を調査する方法」と定義しています。
フォーカスグループインタビューは、質的調査の中でも探索的調査に適している手法です。グループダイナミクスにより、特定の話題に関する参加者の理解、感情、考えを引き出すことができ、広範囲な情報と背景情報を収集することが可能とされています。
個人面接法と比較して、メンバーが協働することによる相互作用から、潜在的で豊かなデータを得ることができる手法であり、注目を集めています。
グループの規模は3-5名程度の小規模なグループが良いとされているよ。
フォーカスグループインタビューを活用した実際の論文
論文:初期キャリア形成期看護師のピア・コーチングの様相とその効果
この研究は、初期キャリア形成期看護師のピア・コーチングの様相とその効果をフォーカスグループインタビューにて明らかにした研究です。
初期キャリアを2-3年目の看護師として位置付けているよ。またピアコーチングとは、同僚との「振り返り」や「教え合い」などの協同により、「知識技術の洗練」や「問題解決」を行うことだよ。
研究方法
フォー カスグループインタビューを用いて、施設別に5名ごとの3グループに分けて、1グループ1回のインタビューを実施しています。インタビュー方法は半構成的面接です。
インタビュー内容は、「卒後2・3年目におけるピア・コーチングの具体的場面」「ピア・コーチングによって成長できたこと」です。
データの記録方法はICレコーダーによる記録です。またメンバーの非言語表現をメモにて記録しています。
グループダイナミクスにより得られるデータの記録では非言語的表現の記録が重要だよ。例えば「メンバーが頷いている」などだよ。研究によって動画情報を活用したりするよ。
結果
このインタビューにより、ピア・コーチングの様相は、「絆を深める」「同期を身近な目標とする」「同期とのかかわりから生じる自 発的な行動」「ともに学びあう機会をもつ」「同期を通じた自分なりのケアの模索」が抽出されました。
ピアコーチングの効果は、「モチベーションの高まり」「同期という心の支えの獲得」「互いに高めあう存在への変化」「自発的行動への変容」「ケアの幅の広がり」「同期と協力することによる成功体験」が抽出されています。
まとめ
どの分野の研究でも、半構成的面接法を用いた研究がほとんどだね。
面接法は、採用する方法により特徴が異なります。自分の研究テーマに適切な方法はどれかを入念に検討しましょう。
また、半構成的・非構成的な面接を行う場合は面接者の面接技術が重要となります。誰が面接者となるかも忘れずに検討しましょう。
面接者が研究テーマに精通している場合とそうでない場合でも、収集するデータに差が出るから注意が必要だよ。質的研究は、研究者自身が測定用具であることを肝に銘じておこう。
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